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2008.09.08
ドロミテ山塊西側ルートをドライブ
9月に入ってからどうも芳しくない天候が多くなった今日この頃。一昨日も土砂降りを経験してここに到着し、昨日も曇っていて、こりぁあ今回のドロミテはアウトかなぁと思っていた今日、突然の快晴。
止まない雨はない、晴れない空はない。
ってことで、今日はドロミテ街道ドライブ日和となった。
ドロミテ山塊は西はボルツァーノから始まって、一昨日訪れたアルペ・ディ・シウジという広大な台地を取り囲むように西側に南北2本の街道が走っている。これらの街道は北はガルデーナ峠、南はボルドイ峠で交差して東のコルティナ・ダンペッツォまで1本の道となる。ボルツァーノに滞在している私たちは今日はボルドイ峠まで行って北側の道を通って帰ってくるというドライブを試みた。
一昨日はドロミテ山塊西側ルートの北側を走る道の途中にあるシウジに向かったが、今日は南側を走る道を行く。ボルツァーノ町からシウジに行く道との分岐点を経てからは長い長いトンネルが続いた。あまりに長くて近未来世界を走っている感覚に陥る道。
このトンネルを抜けると既に前方左手にはアルペ・ディ・シウジを取り囲む高い山の尖った峰が朝日を浴びて黒く見えはじめていた。途中に通る村々の宿はベランダに盛大に花を飾ってチロリアンな雰囲気。北イタリアのこの地方から始まって南ドイツまではずっとこうした家が見られて独特の風景を作り出している。こうした村の合間には緑の草原でのんびりと草を食む牛と素朴な教会などが見られて、何もかもが朝日に照らされて嬉しそうに光って見えた。
最初の目的地はカレッツァ湖Carezza al Lago。一番初めの停車地だが今日の観光ルートをガイドブックで見ていて一番興味を魅かれた写真が掲載されている場所だった。白い岩山と刺々しい針葉樹林を背景に様々なグラデーションのグリーンに輝く湖水。いったいどんな場所なのだろうか。
湖の表示が出てからしばらくして駐車場の表示があり、入るとすぐに駐車料金2ユーロ徴収。この土地を持っている人がカレッツァ湖人気に目を付けて開発したのか200台くらいは余裕で駐車できる広大な場所がある。でもね、もうちょっと本当に100mも先には無料の駐車場(5台分くらい)があるってのを疑わなかった私たちも、まだまだ旅の素人だよねぇ。
湖は駐車場の外の道路を渡った向こう側にある。遊歩道を少し下っていくとすぐにも美しいグリーンの湖面が見えてきた。朝日に照らされて黒いシルエットがカッコいい山々を背景に針葉樹林とグリーン。写真で見たまま、いやそれ以上に美しい風景が広がっていてホーッと誰もがため息をつく景色だった。一枚の写真におさめるとバックの山とのコントラストが強すぎて目で見たようにはならない。
ということで山の部分と手前の湖水の部分の分割写真で雰囲気を掲載してみた。
左手に歩いて行くと、もう一つ小さな湖がありこちらはぐっと深いグリーンなのだが山がよりよく見えて美しい。もっと先に行くと何があるのだろうと進んでいくと湖を周遊できる遊歩道への入り口になっていた。舗装された道ではないがよく整備されているのでよいよいのおじいさんも杖を突いたおばあちゃんも、足を怪我したアメリカ人も歩いていた。反対側から見る湖もまた針葉樹林を湖面に映して美しい。何よりもひんやりとした森の中を森林の香りを楽しみながら散策するのが気持ち良かった。
ここから先はコスタルンガ峠を越えてヴィーゴ・ディ・ファッサという町に下る峠越え。遠くに見える山々は荒々しい岩肌をむき出しにしているが、手前には青々と茂る樹木と緑の草原の広がる風景の中を進んでいく。「ヨーロッパドライブ」の名にふさわしい360度気持ちのいい景色の中を走りぬけていくのは素晴らしく気持ちのいいことだ。BMWのキャッチコピーに「駆け抜ける喜び-Freut
am fahren」というのがあったが、乗っている車はプジョーだがまさにそういう気持ち。
ヴィーゴ・ディ・ファッサはシャレー風の茶色い屋根の家々が続く思ったよりも大きな町だった。CONADという大手スーパーも見つかったので、ここの惣菜コーナーで昼食を調達することにした。ドロミテ界隈の名物というとスペックという生ハム。パルマの生ハムとどこがどう違うのかと言われるとわからないのだが、1kg26ユーロという高価さから見るとこちらもなかなか上質なものだと思われる。150gを薄切りにしてもらった。あとは切り売りのピザ。「レンジでチンして欲しい」っていう英語がが全く通じない。ここまで来るとイタリア語だけの世界なのだ。勉強不足の私たちは手振り身振りのジェスチャーゲームみたいに要求をわかってもらって熱々のピザを手に入れた。こういう経験も最近では新鮮で面白かった。生ハムは上品な桃色でしっとりとした脂身と塩味が何とも絶妙。加えて空気のおいしさと山々の風景がスパイスになる。
ヴィーゴ・ファッサからはいよいよドロミテ山塊の懐に抱かれた道になる。前方にみるみる迫り、過ぎ去る道沿いにも岩山が荒々しく迫ってくる。手前の緑の野原、引き続き白っぽい岩山が青空にそそりたつ風景は各々の色が輝くように見えた。次の町カナツェイにはスキーリフトがあってちょっとした山頂から景色を楽しめるような場所もあったが私たちはどんどん先に進む。
ふと、森の向こうに次の大きな岩山が現れた。これまで見てきた岩山と規模が違う。形も上が真っ平らの台形をしていて少し変わったこの岩山がセッラ連峰だった。途中にはカレッツァ湖ほど美しくなく、従ってガイドブックにも紹介されていないが緑に輝く湖がありドライブする人たちの恰好の休憩所になっていた。この辺りからオートバイのライダーの数が多くなり急カーブで上昇するポルドイ峠へと入って行く。実は次のキャンプ地はこの峠を越えて更に西に向かったコルティナ・ダンペッツォという町なのだが、この峠がどのくらい厳しい上り坂なのか、全部の荷物を積んで私たちの来るまで上がることができるのかの試験という目的もあった。結果は・・・。レンタルしているプジョー207SWでは私たち人間2人だけを乗せてもヒーヒー言うくらいだったので、荷物を積んでの峠越えは無理だろうということになった。コルティナ・ダンペッツォへはもっと平らな道を大回りしていくしかないようだった。それにしても激しい上りだった。ここをオートバイならともかく自転車で登っている人には感服する。
最後は九十九折をぐりぐりと登って到着するポルドイ峠は広大な駐車場とレストランのある賑やかな場所になっていた。ここはドロミテでも一番標高の高い(2239m)峠の頂上で多くのドライブ観光客やライダーが集まるという理由の他に、ここからロープウェイで2950mまで登れるし、さらにそこから他の町にトレッキングしたり逆にここまでトレッキングしてくる人が行き来するというのがその理由のようだ。
私たちもそのサッソ・ポルドイSasso Pordoi2950mの高みまで上がってみることにした。ロープウェイ代金は往復一人20ユーロくらいと安くない。片道歩いて帰ることは可能だろうかと聞いてみるとかなりの経験者ではないと難しいと言われたので往復ともロープウェイに乗ることにした。
下のレストハウス前から見上げるサッソ・ポルドイはそんなに高くない場所にあるように見えた。乗ってみると九十九折の道路が良く見えて面白い。相当なスピードで上がっているようで高度がみるみる上がって景色が変わり、サッソ・ポルドイの殺伐とした岩山の斜面が間近に迫り、いよいよラストスパートで頂上に向かう頃には目の前に岩山が見上げるように立ちはだかってエレベーターに乗っているかのような上り方だった。下にいる時は近いように見えたサッソ・ポルドイはなかなか遠くていかに高い場所にあるかを物語っていた。だんだんと頂上に近づくと大きな岩壁が立ちはだかってきて、その迫力は壁にぶつかるんじゃないかという不安にもつながる。こうした景色の変化、気持ちの変化を楽しむ10分の後2950mに降り立つのだった。約700mの上昇。普通のトレッキングでは1日分の行程が10分で終わっちゃうんだからロープウェイの力はすごい。
上りきった場所から裏手には扇形に歩ける範囲がかなり広く、様々な場所に歩いていっては頂上の端から周囲の風景を楽しむことができるようになっていた。一部は下って次の山へ続くトレッキング道となっている。午後3時ともなると向こうからここに戻ってくる人が大勢いて、かなり人気のトレッキングコースになっているようだ。見るからにアップダウンの激しい道のりなので歩いてきた人は半袖半ズボンでも汗をかいてドサッとベンチに倒れこんだりしてお疲れの模様。ほとんど運動していない私たちは長袖2枚とジャケット重ね着、下は中綿入りパンツをはいてようやくあたたかいというのにねぇ。
上で1時間ほどを過ごしてロープウェイで下る。登るときほどの興奮はないのだが、それでもすれ違う上り方面が異常に速いスピードなのには驚いた。眼下の地上がぐんぐんと迫ってくる。徒歩での下山はかなりの経験者でないと難しいというものの、急斜面にはりつくように小さな人影が見えて徒歩で下っている姿が見られる。遠くの町から出発してこの岩山を徒歩で降りたらどんなにか満足感が高かろうかと思うが、今日は時間もないので楽ちんコース。今回のドライブ旅行では楽ばかりしているようだ。
午後4時近くに帰途につくことになったが同じ道ではつまらない。ポルドイ峠を降りたところから帰りは北上してアルペ・ディ・シウジの北側を通って帰ることにした。ポルドイ峠を下ったと思ったらすぐに峠を登る道になり、道の両脇の緑の向こうは右に左に揺さぶられる度に異なる大きな岩山が見えて、ここも面白い道。あまりに興味深い景色があるので車を停めて写真撮影すること度々だった。峠の頂上は先ほどのポルドイには遠く及ばない賑わいであるものの緑の絨毯が敷き詰められたような草原の景色の向こうに尖った岩山の見える場所で、これも面白かった。
峠を下っていくつかの村を通り過ぎると一昨日訪れたシウジの辺りに戻ってくる。そこからは一度走った道なので迷うことなく帰ってくることができた。戻ってきたのは午後6時半。夏なので日は落ちていないけれど、かなり長い時間のドライブになった。私が一番気に入ったのはやはり最初のカレンツァ湖。それからポルドイ峠を降りた後に見た岩山も印象的だった。北イタリアのドロミテ満喫のドライブは全行程をカバーする1日ツアーにもなっているそうだ。
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