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2008.09.04
パッラーディオの建築を見にヴィチェンツァへ
イタリア:ガルダ湖のペシエラ

 1500年代初頭に生まれた建築家パッラーディオが完成したパッラーディアン様式はその後のヨーロッパ各地の建築に大きな影響を与えたと「地球の歩き方」に書いてある。そんなパッラーディオの建築物が多く残る町ヴィチェンツァはキャンプ場から西に80km離れた場所にあった。私たちはガルダ湖からの最後の観光地としてヴィチェンツァに行くことにしたのだった。

 キャンプ場を出て約1時間半後、ヴィチェンツァ駅前の駐車場に到着。町の見所は駅からまっすぐ北に伸びる道を500m歩いた頃にぶつかる、その名もアンドレア・パッラーディオ大通りの左右にちらばっているのだそうだ。アンドレア・パッラーディオ大通りに至るまでの駅前通りには衣料品や家庭用品の屋台が出ていて、値段は安いが質が良くなさそうな靴やカバンなどが並んでいた。ここを歩いている人たちはイタリア人ではなく近隣の国などから移民で入ってきている人が多く、これまでミラノから始まってイタリアの質のよい品や洒落た店ばかり見てきた目には別の国のように見える。アドリア海の向こうのクロアチアやスロヴェニアが近づいてきている、というのがヴィチェンツァの町を歩いての第一印象だった。

 駅前大通から右手のアンドレア・パッラーディオ大通りに入ると、こうした屋台はすっかりなくなりいつものイタリアの町らしい洒落たブティックやレストランやカフェの並ぶ町並みになった。この町が普通の町と違うのは、これらの店の入っている建物が見上げるととても豪華なファサードやバルコニーがついているということ。この通りには本当に多くのパッラディアン様式の建物が現存していることに驚いた。パッラーディオ本人によるものもあるが、その弟子達による建物も多い。
 
 
 

 パッラーディアン様式の建物には「Palazzo 〜」という名称が茶色地に白地で書いたプレートがついていて、場合によっては建築家の名前がスカモッツィなどと書かれているのでガイドブック一つあると自分でも見学しやすい。が、何がパッラーディアン様式なのかということについては、もっと専門的なガイドブックがないとわからない。私たちは各建物を見ながら共通項を見出すことで自分なりにパッラーディアン様式がどういうことなのかを探り出そうとした。まず、1階がものすごく天井が高い。2階にはバルコニーが出ている場合と窓だけの場合があるが飾りにギリシャ神殿のようなアーチの柱がついている。とまぁこんな所だろうか。1階が物凄く高いというのは今回の旅でイタリアに入って初めての都市、ジェノバの町を歩いている時に感じた。あれもパッラーディオの影響を受けた建物だったのかもしれない。

 それにしても、こんな風にある通りが一人の建築家の影響を強く受けた建物が多いというのは面白い。町が美術館になっているような感じだ。この大通りをブラブラと歩いて行く着くのが正面にオリンピコ劇場、右手にキエリカーティ宮の見える広場だ。

 オリンピコ劇場もキエリカーティ宮もこれまたパッラーディオの作品だそうだ。パッラーディオ大通りをぶらぶらと歩きながらパッラーディオやその弟子による作品を見てきたが、ここキエリカーティ宮の真っ白で気品高い作品を見ると(勝手な思い込みだが)集大成を魅せられたような気分になる。

 本当の集大成はオリンピコ劇場の内部になるだろう。これはパッラーディオの最後の作品なのだそうだ。観光案内所に行くとオリンピコ劇場でチケットを販売しているというので劇場窓口でチケットを買おうとすると劇場とキエリカーティ宮内部の絵画の閲覧の共通チケットで8ユーロだという。いやいや、共通チケットでなくて割高でもいいので劇場のみのチケットを買いたいというと、そんなもなぁないのだそうだ。ということで無理やり絵画も見ることになった。

 でもその前にお昼ご飯。パッラーディオ大通りを劇場に向かって歩いている途中の右手に、とてもおいしそうなお惣菜屋さんを発見した。高級な感じで来ているお客さんも年配の人が多いのだが、あまりに魅力的なのでここの惣菜を買って劇場の素敵な中庭のベンチで食べることにしたのだった。これは大正解。この地方の名物料理の干しダラの料理などレストランで食べたらもっと値が張るだろう料理を食べることができたからだ。しかもおいしかったしね。

 さてご機嫌な昼食を終えたら劇場の見学だ。

 劇場に至るまでには短い廊下があって、この劇場のこけら落としの公演に対する各誌の賞賛のコメントを両脇に並べた展示になっている。

 「感動しない者はいなかった」

 とかね。単に劇場を見せてしまうのではなく、こういう期待感を高める演出が面白い。


 劇場はステージに対して客席が扇形に広がる会談席になっていて、先日訪れたヴェローナのローマ古代劇場アレーナのようになっている。舞台は後半半分は細かい装飾の壁が立ち、壁の後ろには町が続いているという不思議な構造だった。見学客はステージの近くからも客席の一番上からも舞台を見ることができるようになっているのだが、いずれにせよ観客席とステージがとても近いので普通のカメラで全体をおさめるのが難しい。逆に言えば、ここでの舞台はどの席から見ても迫力が感じられることだろう。
 

 次にキエリカーティ宮の見学に行ったのだが、一番有名なティントレットの絵画のある部屋では何かのセミナーが行われていてよく絵が見られないし、他の部屋の絵画も別の展示会にお出かけして不在だったりしている。そもそも興味もあまりない絵画館のチケットを劇場と抱き合わせで買わされた上にこういう状態を見せられるのは不愉快だった。

 さっさとキエリカーティ宮は後にして、この町最後の見所のシニョーリ広場へと向かった。ここにはパッラーディオの代表作バジリカがある。今日は市の立つ日で昼過ぎのシニョーリ広場には、まだ様々な屋台が店を広げてバジリカがよく見えない。私たちはもう少し先をぶらぶらと散策してからジェラードを買って、バジリカが右手に見える建物の入り口階段に陣取って市が閉じるのを待つことにしたのだった。同じように待っている人も数人いた。

 30分ほど待った午後2時半、ようやくバジリカの前がすっきりと片付き全体の姿が見えるようになった。高い1階、アーチ型の飾り窓と柱、そして建物の上に彫刻。だんだん、わかってきましたねぇ。
 

 パッラーディオ見学のしめくくりに私たちはヴィチェンツァ郊外の邸宅を2つ訪ねることにした。ラ・ロトンダはメインロードから狭い道をかなり入り込んだ場所にあり駐車場も見つからないので、一瞬車を停めて外観だけ撮影させてもらった。1つはパッラーディオのヴィッラの中でも一番有名というラ・ロトンダは玄関のファサードが立派な邸宅で後ろに丸い屋根がついているからロトンダと呼ばれているのだろう。確かに優雅な作りで素敵だった。

 もう一つは屋根の上に彫刻が3対乗ったヴィッラ。ロトンダの細い道をメインロードに戻っていく途中、左に折れる人しか通れない小道がある。その小道を800mくらい行くとこのヴィッラがある。またしても車は駐車禁止の場所しかないので、私が車に残って夫がダッシュして見て来た。行ってからわかったのだが、このヴィッラには反対からもっと楽にアプローチできる道があったのだそうだ。そっちが正門で夫はいわば裏口から入ってしまったらしい。見学対象になっているヴィッラの手前左手には普通に家族が暮らしていて、夫が裏口から入ってしまった時に丁度家に帰ってきて鉢合わせ。「正面玄関はあちらなのですが」と説明されたのだそうだ。
 

 パッラーディオのヴィッラ2つの共通項として建物の真ん中に玄関があり上の屋根の部分が玄関部分だけ三角形に尖っている。あれ?これ、どこかで見たことあるよなぁ。そうそう、家の実家の屋根がこうなっているのだ。ぜーんぜん大邸宅ではなくて工務店のカタログから選んで建ててもらった家なのだが、何とパッラーディアン様式を取り入れている。そうかぁ、家はパッラーディアン様式だったのかと大笑いになった。

 ということでパッラーディオ三昧のヴィチェンツァ観光を終了。これから世界中で見る建物にどれだけパッラーディアン様式が使われているか、気になってくるのかもしれない。


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