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2011.06.10
ブルゴーニュのワイナリーツアー
昨日、ツーリストインフォで検討して申し込んだワイナリーツアーは、午前10時にディジョンをスタートして、ブドウ畑の間を走る狭い道をドライブして、2軒のワイナリーを訪れてブルゴーニュワインへの知識を深め実際に試飲するという内容で、所要時間3から3.5時間、一人58ユーロというものだった。
今まで世界各地でいくつかのワイナリーツアーに参加してきたが、ここブルゴーニュの参加費用は、訪れるワイナリーの数とツアー所用時間を考え併せると今までで一番高い。今までフランス国内の各スーパーのワイン売り場でもブルゴーニュワインとなると安くても1本5ユーロは下らなかった。他の地域ならば1本2ユーロ代からあるし、スペインのワインなどはフランスで2ユーロ以下で売られている物もあるくらいだから、ブルゴーニュは総じて高いなぁと感じていた。物の値段というのはある程度は品質に比例して伸びていくものだが、そこに歴史やエピソードなどの付加価値が付くと品質と値段が乖離して、値段だけが高くなる。ブルゴーニュのワインはそちらの枠に入っているという感じ。そういうわけだから、試飲が含まれたツアー料金もまた高くなるのは仕方ない。
集まってきたのはオーストラリア人の熟年カップル、私達、中華系オーストラリア人女性、台湾からの青年、アメリカ人女性の計7名。英語ツアーのせいか圧倒的に英語圏が多かった。この値段を出してもツアーに参加しようという人たちだから、皆それなりにワインや食べる事に対しては熱い思いを持っているメンバーで、運転手兼ガイドの男性の解説にいちいちつっこみや質問が入って、すぐに車内はにぎやかで打ち解けた雰囲気になった。
私達が訪れるのはディジョンのすぐ南にあるコート・ド・ニュイ地区Cote de
Nuits。ディジョンから車で20分も走ると辺りはブドウ畑ばかりの所になる。とある畑で車を停めてガイド氏がブドウの樹について解説してくれた。この辺りのブドウで地面に近い部分の幹が盆栽のように膨らんでいるものがある。これは、この樹がかなりの年数を経た老木であることを示しているそうで、ブドウの質もまた樹が年月を経ると深い味わいになるのだそうだ。確かにこんな幹のぶどうの樹は初めて目にした。とはいえ、継続的に同じ畑からブドウを収穫するために樹齢は様々に設定し、平均35〜38年にしてあるのだそうだ。にしても高齢だ。
コート・ド・ニュイの有名赤ワインはピノ・ノワールというブドウ1品種のみを使って作られる。ボルドーのように数種のブドウを合わせてブレンドの妙を競うのではなく、あくまでもその土地の傾斜や水はけやその年の降水量などによって異なる味に育つピノ・ノワールに品質がかかってくる。ブドウは水はけのよい、日照時間の多い斜面に作られる物が糖度が高くて味が濃いブドウとなり等級の高いワインの材料となる。今走っている道は、右手の斜面が左になるにつれてなだらかな平地になっている。道の左手に広がる平地の土地の値段は1ヘクタール4万ユーロだそうだが、例えばfixin村の場合右の斜面になると1ヘクタール60〜70万ユーロにもなるそうだ。それだけの富を生み出す土地なのだ。
こういう高級な土地からできるワインが特級、いわゆグラン・クリュとなり瓶には畑の名前が記されることになる。面白い畑の名まえとしてガイド氏が紹介してくれたのは「モントレ・ヴー」。英語でShow
you(お前を見せろ)と訳されるが意味としては「お前の尻を見せろ!」という区画だそうだ。あまりに傾斜が激しい区画なので作業をする人のお尻が見えることから、この名前がついたんだと教えてくれた。そんな高級区画なのにこんなネーミング。フランス人もかなりユーモアのある国民だ。
ところでガイドの男性はブルゴーニュ出身も出身、このコート・ド・ニュイで生まれ育ってワインツーリスト学校でワインをみっちりと勉強して現職についているのだそうだ。どんな質問に対してもワインへの愛情と誇りを感じさせる回答が即座に返ってきて素晴らしかった。
彼の説明を聞きながら車はグラン・クリュ街道Route de Grand Cruと呼ばれる特級ワインの畑が続く道を走りぬけた。ジベリー・シャンベルタンの畑を通り、ナポレオンが愛したシャンベルタンの畑を過ぎた所で試飲のために1軒目のワインショップに停車した。
ここでの試飲は4種類。右から
2008年Chambolle-Musigny 49.8euro
2007年Gevrey-Chambertin "la Justice" 43.8euro
2008年Fixin 1er cru "Hervelets" 42.8euro
2006年Corton "Hautes Mourottes" Grand cru 79.8euro
いずれも普段絶対に買わないクラスのものばかりなので、かなり期待が高まった。が、正直最初の3本の満足度はそれほどでもなかった。確かにおいしいのだがボルドーで半額くらいでCP的には同様のものが買えるんじゃない?と思ってしまったのだ。ところが、最後のグラン・クリュ、これにはホーッとため息が出た。グラスを顔に近づけた時からの香りの高さ、口に含んだ時のまろやかでふくよかな感じなど、今までの3つからグンとレベルが上がっている。
これがグラン・クリュなのかぁ。素人にもはっきりとわかる素晴らしさを持ったワインに感動していると、すかさず女将が「本日のおすすめ商品はこちらです」と1本175ユーロのグラン・クリュを紹介してきた。
たぶんすごいんだろうなぁ。
しかし、南米のチリで5000円と10000円のワインの違いをしっかりと認識できなくて限界を感じた経験から、ここで175ユーロ出しても、先ほどの80ユーロの物の倍もおいしく感じられるとは思えないと判断して、80ユーロのグラン・クリュを買うことにした。これなら、さっき試飲して確実においしかったとわかるから安心だ。
2006年
Corton "Hautes Mourottes"
Grand cru
79.8euro
コート・ド・ニュイ地区の見学に来てその南のコート・ド・ボーヌ地区のワインを買ってしまうことになったが、試飲して確実においしいと思えたのがこれだったのでよしとしよう。うっひょー、キャンプ場で開けて飲むのが楽しみ、楽しみ。
さて、引き続きブドウ畑の中を走って到着したのが、「ロマネ・コンティ」の畑。ロマネ・コンティの名はもはやお酒の名前として耳にするよりも、オークションで高額で競り落とされた商品として耳にする方が多いんじゃないだろうか。
ワイン通と思われる台湾の青年は、本当に感慨深げに畑の周囲の壁沿いの道をずっと先まで歩いていとおしむように畑をながめていた。
さして厳しい斜面でもないこの小さな畑から生み出されたワインが長い時を経て1本50万円から100万円もの価格になるというのは、本当にミラクルな話だ。小さな階段からヴィンヤードに入れるが、「絶対に入らないでください」という注意書きもあるし、ここに来る人でそんな事をする人はいないようだ。
そして2ヶ所目の試飲場所はカーブも持っているワインショップだった。モンラッシェMontrachertと呼ばれる繊細な白、発泡酒ブルートBrut、そして再び赤とここでは5-6種類を立て続けに試飲。赤ではPommardというのがおいしく感じられた。
もう、この頃になると舌もだいぶ滑らかになってきて、みんなおしゃべりが止まらない。オーストラリア人夫妻は自宅にワインセラーがあって旅行に出る度に買いためて、飲むのを楽しみにしているんだそうだ。今回も半ダースくらいご購入。中華系オーストラリア人の彼女はとにかく美食大好きで、次回はボルドーのワイナリーツアーにも行かなくっちゃと鼻息を荒くしている。ブルゴーニュワインが取り持つ旅人との出会いはまた、共通の思いを感じあえるからより楽しかった。
いいガイドといいメンバーに恵まれて、ほろよい加減で午後1時半すぎに解散。
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