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2011.05.27
WWOOFerになってみよう!〜みんな大忙しの一日
昨日の夜から、家の母さんは「さぁ、明日は忙しくなるわよぉ」と何度も繰り返していた。というのも、朝からは金曜日恒例のパン焼き作業があり、午前中から午後にかけては小学生の農家訪問のお相手をして、夕方からはAMAPの販売(後に説明)に行かなくちゃならないからだった。パン焼きは長男の役割、小学生のお相手は女性群、AMAPへの販売はお母さんが行くことになっている。どの仕事も基本的にはウーファーの助けなしにできるように組まれているのだが、皆が何となく仕事を与えてくれたので、「大忙し」に参加しておおいに農家生活を体験できた一日だった。
まずはパン・ド・カンパーニュ作り。レナイックがいつの間にか2次発酵まで終えていてくれた生地を焼く形に整える仕事を手伝った。
ポヨンポヨンと柔らかく発酵したパン生地は触っているだけで幸せになってくる。内包した空気をあまりつぶさないように、でも形が崩れないように結び目はしっかりと、とレナイックの指導のもとにパンを形づくっていった。これらのパンは主に自分たちの1週間分の食料になる。近所の人との物々交換にも使っているようだ。
お次はブリオッシュの2次発酵の準備。昨日の夜に練って1次発酵が終わっている生地を小分けにして、焼き型に入れて2次発酵を行う。まだ1次発酵しか終わっていないせいか、生地は重くて硬く、バターがたっぷり入っているので先ほどよりもずっと黄色い生地だった。お団子状にまるめて、一つは長方形の焼き型に詰めていき、もう1つは、肘で真ん中に窪みを作って、そこからドーナツ状にして丸いお盆に乗せる。肘で窪みを付ける作業なんかしていると、自分が既にちょっとしたパン職人になったような気分がしてくるから人間が単純だ。
これらを焼くと、長方形の型のは焼き型からはみ出た上方が丸く膨らみ、ドーナツ状のは真ん中部分だけが爆発して上に伸びるので2段のショートケーキのような形になる。どちらもブーラジェリーでよくみかけるブリオッシュの形。ああ、こうやって、あの形になるのかとわかっただけでも、かなり収穫を得た気持になった。
お次は見学だけしていたのだが、この地方のお菓子「コルニヨット」作り。パット・ブリゼPate
Briseeというサクサクした生地を土台にして、その上にシュー皮を乗せて焼くお菓子だそうだ。パット・ブリゼという生地はとても汎用性が広くて、お菓子だけでなくお料理にも使うんだとレナイックが教えてくれた。彼が使っているレシピ本は写真などなくて、文字ばかりの渋い本。何だかプロっぽくてカッコいいが、フランス語がよくわかっていないと正しい状況かどうか判断できないから難しそうだった。
そんなんで忙しくしていたら、外で子供たちのにぎやかな声が近付いてきている。小学生の見学部隊が到着したようだった。母屋の一室使ってうちの母さんがヤギのチーズの造り方をレクチャーするのを見学する事になっていたので、早速そちらへと向かった。
部屋に入ると、ざっと20人ほどの小学生の前で母さんがレクチャー中。そぉっと入ったつもりだが、こんな片田舎に東洋人がいるなんてヤギよりも珍しい。小学生は目を奪われるのは当然の事で全員の視線はすっかりこちらに集まってしまった。
そんな状況も慣れたもので、母さんは「さーて、みんな。こちらには日本から来た人がいますよー。みんなで日本のあいさつを勉強しましょう!」ってな具合に逆にこちらに話をふってきた。何度か「こんにちはー!」と小学生に言わせるうちに、小学生は私達の存在もそんなに気にならなくなり、自然とレクチャーへと戻って行った。母さんの手腕は実に見事だった。
子供たちはこの後、ヤギ小屋に移動してモーちゃん(長女)の乳しぼりを見学したり、子ヤギと戯れたり、豚小屋やウサギ小屋の見学もする。とにかく可愛い動物がいっぱいみられて触れて、とても楽しそうだ。

子供たちが動物見学しているうちに、長男のレナイックは着々とパンを焼く準備を進めていた。昨日ピザを焼いて温めておいた窯に、更に本格的に火を入れる。広い窯の中が存分に温まるくらい薪を燃やし、燃えつきて炭になったら細かく砕いて窯の奥や周辺に炭を寄せてパンを入れるスペースを作った。この頃には、パン焼きを見学しに子供たちが集まってきている。子供たちの前を静々とパンのネタが運びこまれて次々と窯にいれられていく。お腹もちょっと空いてきているのか、まさに固唾を飲んで見学している小学生の姿が可愛かった。焼けたパンはさっそくお昼ご飯として皆の口に入ることになっているから、尚更待ち遠しいに違いなかった。

子供たちが去った後の窯の前では、レナイック隊長を筆頭に我々、俄かパン部隊が忙しくなってきた。パト・ブリゼを丸く型抜きして、それを台にしてシュー皮を絞り器で搾り、台の縁を3辺にして持ち上げたらコルニヨットの準備完了。ブリオッシュは卵を表面に塗って、ハサミで飾り切りをする。ここまでやったら最初に入れたパン・ド・カンパーニュやエピが焼き上がっているので出して、コルニヨットとブリオッシュを入れる。まぁ、ほとんどレナイックが仕事しているわけだが、傍で見ているだけで忙しくなるくらいだった。
ここでスタッフ一同昼食。みんな、かなりお疲れモードだから、昨日のピザが残っているってのは素晴らしかった。まぁ、忙しい金曜日を見越して多めにピザを焼いているのだろうけどね。
午後からも母さんは最後のレクチャーがあるからと、お昼ご飯終了後にレクチャー室に出かけていった。他の皆は朝早くからの疲れと満腹でシエスタモード。自室に引き上げていった。
子供たちも無事に送り出し、母さんもやっと一息ついて午後3時。コルニヨットとブリオッシュでティータイムとなった。どちらも小麦粉、卵、バター、砂糖を使ったお菓子だが、分量の配分や練り方でここまでバリエーションをつけられるんだなぁ。フランスは小麦粉使いのうまい国だと感心、感心。しかもおいしいのが素晴らしい。そんな風にまったりしていたら、またもや母さんのモーちゃんの動きが激しくなってきた。
AMAPでの販売の準備が始まったのだった。
母さんの説明によれば、AMAPとは、association pour le maintien d'une agriculture
paysanneの頭文字をとったもので、直訳では「農家維持のための団体」ということになる。この団体を媒体にして一方にこの家のような小規模農家があり、一方には消費者がある。
消費者は自分の住んでいるエリアのAMAPと契約して商品を注文する。農家は隔週で配布所に注文された農産物を持って行き、消費者に手渡す。このしくみを提供しているのがAMAPだ。。
この家の商品はヤギのチーズのみ。AMAPから連絡を受けた発注書をもとに、チーズを包んで包みに名前を書き込んで、保冷材を入れた容器に入れて車に積み込んだら準備完了だ。私達2名はお母さんの車に乗り込んで早速、AMAPの配布会場へと向かった。会場までは車で20分もかかっただろうか、かなり広範囲の消費者をカバーしているようだ。同じくAMAPに加盟する大きな農家の納屋を会場にして、各自が持ち込んだテーブルの上に商品を並べてお客さんを待つのだが、この配布場所にきたのは2軒の野菜農家、我々チーズ農家、そしてパン農家の4軒。車を20分走らせてくる広範囲エリアだが、このサービスを利用している人数は我々のチーズ発注件数を見る限り20軒くらいだ。私達が通常利用している大型スーパーの毎日のレジの行列と比べたらとても細い商いだが、隔週でも商品を運んできてくれる農家がいるのは無農薬、あるいは低農薬野菜を安く買いたい消費者にとってはとても助かる組織に違いなかった。
午後6時半の配布開始時間と前後してぼちぼちとお客さんがあわられた。母さんは極力お客様の顔を覚えようとしているようで、絶対に何かしらの会話をしてチーズを手渡していた。こういうコミュニケーションもAMAPならではの魅力になっている。お客さんは商品の受け取りを近所で持ち回りにしているようで、一人で数軒分を持って帰る人も少なくない。この日は40分ほどで予定していた全ての人が取りに来て問題なく仕事が終了した。冬の寒い時期に1時間以上も取りに来る人を待つ事もあって、そんな日は体が冷え切って大変なのだそうだが、「今日はよかったわ」と母さんが言っていた。長く待っても来ない場合は閉店して、お客さんに返金しないのがルール。「だって、約束通り来ない人が悪いんだもの。私のせいじゃないわ」と母さんが言う。こういう風に農家が守られるしくみだから長く続くというのもあるのだろう。

それにしても今日はみんな忙しかったなぁ。
そんな話をしながら家に戻ったら、レナイックがBBQの準備をしてくれていた。ガーデンの先にある広い敷地で豪快にキャンプファイヤーを作って、そこでできた炭を使って傍らでBBQするのだ。こんなゴージャスなのは見た事がない。あまりの豪快さに私達が大笑いするのを家族は不思議そうに見ている。彼らにとっては、これが当たり前のBBQらしい。いやはや。

暮れなずむ野原でいよいよ勢いよく燃える炎の熱気を受けて一日の終わりを楽しむのは、何と贅沢な気分だろうか。
自分が会社員だった頃は、仕事帰りに同僚と会社の近所の小さな居酒屋でビールジョッキを傾けたりしたものだが、それと比べると何と伸び伸びとしてワイルドな体験だろうか。こんな所で、こんな事に参加している自分がとても不思議に思えると同時に、満ち足りた気分で夕べを過ごした。
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