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2011.06.13
WWOOFerになってみよう!〜 初めての不安
さーて、3軒目のWWOOF農家滞在が始まる。ディジョン滞在ではブレス鶏、ブルゴーニュワイン、スルマントラン(赤かびチーズ)とこの地方の美食を堪能してとてもリフレッシュになった。今日からまたきっと質素な食生活となるだろうから、体には丁度いい。
今回訪ねるお宅のご主人アンドレ氏は、非常に丁寧なメールで家までの行き方を案内してくれたので、ほとんど迷う事なく家に到着した。と、ここまでは順調な滑り出しだったのだが、到着した家というのが家の壁際に廃材のような木切れや石ころや、その他意味不明のがらくたに思われる物がびっちりと積み重なっていて、まさにゴミ屋敷にしか見えない所だった。
こんにちはー、と声をかけても家に誰もいなさそうだったので、勝手に家の裏手に回り込むと確かに畑があって人が作業している。この家で現在WWOOFerをしているオーストリア人のインゲボルクとイギリス人のベンだった。アンドレが不在だということなので、この二人に家の中などを案内してもらったが、家の中もかなり壮絶なことになっていた。
とても大きな建物にもかかわらず、1階も2階もびっちりと物が集積されていて人間が使える空間は家の両端にしかなし。片方は5人も座ったらいっぱいになるキッチンとその奥にアンドレ氏のベッドルーム。物の集積にかろうじてできている通路を伝って、家の反対側に行くと15
人くらいが着席できる大きなテーブルと暖炉がある。
キッチンのそばにトイレとシャワールームがあるもののシャワールームに水が出る設備がなく、キッチンでお湯を沸かして汲みだして使うのだそうだ。
お湯を沸かしてシャワーするなんて、まったくもってネパールの山小屋以来の体験だ。まさか、ここフランスでそんな事になるとは・・・。
で、私たちは一体どこに寝泊まりすることになるんでしょうか?とかなりあきれ返りながら聞いたら、家の周囲にキャンピングカーのキャラバンが置いてあって、空きがあるからそこで寝泊まりする事になるだろうという事だった。まぁ、前の農家でもキャラバン生活だったので、それは問題なし、とこの時点では思っていた。
それにしても・・・。すごい、すごすぎる。と言葉を失っていたら、インゲボルグとベンは「まぁ、最初は誰でもショックを受けるんですけど、だんだんと慣れてくるというか、気にならなくなりますから」と気の毒そうに言ってくるのだった。
しばらくしてアンドレ氏が戻ってきたので、ここであらためて自己紹介という事になった。
アンドレ氏はとても柔和な人物で、にこにことしながら話し始めた。若い頃は内装業などを行っていたのだが、同時にこの敷地を買って、寝食を提供するので一緒に家を作るというプロジェクトに参加する若者を集めて、いわば一人でWWOOFのような事を始めたのが、既に15年くらい前の事のようだ。
写真を見せてもらったが、大型機械で掘削して井戸を付くって水源を確保する事に始まり、世界中から集まってきた若者のある物は床を仕上げ、ある物は壁を仕上げ、徐々に今の家の形になってきたようだ。その間にもアンドレ氏は働きながらだと思うが、資材を集めては家の中や周辺にせっせと積み重ねて、そして現在のような、一見するとゴミ屋敷にしか見えないような姿になっている事がわかった。話を聞いてみると、バスルームのちょっとした木彫りにも、暖炉のある部屋の床にも色々な国からやってきた若者のエピソードが満載で、アンドレ氏にとっては思い出がぎっしりつまっている家だということがわかる。それにしても、資材で埋め尽くされている床の下には温水パイプが巡らされて実は床暖房できる設備になっているというのは、驚きだった。
それでもって、15年経った現在も建築は進行中。どう見てもまだ全然家ができていないのは、素人の私が見ても一目瞭然だった。しかも、最近、同じ敷地に建っていた別の家屋も買い取ることになり、ますます建築しなきゃならない場所が増えてしまったのだそうだ。
「で、シャワールームにお湯がないというのは、どういう事でしょうか?」
色々とエピソードはあろうが、これから2週間をここで過す私としては一番の関心事について、やはり思い切って聞いてみることにした。するとアンドレ氏は笑顔を絶やさずに、「自分はフランスの原子力発電に反対している。フランスの電力は80%は原子力でまかなわれているので、シャワーを使わないことで反対運動になると考えている」というのだ。多分、アンドレ氏は大真面目に答えてくれているのだろうから、そこで敢えて「それではガスを使うという選択肢はないのでしょうか?」とは言えなかった。
割り当てられたキャラバンはツタに埋まっていた。 |
家の中は全体的に工具やら道具がたくさんある。 |
今まで2軒の農家でWWOOFerを体験したが、ここ3軒目にして初めて不安になってきた。この家でやっていけるのだろうか。
とにかく初日の今日は作業せずにゆっくり休んで、周辺の散歩でもしてきたらどうかとアンドレ氏が勧めてくれたので、散歩にでかけることにした。村はとても小さくてチャーミングだった。村はずれには、美しくはないが川が流れていてカヤック遊びもできるようだ。ちょっと散策したら林の不思議な生き物にも出会えた。
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ものすごい色のなめくじ |
棒でつつくと縮まる |
葉っぱのような蛾 |
ものすごく小さいカエル(右が私の靴) |
午後5時。キッチンでお湯を沸かしてシャワーを浴びる。夕方になるとまだ寒いこの地方で、この方法のシャワーは快適ではなかった。
夕飯時にはディジョンに住むカップル2人とアンドレ氏がディジョンに持つアパートの隣の住人の若い女性1人の3人が加わって、総勢8名となった。暖炉のある部屋で食事の前にアンドレ氏がチベタンボールと呼ぶチベット仏教で使っていそうな金属のボールを持ってきて、ばちをすりあててウァーーーンンンと音を立てる。皆で輪になってアンドレを囲んで瞑想するのだ。
有機農業、極力電器を使わない生活、ベジタリアン、チベット仏教、スピリチュアルな事・・・。今日、到着したばかりなので、まだよくわからないけれど、この家にはこうした文化が渦巻いている。後から加わった3人のフランス人の若者は、こうしたアンドレ氏が醸し出す不思議な世界にひかれてやってきているようだ。
いやー、どうする私達!
集まってくる面々もアンドレ氏もちょっと面白そうでもあるが、あのシャワーだし、私が知りたかったフランスの食文化については、ここではあまり得るものがなさそうな感じもする。
いやー、どうする私達!
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