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2011.05.25
WWOOFerになってみよう!〜2軒目の農家に到着!
5日間のリヨンでの休憩をはさんで、2軒目の農家に向かった。場所はブレス鶏で有名なブール・ガン・ブレスという街から更に北部の小さな村から更に入りこんだ所だったが、オーナーが詳細な地図をネットにあげていてくれたので、一か所迷ったが後は問題なく到着することができた。
少なくともお隣が500m以上は離れている敷地の中の道を走って到着した家は、昔ながらの農家を改築した大きな家だった。家をぐるりと回って人の気配のする扉をノックすると、出てきたのは金髪の女性と黒髪の女性。どちらも20代という感じの若い人たちだった。
「あのー、私、晶子と申しまして・・・」とだけフランス語で言って、あとは英語で失礼させてもらったのだが、話は通じていてオーナーの元に案内してくれることになった。
オーナーは若いオスヤギの面倒をみていた。この家ではヤギ乳からチーズを作っていて、メスヤギグループの中に1頭だけ種ヤギとしてオスがいるのだが、次世代のオスとして、このヤギを飼っているのだった。
オーナーが私達の部屋に案内するためにオスヤギから離れようとすると、「いやぁ、行かないで、もっと一緒にいてよぉ」と甘えてヤギがついてくる。オーナーは人間の子供に言い聞かせるように「今、お仕事だからもう相手できないのよ。また後でくるからね」と言っている。その言い方が愛情に満ちていて、このオーナーならうまくやっていけそうだなぁと思った。それにしても、ヤギに感情を感じたのは初めてだった。今まで旅の途中で出会ったヤギというのは、みんなビクビクとしてサッと逃げるような存在だった。こちらが「一見さん」の見知らぬ存在だったからなのだが、ヤギにはあまり感情がないような印象を持っていたのが、ここに来てすぐに覆されたのだった。当たり前な事なんだけど、こういう勝手な思いこみって結構あるんだろうなぁ。
この家では農業、チーズ作りの他にキャンプサイトもやっていて、私達の滞在先はキャンプ場の隅に置いてあるキャンピングカーだった。シャワーやトイレはキャンプのお客さんと同じものを使う。そもそもキャンプ生活をしているので、こういう生活には慣れていて問題ないが、あてがわれたキャンピングカーは古いもので、初めてキャンピングカーを使ってみたが思ったよりも狭いものだった。とまぁ、初日は贅沢な感想を持っていたのだが、まだ朝晩冷え込むこの土地で地面に寝るテントではなくキャンピングカーというのはよっぽどもましだったと、後からわかる事になった。
到着早々、お昼時なのでランチタイムとなった。メニューはラタトゥイユと麦の炊いた物。食後には自家製シェーブルチーズとコーヒーとたっぷりの食事だった。1軒目はウーファー達が自由に食事を作る方式だが、この家では家の人が作ってくれるので、フランスのこういう農家の食事にたっぷりと触れることができて、それが非常によかった。
それにしても、ウーファーという立場は非常に不思議だ。メールで連絡しておいて、初対面の人のお宅に入りこんで、いきなりお昼ごはんを一緒に食べている。しかも無料だ。昔、「突撃、隣の晩ご飯!」というテレビ番組で芸人が突然、他人の家に上がりこんでご飯を頂くというのがあった。あの芸人になった気分がするのだった。これから仕事をするとはいえ、こちらはあまりにもぶしつけな事をしている気分がするのに、家の人は何とも思っちゃいないのだった。まぁ、家の人は慣れているからね。
オーナーは初日なので休んでいていいと言ってくれたのだが、お昼ごはんも食べちゃったし、午後から長男の材木運びを手伝う事にした。ここのオーナーはウーファーの自発的なやる気を尊重してくれて、「あの仕事を手伝いましょうか?」というと常に「あなたが望むなら、そうしてください」という言い方をするのだった。でも、この「あなたが望むなら」の微妙な言い方によって「ノー」とは言いにくい雰囲気を出したり、どちらでもいいというニュアンスだったりして、こういう繊細なニュアンスで言うというのが、私の持っているフランス人の性格とはこれまた違っていて、フランス人といえどすべからく自我が強くてパキパキと物を言う人ばかりじゃないんだという事を知る事になったのだった。(とまぁ、また勝手な思い込みをしていたわけですが。)
この日の仕事は伐採した木材を燃料として使うために家の近くまで運ぶ作業。積んである木材を運搬用の専用車に積み替えるのを手伝った。
積み替えるのもかなりの量で大変だったが、樹木を伐採してここまで積み上げる作業もかなり大変だったはず。長男のレナイックは一人でここまで作業したのだろうか?もくもくと仕事をして、時々笑顔で「大丈夫?」と聞いてくるレナイックはかなり辛抱強い人に違いないというのが、この初日の印象だった。
お次は子ヤギちゃん達にミルクをやる作業を見学。ヤギの世話はウーファーで来ているフランス人女性アーちゃんとこの家の長女モーちゃんの役割になっていた。
子ヤギのいる小屋に近づくと、一番小さい真っ白な子ヤギが2匹近寄ってきて子猫のように私の足に絡みついてくる。初対面なのに億することなくじゃれてくる姿がめちゃくちゃ可愛いい。ヤギがこんなに可愛く思えるなんて。正直、ここにくるまではヤギなんてちっとも愛情を感じない生き物だと思っていた。臭いし、どこを見ているかわからない視線が怖いくらいだし。でも、この子ヤギを見ちゃったらねぇ。誰だってヤギを好きにならずにはいられないだろう。
引き続きヤギの搾乳見学。広い敷地の中で放し飼いされているヤギのいる場所まで、椅子と搾乳した乳を入れる容器を持って皆ででかけていくのだ。
モーちゃんが「アレー、アレー、ビアン」と呼びかけると皆メェェェェーーと言いながら集まってくる。それらのヤギから一頭ずつ乳を手で絞っていくのだった。モーちゃんもアーちゃんも、それはもうもの凄い勢いでビュービューと乳を搾っていく。乳を搾られたヤギはお婆ちゃんのおっぱいみたい乳がにしぼんで楽になった感じで辺りで再び草をはんだりしていた。ここで初めて大人のヤギに会ったのだが、やっぱり大人のヤギはとっつきにくい。冷めた目でメェェェと鳴かれると「やっぱり愛着感じないなぁ」と思ってしまうのだった。
というわけで、あっという間に一日が終了。再び皆で食卓を囲んで夕飯となった。オーナーであるお母さんは英語が堪能で、ウーファーのアーちゃんもそこそこ英語が話せるものの、長女と長男は英語だと寡黙。今日は初日とあって、皆、気を使って英語で会話してくれているが、この調子だと長男と長女が息が詰まっちゃうだろうなぁ。まぁ、この空気をどうするかは今後の課題として、今日はお母さんがどうして農場を持つに至ったのかとか私達の自己紹介とかそんな話に終始した。農業大国のフランスにあって、期待通り農業を営む家に当たったのは幸いだった。これからの2週間が楽しみだ。
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