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2011.07.13
オペラ・バスティーユを立ち見席で楽しむ
フランス:パリ

 パリといったらそりゃぁもう楽しみは色々あるのだが、その中の1つにクラシック音楽に親しめるというのがある。新旧二つのオペラ座では夏休みをのぞいてオペラ、バレーなどが頻繁に行われており、出演者も世界に名だたる一流人がたくさん出てくるようだ。

 パリに到着して観光案内所でオペラ座のスケジュールを入手した我々は、友人の勧めもあって今日のヴェルディーのオペラ「オテロ」を見に行くことにした。私たちにとっては頻繁に上演される名作オテロに触れるチャンスでもあり、もっとクラシックに詳しい友人にとっては、今世界でもっとも注目されているオペラ歌手の一人ルネ・フレミングRenee Flemingを見られるチャンスとなった。お互いに異存なしだ。

 観光案内所で聞いたら立ち見席は当日のみ買えるとだけ教えてくれた。因みに旧オペラ座のオペラ・ガルニエに立ち見席はないそうだ。友人の他の国での立ち見席事情をもとに、私達は上演7時半の約3時間前の午後6時40分にオペラ座に到着して立ち見席を探し始めた。

 まず向かったのは「ビリエッテリー」Billeterieというつまりチケット売り場。奥のカウンターの手前の左壁際に床に直接座っている若者の列があり、いかにも立ち見席を待っているかのように見えた。

 最後尾に座り込んでいる女性に英語で話しかけたら、ドイツ語だったら使えるというので友人にバトンタッチ。彼女もここでチケットを買おうとしているというので間違いないと思っていた。

 ところが、この頼りにしていた女性が突然立ち上がってどこかに消えてしまったのだ。あとに残るのは学生のような若者ばかり。なーんか様子が変だと思って、今度はこのオペラ座の係員をつかまえて聞いたら、この列は当日キャンセルのチケットを買いたい人の列なのだそうだ。

 立ち見席を買いたい場合は、この場所(外から入る時に戸口上部にBillietrieと書いてある)から左手方向に回りこんだ場所になると言われた。歩いていくと、建物の外に人が集まっている場所がある。その辺りにいる人に立ち見席を買いたいのだがと相談すると、建物に一番近い場所に立っている黒いハンチング帽の男が係員だから聞いてごらんと言われた。

 特別なバッジを胸につけているわけでもなく、どこにでもいる普通の男性に「立ち見席を買いたいのですが」というと、すぐに「何枚?」と聞かれて3枚と答えると2枚の予約券をくれた。予約券1枚で2席まで買えるのだそうだ。チケット販売は午後6時開始なのでそれまでには必ずここに戻ってくるようにと言われた。 

 もらった予約券は広告の裏でも使っているような粗雑で不揃いな大きさの紙切れに、手書きで数字が書かれていた。28と29。後で聞いたら立ち見席は62席分しか売りださないそうなので予約券は31番までしかない。おおお、ぎりぎりだった。時刻は午後5時前だ。

 せっかく作ったお弁当をキャンプ場に置いてきてしまうという失態を犯したために、3人で半バーバーショップでしょぼい夕飯を食べて済ませた。本当はシャケ入りおにぎりだったのに。忘れた自分がアホだった。みんな、ごめんね。

 午後5時半に予約券を配布していた場所に戻ると、予約券はもうないと断られている人が続出。ぎりぎりでも入手できてよかった。午後6時を待っていたら日本人らしき女性一人がやってきてやはり断られている。私達は予約券2枚で購入枚数は3枚なので1枚空きがある。日本人のよしみで一緒にいかがでしょうか?と声をかけて知り合ったのが、こちらでピアノを勉強している女性だった。私たちの友人も音楽に詳しいので二人はすぐに意気投合してしゃべりはじめ、すぐに今日の公演でルネ・フレミングが出ない事が明らかになった。「ええええ?出ないんですか、彼女」とがっくしと友人は肩を落したが、まぁ立ち見席は5ユーロだしヴェルディーだし一応見ておくかという話になったのだった。

 そして午後6時に建物の中に入る扉が開いた。意外にも早い者勝ちではなく、整理券を配っていたハンチング帽の男とその仲間たちが整理券番号を確認しながら番号順に入れていたのが、なぜか私の中ではウケた。それにしても、このやり口がヨーロッパな感じがする。暗黙の了解的に手書きっぽい整理券がハンチング帽の男から渡され、1時間後にここに来いと指令され、ちゃんと時間通りに扉が空いて立ち見券が買える。このピッカピカのオペラ・バスティーユの建物となんかちょっと胡散臭い昔ながらのやり方が共存しているのが、非常にヨーロッパな感じがした。

 オペラ・バスティーユは内部もピッカピカだった。ルネ・フレミングの大きな立て看板がショップの前に立っていて、友人が再びくやしそうに唇をかんだりしながら、チケット購入の行列がすすんでいった。

 チケットは何と自動販売機で発売。といっても2台ある販売機には1名ずつ係員が立っていて丁寧に購入方法を説明してくれて、販売機の意味があんまり感じられないのがおかしかった。

 たった5ユーロしか払っていないが、チケットはロイヤルボックスなみに美しくて気分がいい。

 会場に入る手前に縄がはられていて立ち見席組は再び階段下で待機することになった。午後7時少し前に縄が解かれて会場に入れるようになった。さぁー、いい場所を取るぞー!と小走りで階段をかけあがっているのは私たち4人だけで、他の人はのんびりと歩いている。あれれ?ウィーンじゃ皆走ってたけどなぁ。やはりお国が違うとマナーも違ってくるようだ。

 知り合ったピアニストの女性が、近々オペラ・バスティーユの立ち見席の場所がもっと上階の天井近くになるのだが、今のところは1階の一番後ろだと事前に教えてくれていた。オペラ・バスティーユの1階席は全体的に緩やかにステージに向かって下り傾斜となっているから一番後ろでもとても見えやすかった。しかも、立ち見席といいつつも軽く腰掛けられる横がけ用のクッションのついたバーがあるので、ちょいと腰掛けながら見られるのだ。これは素晴らしい。完全に立って見る事を覚悟していたから、大分気が楽になった。

 更に、更に・・・。このピアニストの女性は「開演直前に席が空いていたら、ここの場合、立ち見席の人が座ってもいいらしいのよね」と言う。なるほどそれで理解できたのだが、私たちの後に入ってきた立ち見席の人が通路近くにかたまって奥の席までこようとしないのだった。これは空き席に移動しやすいポジショニングをしているからに違いない。私達もにわかに色めきだって、空き席争奪戦への参加意欲を高めたのだった。

 そして、いよいよ会場への扉が閉鎖されてもう誰も入らない状態になった瞬間、大移動が開始された。そして私達はピアニストの女性の手引きのもと、まんまと4つ並ぶかなり素敵な席に移動することができたのだった。彼女いわくこの席はお一人様89ユーロするんだそうだ。ひぇー、ラッキーだ。ルネ・フレミングが出なくなったせいで空き席が増えていたという事が大きく影響していたのだとは思うが。

 ウィーンのオペラ座同様、ここにも各席で字幕スーパーが見られるようになっている。表示されるのは自分の座っている前の席の背もたれ上部だ。今日のイタリア語オペラも英語かドイツ語を選べるようになっていた。これがあるとオペラの内容が大変によくわかるので長すぎて眠ってしまうことなく楽しめる。

 獲得した席から振り返って後ろをみあげると2階席、3階席が見えた。上の階の席がこんなに1階に覆いかぶさっているということは2階席の前部の席はかなりいい感じに見えるのかもしれない。

 デザインだけでなく機能も備えた近代建築を見物するという意味でも今日は本当に来た階があった。

 ということで、「オペラ・バスティーユでオペラを立ち見する」ミッションは大成功に終わった。オペラそのものは、私の勉強不足のために心から楽しめるほどではなかったのが残念。次回はもっと事前にアリアなどを聞いてからのぞむべきだろうな。


 
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