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2008.08.24
天才ダ・ヴィンチの広場があるヴィジェーヴァノと壮麗さに驚くパヴィア修道院
ミラノ郊外にある2つの町を訪ねる予定の一日。
一つはダ・ヴィンチが設計したドゥカーレ広場が町の中心にあるヴィジェーヴァノ、もう一つはパヴィアだが、こちらは町ではなく郊外の修道院が目的だ。今日は日曜日なのでもしかしたら町は閑散としているかもしれないが、広場はいつでもオープンだし修道院は月曜日が休館なので問題ないと踏んで、出かけることにした。
今日は高速道路も使わずにずっと下の道を走る。ここの所、ミラノ中心地で重い石造りの建物ばかりを見続けてきた目にとって、緑の草原は嬉しいご馳走だ。おお、目が喜んでいると感じるドライブだ。
1時間ほど走ってヴィジェーヴァノに到着。路上駐車できるスペースが空いているが、これが有料なのか無料なのかわからない。近くを通りかかった住民に尋ねると白線ならば無料、水色の線だと有料なのだそうだ。私たちが見つけたのは白線のスペースだったので、これはいいとさっそく駐車して歩き始めた。
ヴィジェーヴァノの中心にあるドゥカーレ広場は壁に囲まれている。タイムトリップしたような壁をくぐり抜けるともうそこは広場になっていた。
三方を柱廊に囲まれた長方形の広場は、残る一方にドゥオーモの正面玄関がくる。ドゥオーモを背にして広場に立つと、左手の柱廊の裏手にはお城のブラマンテの塔が見えている。
ダ・ヴィンチの設計による広場と言われても、この何の変哲もないような長方形の広場のどこが素晴らしいのかと最初はわからない。
しかし、詳細に見ると床には現代でもモダンアートとして通じるような斬新なデザインが描かれ、柱廊のフレスコ画が細密で、その上にある煙突は様々な形をしている。統一感があるようで細部にこうした遊び心が入っている。でもまぁ、こういう手の込んだ芸術も「天才」と言うほどかなぁと思っていると、広場の中央にたってふと感じることがあった。左右に広がる空間の広さと柱廊の高さが丁度いいのだ。広すぎず、狭すぎず、高すぎず、低すぎず。この広場にいることが何かに守られているようで、それでいてオープンな感じがしてとても気持ちがいいのだった。きっと、この感覚、これが天才といわれるんだと私は勝手に判断した。
今まで他の人がダ・ヴィンチが天才だ、天才だといっても、どーにも今一つピンと来るものがなかったんだけど、この空間に身を置いて私は初めて彼が天才なんだろうなぁという気がしたのだった。
左側のブラマンテの塔の辺りから柱廊を通り抜けてお城側に抜けられるようになっている。
緑の芝生を取り囲むように建物があるのだが、どこを見ても発掘現場か廃墟かという感じ。ここは今でも修復中のお城なのだった。一部は修復というよりは改装されて靴博物館になっていた。ここは外観は昔と変わらないまま中がとても近代的で美しくなっている。また一部は昔のまま残っているのだろうか、優美なアーチが2段になった廊下が見える。建築を勉強した夫は「遥か昔にこういうのを教科書で見たけど、まさか本物を目にするとは」とかなり感動の様子だった。
もう一度広場に戻ると、広場を取り囲むカフェやレストランが出しているオープンの席は人がいっぱい。日曜日で閑散としているかと思いきや、ここは国内でも有名な観光地らしい。
今度はドゥオーモを背にして右奥から柱廊を抜けてみると、閉まって静かな商店街がありその先には地元の人が通う教会があった。
入り口に立っている男性が「どうぞ、どうぞ」と招き入れるので中に入ると、外の喧騒とは隔絶された静かな空間の中でしめやかにミサが行われていた。外にいる人は観光客で地元の人は日曜日は教会ミサに参加しているようだ。最近はヨーロッパでも日曜日のミサに行かない人が多いとドイツ人から聞いていたがイタリアではまだ敬虔なキリスト教徒が多いようだ。
時刻は12時をまわったところ。私たちはここに来るまでに見かけた中華のテイクアウトの店で炒飯でも買って車の中で簡単に昼食を済ませて次の目的地に向かおうと考えていた。
ところが左に1軒、右に1軒、観光客向けという感じではない肩の力の抜けたピッツェリアが向かい合っている場所に遭遇。お客さんが食べているピザがたまらなくおいしそうだった。
折角イタリアにいるんだからピザでも食べようかと、この店で昼食を摂る事にした。ビザ1枚とサラダとお水で11.5ユーロ。ユーロが強い時期だったのでドルに換算すると17ドル、日本円で1800円くらいになる。ひえー、高い。でも釜でサックリと焼かれたピザは生地がモチモチしてとてもおいしい。このピザはマルゲリータからチーズを取り除いたものでとてもあっさりしておいしかった。でも私としてはチーズありの方が好きだな。
さて、昼食も終わりお次の目的地パヴィア修道院に向かう。
ちょっとわかりにくい場所にあって行き過ぎて戻ったりしたのだが、無事に到着できた。「修道院観光客用駐車場」という表示に従って広いキャンプ場のような場所に入るとすぐに駐車料金2.5ユーロを徴収された。
ここから歩いて100m程の所に修道院がある。午前11時半に一旦閉まって、午後は2時半から開門。午後2時ちょっと過ぎに到着したのだが、既に午後からの開門を待って人々が集まってきていた。
午後2時25分に何となく門が開かれ、圧巻の大理石のファサードが目の前に見える。みんな引きつけられるようにそのファサードに向かってまっすぐと歩き始めたのだった。
残念ながら真ん中部分が修復中でビニールに覆われてしまっていたが、それでも天候に恵まれて青い空を背景に堂々と立つ修道院は素晴らしく立派で美しかった。あまり期待していなかったのだが、この正面の姿を見ただけで来て良かったと思えるほどだった。
近寄ってみると、一面に細かい装飾と彫刻が貼り付けられていて、微妙に色の異なる大理石が用いられて、巨大な宝石箱みたいに精巧に作られていることがわかり、ますます感心。いやー、すごい。
修道院の内部からは司教さんが解説してくれるので、それについて周ることになっている。もちろんオールイタリア語のみなので、何を仰っているのかさーーーっぱりわからん。どうやらここを訪れる観光客の大半はイタリア人のようだ。
説明はわからないが、内部の装飾の豪華さは一目瞭然。この修道院は14世紀後半にヴィスコンティ家の霊廟のための教会として建てられたのだそうだが、フィレンツェのメディチ家の礼拝堂に勝るとも劣らない豪華さだ。規模からいったらこちらの方がずっと大きくて立派だった。天井ドームに施された絵画、教会内の至る所に使われている大理石、彫刻、壁を埋めるように細かく仕切られて描かれている宗教絵。
どこに目を移してもびっちりと何かの装飾が施されて手を抜いていないというか、ものすごくみっちりと詰まっている教会だった。
司教さんは教会内部の小部屋などにも案内してくれて長々と説明してくれる。皆、その度に話題にのぼっている物の方を向いて真剣なおももちでうなずいていた。私たちもちーーーっともわかっていないけど、皆の振り向く方向に振り向いて同じものを見ようと試みてみたりした。
次に教会を出て2つある中庭の小さい方を取り囲む廊下を歩くようになる。この1つめの中庭がねぇ、何とも美しかった。
今日はヴィジェーヴァノのドゥカーレ広場といいこの修道院の中庭といいとても美しい空間に驚かされる日だ。下に広がる赤い植物から始まってアーチを描いた美しい柱廊、その背後に円柱とアーチを組み合わせた塔や煙突のような塔が組み合わさって、更に上に小さなアーチが並ぶ柱廊が2階層になっている。上に行くほど小さいアーチを使っているせいか、遠近が強調されてうわーっとこちらに迫ってくるような感じがするのだった。あまりに気に入ってこの場所だけで2人で50枚近く写真を撮影してしまった。
中庭の後には食堂や客室を通って最後に僧侶の部屋が並ぶ大きな中庭でツアーは終了。先ほどの優雅な中庭に比べるとこちらは機能的で簡素な場所だった。部屋の内部を見学させてもらったが、ほぼ何もない超シンプルな作り。ここで雑念を払って瞑想にふけるのだそうだ。
ここで拍手とともにツアーが終了。司教さんが皆さん一人一人をお見送りし、参加者は感謝の言葉を述べたりしながら傍らの入れ物にお気持ちのコインなり紙幣なりを入れていくことになっていた。「チップはこちら」とか「今日のお気持ちとして何らかの・・・」なんて説明は一切なし。全ては神の御心の下に敬虔にお布施を渡していくのがイタリア流らしい。私たちも敬虔な表情でコインを渡してツアーを終了した。説明はさーーーっぱりわかんなかったけど、今日はすごいものを見せてもらえたし満足、満足。
何となく歩いていくとお土産物コーナーに行くことになっている。そこには僧侶の姿の販売員さんが(というか僧侶なんだが)チョコレート、はちみつ、お酒なんかを販売している。敬虔なイタリア人はここで大量のお酒やらチョコやらを購入して帰るのだった。私たちもチョコを1枚。1ユーロってのは安いんじゃないだろうか。味は普通だったが、友人たちと神妙に食べたのは言うまでもない。
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