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2011.05.26
WWOOFerになってみよう!〜初めてヤギの乳を搾る
フランス:ブール・ガン・ブレス北部

 今日の午前中は畑の草取りをしつつ、時々他の人の作業を見学しながら時間を過した。この一家の友人であるオランダ人親子がキャンプ場に宿泊していて、そこの20代後半の息子さんが何かと家の仕事を手伝っている。飼っている豚に家庭から出た生ゴミを与えたり、飲み水を交換するのも彼がやっているようだ。豚ちゃんには名前がない。1年に1頭の豚を買ってきて年末につぶして食料にしているそうだから、あまり愛着が沸かないようにしているのかもしれない。後からお母さんから聞いたのだが、豚をつぶして様々な保存食を作る中で、新鮮な血液を使ってブータンという血のソーセージも作る。これが、あまり日持ちしないので冬はブータンばかり食べることになり、最後の方はかなり飽きるんだそうだ。

 都会に住んでいる人にはたまに食べるから人気のブータンも、小規模農家のお母さんの生活密着の日々の食べ物として話を聞くとイメージが違ってくる。添加物一切なしのお母さんのブータンは都会で供されるものよりずっとおいしいとは思うが、食事というのは単純においしいものを出すだけでは美味しく感じられなくなる。頻度と演出。これがポイントになるんだろうな。毎回、食事をおいしいと思えるようにするのは本当に大変な事だというのは、毎回食事をおいしく食べたいとかなり真剣に思っている自分達にはよくわかる。

 午後からはモーちゃんとアーちゃんのチーズ作り見学。朝と夕方、手で搾った乳はラボに持ち込んで温度管理の元、凝固酵素を入れて固める。一定時間経過すると乳はカイエCailleと呼ばれる凝固部分とホエイと呼ばれる透明な水分に分離する。カイエをフェッセルと呼ばれるプツプツと小さな穴の空いたコップに入れて放置すると、水分が抜けてチーズができる。これがフレッシュチーズ。これをフェッセルから出して風通しのよい所に置いておくと、だんだんと熟成していくのだそうだ。

ここでは通常のシェーブルチーズ以外に、ワイルドガーリック入りも作っている。にんにくのほのかな香りがたまらなくおいしいチーズだ。

これがフェッセル。入れてすぐにも小さな穴からホエイが滴り落ちていく。ホエイはとても栄養があるので豚のエサにしている。

何も入れないチーズの場合

フェッセルから抜いた状態。水が抜けて半分くらいの高さになった。

 この家のシェーブルチーズは熟成するとクロタン・デ・シャヴィニョルと同じように水分が少なくポクポクと栗のようになるタイプだった。チーズというのは熟成するとすべからくトロトロになるもんだと思っていたので、これは意外だった。後から調べると製造の段階で湿度を高くして製造するとトロトロになり、この家のように割合乾燥した環境で製造するとポクポクになるのだそうだ。ふむふむ、勉強になる。

 そうこうするうちに、今日は昔ながらの大きな窯に火をおこしてピザを作るというので、その準備が始まり、そちらの手伝いに駆り出された。毎週金曜日にはパン・ド・カンパーニュを焼く事になっているのだが、それに先立って木曜日の夜から火を入れて窯を温めるという作業がある。温めるためにせっかく火を入れるなら、それを利用しようじゃないかと毎週木曜日の夜はピザを作ることになっているんだそうだ。生地作りからソース作りなど、全てハンドメイドのピザの手伝いはとても楽しかった(詳しくは「本日の献立」ブールウ・ガン・ブレス北部を参照)。

 そして、その途中に夕方のヤギの乳しぼりの時間がやってきた。ああ、忙しい。

 昨日は見学だけだったが、今日はモーちゃんの指導のもと、我々も乳搾りをさせてもらうことにした。ヤギを知りつくすモーちゃんが、性格がおとなしく、搾りやすい形状の乳を持ち、乳が出やすいヤギを選んでくれた。

 まず親指と人差し指で輪を作り乳首を締めると、乳首の先にギュッとミルクが入る感じがする。それを中指、薬指、小指と順々に折って締めていくと搾れるのだった。最初はこわごわやっているから乳が出ないのだが、モーちゃんが「もっと強く、もっと強く」と言うので、言われるままにギュウギュウと力を込めていったら乳が出始めた。こんなに強く乳首を締めあげられたら人間なら絶叫ものなのだが、ヤギは全然平気なんだなぁ。変な所で感心しながら、作業を進めていった。それにしても私と旦那じゃ日が暮れそうに時間がかかるので、今日はとにかく1匹だけやらせてもらって、他はモーちゃんとアーちゃんにお任せしたのだった。

 いやー、ヤギの乳搾りなんてどうなる事かと思ったけど、案外できるものだ。できる、できると旦那と内輪で盛り上がったのだった。

 夕食は待望のピザ。生地にオリーブオイルがたっぷり入っているので、フォッカッチャのようなサクサクした食感でおいしい。

 ソースはトマトソースもあるが、トマトを使わないでクリームを使ったり、炒めた玉ねぎだけなんていうのもあってフランス的で面白い。

 地元で生産されているはちみつ入りのビールも出たりして、どんどんとピザに手が伸びるのだった。

 そして食後は、明日焼くブリオッシュの生地の仕込み。ブリオッシュというのは砂糖とバターが多めに入ったお菓子に近い柔らかいパンで、この家では朝ご飯や食後のデザートとして出されている。

 遊びにきているオランダ人のお母さんが手伝いたいというので、レナイクと二人がかりで生地をこねていたが、二人でやっても汗ばむほどでかなり体力のいる作業に見えた。

 農家の仕事というのは、会社勤めと違って朝から晩まで細々とやることが五月雨式に出てくる。でも、全ての作業は誰からか命令されてやるのではなく、自発的に自分で決めた仕事なので誰も文句を言わずに黙々と作業をこなしている。そういう風景というのは、今まで自分が目にしてきた仕事の現場とは違う空気があった。


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