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2011.07.09 Vol.2
優秀なのはfnac店員か?私か?
フランス:パリ

 オペラ座南部のピラミッド近辺でラーメンを食べてから、お次にめざしたのはシャンゼリゼ通りのfnac。なぜこのfnacにピンポイントで向かっているかというと、ここの前にいたランスのfnacで友人がある映画のDVDを買おうとしたら品切れで、シャンゼリゼ通り店にならあると社内検索システムでfnacの店員さんが調べてくれたからだった。fnacというのはフランス全国にあるコンピュータなどの家電と書籍とDVDやCDを扱うチェーン店で、私たちもしばしばお世話になっている店だ。

 ピラミッドからシャンゼリゼまで地下鉄を使うという手もあるが、ブラブラ歩きが楽しいパリなので歩いて行くことにした。途中に美しいケーキショップあり、移動遊園地ありと相変わらずにぎやかで楽しい。シャンゼリゼ通りに入ると、それこそ世界中の人種品評会とでもいうようにあらゆる肌の色の人々が練り歩いていて、それを見ただけでもパリに来たなぁという感じがした。

 fnacは土曜日とあって大賑わい。万引きなども多いのか黒人の屈強な警備員が二人も入口に立って、するどい視線を走らせていた。

 友人が買いたいと思っていたのはフランス映画でトリュフォー監督の「隣の女」だ。彼女が大好きな指揮者がここに出てくる女優さんの大ファンで・・・ってもうややこしい事情はともかく、ここのfnacに在庫は見つかったのだが映画がかなり古いものなので名画扱いで売られていて、この映画1本のDVDで25ユーロもする。どうしようか、どうしようかと友人が悩んでいる間、私達は音楽CDコーナーで遊ぶことにした。

 さーて、フランスの音楽で気になるものといえば、マルチニーク諸島に起源を持ちフランス在住黒人中心に人気の「ズーク」。シャンソンもいいけど、ちょっと古いしなぁ。フランスの近年ヒットチャートもお手軽にトレンドがわかっていい。と楽しんでいたが、先日訪れたエペルネーで気になる曲があったのを思い出した。

 エペルネーのシャンパンバーでかかっていた曲なのだが、歌詞が「働きたくない、お昼ご飯も食べたくない、ただ忘れたいだけ、そしてタバコを吸うの」というのがサビの曲。こうやって日本語に訳してしまうと、自堕落な女の歌に聞こえるかもしれないが、何があったかしらないけど大きなショックを受けた女性が、自分の部屋でぽっかりと胸に穴が開いた気持を「哀しくない」長調のメロディーで歌っている。深刻な歌詞と裏腹にポップな旋律が逆に哀しさを表しているようで、「ああ、そういう時もあるよね」と共感を覚えて忘れられなくなった曲だった。

 問題は有線ラジオでかかっていたものなので、歌っている人の名前も曲のタイトルもわからない。わかっているのはサビの歌詞と節だけだった。さー、この歌を実際に歌ってみて店員さんはCDを見つけられるのか?

 fnacのCDコーナーには「accueil」というデスクがあって、ここで商品についての質問などを受けているようだった。丁度、デスクの女性はお客さんもいなくて手が空いていた。「最近フランスのラジオでかかっていた曲だけれど、歌手名もタイトルもわかりません。歌の一部なら歌えるのですが、あなたにこの曲がわかりますか?」と言うと、彼女は大きな目をクルッとさせて「聞いてみないとわかりませんね。歌ってもらえますか?」と面白そうに答えてくれた。ヨドバシカメラの店員さんみたいだ。あそこも商品知識が豊富な店員さんは、難しい質問ほど嬉しそうに答えてくれる。腕試しだという風情だ。

 そこで私は、先日聞いた歌の一節を彼女に歌ってみせると、即座に「ああ、Pink Martiniね」と言いながらパソコンのキーを叩いて、在庫確認と商品のあるコーナーがラテンアメリカだと教えてくれたのだった。Pink Martiniは12人のメンバーからなる音楽集団で自らも曲を作りつつ、世界中の曲をマルチリンガルに(その国の言葉のままに)カバーしている。それ故に、コアメンバーのトーマス・ローダーデールとチャイナ・フォーブスの二人はハーバード大学で知り合ったというから基本的にはアメリカの音楽グループということになるが、フランスfnacでの扱いはラテン音楽のジャンルになるのだそうだ。

 私達が気に入った曲は彼らのデビュー曲「Sympathique」だった。

 Sympathiqueはフランス語の曲で、アメリカ人が作ったにもかかわらずフランスで流れた途端に大人気を博し、1997年リリースの3年後にはフランスでVictoires de la Musique Awardsで“Song of the Year” と“Best New Artist”を受賞したそうだ。この賞がどのくらい有名かわからないが、私が口ずさんだだけで店員さんがわかるくらいに有名な曲だった事は確かだ。

 アルバムはSympathiqueの他にも様々な国の有名な曲をカバーしており、驚く事に美輪明宏氏の「黒蜥蜴」も日本語でチャイナ・フォーブスによって歌われていた。パッケージの挨拶文には「Special thanks to "Ms."Akihiro Miwa」となっている。

 入っている曲はいい曲ばかりで、このバンドのセンスを感じさせる。いやー、見つかってよかった。

 で、このCDが見つかったのは店員が優秀だからなのか?それとも私が一瞬にして曲を覚えていたからなのか?

 答えは「この曲が優秀だった」ってことだ。


 
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