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2011.06.19
パワーを感じるぞ!ヴェズレー訪問
アンドレ氏に「明日はヴェズレーに行ってこようと思うのですが」と言うと、「それは素晴らしい!」と思っていた以上にヴェズレー行きに大賛成してくれた。アンドレ氏いわく、ヴェズレーにはパワーポイントがあるというのだ。
ヴェズレーはスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラまで続く巡礼の道の起点の1つとなるサント・マドレーヌ・バジリカ聖堂がある町で、この教会と丘が世界遺産に登録されている。マグダラのマリアの遺骨が祀られているとされたために人が押し寄せて中世の巡礼路の出発地となったのだが、実は遺骨は南仏にあるという説が有力になって衰退。19世紀になって再び価値が認められて修復され、現在は世界遺産という事になっているそうだ(「地球の歩き方」より要約)。
で、アンドレ氏の言うパワーポイントとはこのバジリカ聖堂の説教壇近くから階段を降りた地下だというのだ。「そこに立って、こういう風に肩幅くらいに足を開いて力を抜いて、両手の平を地面に向けてパワーを・・・・ああああ・・・・」アンドレ氏は説明している途中に急に大きな声をあげて宙を見つめて幸せそうに微笑んでいる。
「あ、あのー、どうかされました?」と聞くと、アンドレ氏は「今、こうやって手のひらを地面に向けたら、あのヴェズレーの地下からのパワーを、今、まさにここで感じる事ができたのです。いやー、こんな事は初めてだ。何と素晴らしい体験なんだろう。いやー、素晴らしい。」と一人興奮状態になっている。夫いわく、大きな岩などがある場所ではそこから磁場が発生しているのである種のパワーのような物を感じることがあるかもしれないそうだが、その磁場が何十キロも離れたここまでパワーを届けるかっつーと、そりゃぁかなり疑問を感じてしまう。が、アンドレ氏が感じるっていうんだから感じるのだろう。世の中には私には計り知れない物事がたーっくさんあるのだ。
とにかくヴェズレーのバジリカ聖堂に行ったら是非パワーを感じてきてほしいと、教会内の階段を降りる場所の簡単な手書き地図まで作って手渡してくれたのだから、パワーを感じないといけない事になってきた。
現在ウーファーはベン君と私達とアメリカ人20代前半の女性2人。アンドレ氏は出発間際まで、このアメリカ人にも「こんなチャンスはないのだから、絶対に一緒に行くべきだ」と力説していたのだが、アメリカ人は興味がないようでついてこなかった。
車を走らせる事1時間弱、ヴェズレーの丘が見えてきた。今日もあいにくの曇り空。どうにもこの夏の北ヨーロッパは天気がよくないようだ。ヴェズレーの町は左手の丘から右に下るひょうたん型の町だった。一番ふもとの町の外の民家の前に無料駐車できるスペースを見つけて車を停めた。
町の入り口から一番奥のバジリカ聖堂までは一本道の上り坂。表参道といった趣で土産物屋、カフェ、レストランなどが並んでいて、小さいながらも観光客が多く集まっていた。さすが、世界遺産だ。
道沿いにはギャラリーも多かった。中でも昔のこの周辺の様子や人物を撮影したフォトギャラリーがあって、面白そうだったのでベン君と一緒に入ってみた。店の中は照明を消してとても薄暗かったのだが、外で近所の人とおしゃべりしていた男性が店内に入ってパチッとスイッチを入れたのでよく見る事ができた。3分くらいも見ていただろうか、その男性がベン君に向かってフランス語で「いらっしゃいませ、何かご入り用ですか?」と聞いてきたので、ベン君がフランス語で「いえ、特に。見ているだけですので」と答えた瞬間だった。パチッと照明が消されて「オーヴォワール」と男性が戸口を指し示している。あまりに明らかな態度にベン君と私は顔を見合わせて笑いをこらえながら「オーヴォワール」と店を出てから大爆笑。
「見けるだけって言った途端に消したよねぇ。」「いやー、早かったねー」と笑いあった後に、ベン君が「僕がイギリス人だからだと思うな。フランスじゃぁ時々こういう扱いを受けるんだ」と言っていた。だから悲しいというわけでもなく、さらっと状況説明的に言っているあたりが2国民のこなれた間柄を表わしているように思えた。他でも聞いたが、フランス人から見るとイギリス人は兄弟みたいな感じがするらしい。憎いようで愛すべき存在、そんな親しさを感じていると言った人がいた。ドイツに対してはそういう感情はないそうだから、やっぱりこの2国は特別なんだろう。
そして、こんな看板もあった。これは巡礼を行いたい人への案内所はこのビルの2階にあるというお知らせ看板だが、巡礼者の特徴であるホタテガイの飾りと、巡礼者が持っている杖でわかりやすい看板になっている。
いまや巡礼は単なるキリスト教信者のものだけでなく、世界中から様々な人が様々な目的で参加しているようだ。スペインで出会った日本人バックパッカーの中には「宿泊費を浮かして旅をしたいから」という理由で始めた人もいたが、さすがに彼は3日で挫折したらしい。そんなに甘いものではないようだ。
巡礼の終点地であるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラに行ったことがあるが、あそこで出会う巡礼者は誰もが達成感に満ちてニコニコしながら満足気だった。遥か遠くのここヴェズレーから歩くという人は少ないだろうが、こんな遠くから歩いたらさぞや達成感も満足度も高いものになるだろう。ここからサンティアゴ・デ・コンポステラまでかぁ。スペインも車で移動したし、フランスも現在車で移動中。車でさえもかなりの距離を感じるのだから、いわんや徒歩をやであある。サンティアゴで出会った人の笑顔のわけが、ことさらリアルに感じられるヴェズレー訪問だった。
そしていよいよバジリカ聖堂に到着した。今日は日曜日とあって内部ではミサが行われており、これが終了しないと地下のパワーポイントに入れないことになっていた。ミサが終わってからまた来てみよう。
ミサには大勢の人が集まっていたが、ミサの周囲の回廊の見学などは許されていたので入ってみた。
柱頭には聖書の寓意が描かれた彫刻が付いているというのだが、この彫刻がまた、うーむ。イタリアの写実的かつ劇的な内面を示すような顔の表情や肉体がリアリティーをもって彫り込まれたものを思い出して比べるに、フランス人というのは彫刻においてのリアリズムは追求しないことにしているのかというくらい見事にアンバランスで無表情。中にはキッチュと言える人物さえあって面白かった。
教会の裏手から眼下の村や森を見渡せる眺望が楽しんだり、裏庭の樹木を見たりして聖堂を一回りして気付いた。

正面の門から出た階段の下の道路に巡礼路を指し示す貝殻模様が埋め込まれている。
この貝殻、どのくらいの感覚で埋め込まれているのか知らないが、ここから津々浦々スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラまで埋め込まれているようだ。ゴール側のサンティアゴでも見たので途中も埋め込まれているのだろうと思う。
あらためて、ここが出発点だと思うと感慨深かった。巡礼はしないけど、出発点に敬意を表して写真撮影(巡礼しないんかい、と友人から突っ込みが入りそうな・・・)。
まだミサも続いているようなので、途中で見かけた「地球の歩き方」でも紹介されているレストラン、その名も「オーベルジュ・ラ・コキーユAuberge
La Coquille」(コキーユって、ホタテガイだから。巡礼つながりで)でお昼ご飯をとることにした。ここ数日、この週末のご飯を私達とベン君は楽しみにしていた。アンドレ氏の家での食事はたっぷりした量はあるのだが、何分お肉が少ない。昨日、スミュール・アン・オーゾワの町中のレストランメニューで「ブッフ・ブルギニョン」(牛肉のブルゴーニュワイン煮込み)の文字を見てしまってから、私たちは「お肉、お肉が食べたい!」と連呼していたのだった。
ブッフ・ブルギニョンは定番メニューのため、ここでも昼のランチセットのメインの選択肢の1つになっていた。
3人とも迷わずブッフ・ブルギニョンを選んで、がっつりと肉を食べたのだった。
いやー、満足、満足。
因みにこのお店は大変な人気でボリュームもちょっと多め、お値段は安め、しかもなかなかおいしいくて当たりの店だった。
お昼ご飯を食べて外に出ると、晴れ間が少し戻ってきていてバジリカ聖堂も美しくそびえていた。
中に入るとミサが終了していたので、早速アンドレ氏に教えてもらった正面奥近くから階段を下って地下におりてみた。通常、こういう地下に下りるとヒンヤリとした空気が体にまとわりついてくるものだが、ここは何故かぼんやりと暖かい。それだけでも何か普通とは違う感じがした。
他に観光客がいるのも構わず、3人で手のひらを床に向けてパワーを感じ取ろうとしたのだが、やはり他人の視線が気になって集中できない。何度か試みたが結局パワーと言えるものまでは感じる事ができなかった。
最後に聖堂をもう一回巡って見ると、礼拝堂の1つがイタリアのアッシジの聖サンフランシスコを祀っているものだったことに気付いた。もっともフランス語の説明看板には「聖フランソワ」とフランス人のような名前になっていたのだが、小鳥と話をする聖人の絵が描かれていて、アッシジの名前も出ているから間違いない。
イタリアのアッシジからはるばると北フランスに入ろうかというヴェズレーの聖堂まで名前を轟かせた、この一見気弱そうな聖人の人気に再び驚かされたのだった。
見学を終えて車を駐車してある場所まで来たら、珍しいクラシックカーがずらりと並んでいた。どうやら、クラシックカー愛好家が集まって集団ドライブを楽しんでいるらしい。
ヴェズレーのような歴史のある街並みにクラシックカーはとてもよく似合っていた。ヨーロッパでは大人が真剣に遊んでいるのをよく目にするが、こういうのも大人の遊び。なんか優雅だなぁ。
ヴェズレー見学だけではもったいないので、近くにあるお城とローマ時代に塩を採っていたといわれる場所2ヶ所を巡って帰ろうかということになった。ところがお城は展示されている物の解説と入場料金8ユーロが見合わないものだったし、塩の採掘場はさしたる遺跡も残っていないようなのに入場料金4ユーロ。さっき城を見送ったから、ここくらいは入るべきかと考えていたら、後から来たフランス人観光客が解説のパネルを読むなり踵を返して車で去っていったのを見て、私たちも見る価値なしと判断して、結局この日はヴェズレー見学だけで返った。

アンドレ氏が私たちを見るなり「どうだった?パワーを感じた?」と聞いてきた。私達が無理だったというと、「うーむ、あれもなかなか難しいから練習が必要なんだよねぇ」と納得していた。やっぱり私たちの力不足らしい。世の中には私の知らない事がたーっくさんあるのだ。
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