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2011.06.02
WWOOFerになってみよう!〜フランス人が大好きな「ノミの市」
数日前から家のお母さんはインターネットと長い時間にらめっこしては、何かをノートに書きつけている。何をやっているかと思ったら、ヴィド・グルニエvide
grenierの情報を集めているというのだ。
ヴィド・グルニエは文字通りには「屋根裏を空にする」という意味になり、つまり家の中の在庫一掃のために品物を売る、青空市の事を指すそうだ。英語ではガレージ・セールとなるだろうし、日本では「フリマ」という事になるだろう。別名ではノミの市marche
aux pucesとも呼ばれている。お母さんが人から伝え聞いた「ノミ」の語源は、家の中に使わずに放置していたベッドなど「ノミ」の住み家になっている品物を売る市だから、そう呼ばれるのかも?ということだった。
オードリー・ヘップバーンの映画「シャレード」で見られるパリのクリニャンクールのノミの市のような市がフランス中で多数開催されているそうで、お母さんが見ていたのはヴィド・グルニエの検索サイトだったのだ。近々、親戚が結婚するために、そのプレゼントを探しに行くのだそうだ。
そう言えば、今回のフランス旅の始めの頃、キャンプ場で隣の敷地に宿泊していたオランダ人夫婦にヴィド・グルニエの話を聞いていた事を思い出した。この夫婦は毎年のようにフランスに来ては、ヴィド・グルニエを巡ってガーデニング用品やらアンティークの銀食器やらを買い集めるのが趣味なのだそうだ。そう話す夫妻の傍らの車の後部座席は、市で購入したというとても大きな庭置き用の植木鉢で埋まっていた。すごい、本気だ。このご夫妻も、折角フランスに来たのだからヴィド・グルニエは是非行った方がいいと勧めていた。
あの時は、ヴィド・グルニエ好きのご夫婦だからそんなに勧めるのかと思っていたが、今回のお母さんもかなりヴィド・グルニエを楽しみにしている。ここは1つ、見学しておいた方がいいみたいだと思って、お母さんのプレゼント探しに同行させてもらうことにした。
今日は今にも雨が降りそうな曇りだった。まぁ、だからこそ農家の作業をせずにマルシェに来る事になったわけだ。会社勤めをしていた私としては休日は晴れて欲しいと思うのだが、天気のいい日は作業ができるから働いてしまうのが農家の現実。ここに滞在すると、そういう事にも気付かされる。
最初に到着したヴィド・グルニエの会場は一人0.8ユーロの入場料金を支払って入る所だった。
駐車場のような会場にお店が並んでいる。大きな物は地面に直接並べ、小物はテーブルの上に陳列して販売されていた。農機具から食器、生活雑貨、果てはアンティークとも言えるか微妙な陶器の人形まで、まさに家の中のいらない物が大集合して売られていて、新しい商品しか見慣れていない目には、何の価値もないものの集積に見える。知り合いにヨーロッパアンティークを買い付けて日本で売る人がいるが、こういう市で価値のある物を探すのは大変な事だろうなぁと思われた。
買おうとは思わないが見た事がないヨーロッパの生活雑貨が多く出ていて、それらを見るのは面白くなってきた。例えばふいごなどの生活用具は機能いってんばりではなく、素敵な装飾が施されている。コーヒーミルもなかなか素敵なデザインの物が出ていた。
お母さんは鎖や針金に興味を持っている。これはプレゼントではなく、家のフェンスの修復に使うんだそうだ。農業をしていると新品でなくていいから、こういう小物がたくさん必要になってくる。そんな需要もあるから農業大国のフランスではヴィド・グルニエが盛んなのだろう。ま、フランス人は倹約家だからという理由も少なからずあるだろう。
1つ目のマルシェで目的の物を探せなかったお母さんは、次のマルシェに足を運ぶことにした。先ほどのマルシェはある程度の規模の街の外れで行われていて、今度は山奥の小さな村で行われているものだったが、マルシェの規模と賑わいではこちらの方が勝っている。マルシェの規模は町や村の大きさとは全く関係ないようだ。先ほどにも増して古着や古書などのアイテムも広がり、あちこちで品物をひっくり返しては品定めしたり値段交渉する人の姿が見られた。
昼時とあって炭火焼の豚肉とソーセージ、ワインと飲み物を出す店も出店していてこちらも大人気だ。お母さんと私たちは会場を3回くらい巡って、ようやく親戚の結婚式にふさわしいプレゼントを探し出す事ができた。しかも同様の品物を出していた別の店の5分の1の値段で購入してお母さんはかなり満足そう。私にも欲しいものがあったら言いなさいというので、いくつかの店で出ていたサン・テグジュペリの「星の王子様」が欲しいのだと告げると、数軒と交渉して、最終的にたったの20セントで手に入れてくれた。10ユーロの物を買う時も20セントの物を買う時も、常にポーカーフェースで真剣勝負。フランス人の交渉技術を目の前で見せてもらえたのも大変に楽しかった。
曇り空のうっとおしい一日だったが、こういう日でも快活にしゃべって欲しいものを手に入れられるヴィド・グルニエはヨーロッパにうってつけのエンターテーメントとも言える。家に戻ってから、戦利品を目の前にお母さんが娘や息子に武勇伝を語っている姿もまた、ほほえましいフランス人家庭の一幕だった。
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