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2011.05.24
美食の街リヨンで必死にレストラン探し
フランス:リヨン

 リヨンと言えば、あの超有名シェフ、ポール・ボキューズを輩出した街だ。数年前に遠く南仏のアンティーブで「リヨン風総菜屋」なども目にして、美食の国フランスの中でもリヨンはとりわけグルメ度が高い街だという印象を持って、リヨンに入ってきた。

 当然ながらリヨンでは予算を取ってレストランに入ろうと思っていた。

 しかし、自炊が多い私達はどうもレストラン選びが不得意で、今まで何度か失敗を繰り返してきた。でもなぁ、リヨンでは失敗したくないなぁ。とはいえ、ポール・ボキューズ本店に行くほど予算もないし、洋服も持っていないし。

 ということで向かった先はフナック。フランス全国でチェーン展開している大手家電・書籍・CD・DVDショップだ。ここでミシュランをちょいと見せてもらって、ヒントにしようという作戦(すみません、買わなくて)だった。生れて初めて真剣にミシュランを立ち読みした。

 ミシュランのガイドブックにはいわゆる「ミシュランの星」付きのレストラン以外に、ランチ予算30ユーロ以下のレストランというコーナーがある。これはよさそうだ。「以下」といってもほとんどが28やら29ユーロとほぼ30ユーロに近い値段なのでそんなに安くはないが、中にはこのコーナーにあってミシュランの星付きのレストランもあるから、そんなのは魅力的だった。

 それにしても決め手に欠ける。リヨンにはあまりに掲載されている店が多いのだ。すると、ガイドブックの中に「ブション」というコーナーがある事に気付いた。ブションというのは庶民的なレストランの一般名称なのだが、ミシュランのガイドブックに3軒紹介されていて、ランチセットの値段もとてもリーズナブルだった。これはいい。気付けばこの中の1軒は「地球の歩き方」にも紹介されている。やるなぁ、「歩き方」。その1軒を選んで訪ねてみることにした。

 他にも候補として、ポール・ボキューズが本店よりも低価格で提供するセカンド店がリヨンに4店舗あり、そのうちの一軒Nordが行きやすい場所にあったので通りかかってみた。

 セカンド店といっても、そこら辺のレストランよりは格式の高い雰囲気の店で、メニューはいわゆるリヨン風の名物料理はなくてヌーベル・キュイジーヌなのだろうか別の料理だった。リヨン名物料理はブションで食べてみることにして、もう一軒の候補としてここもいいなぁと思いながら通り過ぎた。

 さて、ミシュランでチェックしたレストランの場所がわかりにくくて地図をにらめっこしていたら、「どこかお探しですか?」と日本語で尋ねてくる女性があった。彼女は、私達が行こうとしているブションについての情報は持ち合わせていなかったが、ボール・ボキューズの4店舗に行くならEst(西)が人気があるようだと教えてくれた。感じのよいこの女性はよし子さんといって、日本の料理をフランスに広めようとリヨンにやってきた人だった。彼女の手助けで探しているブションもみつけることができた。リヨン滞在はたった5日間だったが、この初日のよし子さんとの出会いによって、とても思い出深い滞在になったのだった。

 その話はまた後でするとして、地図を頼りに見つけたCafe des Federationsはまだ開いていないので、その人気っぷりがまだよくわからない。

 どうしようかと迷っていると、30代くらいのフランス人カップルがやってきて、メニューをチェックし始めた。男性の手にはボロボロになったミシュランガイドブック。ああ、この人に聞いてみたらいいかもしれないと、この男性に聞いてみたら、即答で「このレストランはいいと思う」という答えだった。

 それでもまだ迷う私たちは、向かいの別のレストランをのぞいたりしてみたが、ミシュランで紹介され、「地球の歩き方」にも掲載され、、そして今フランス人カップルからもお墨付きを頂いたのだから大丈夫だろうと判断して、やや閉鎖的に閉じられていた思い扉を開けて店に入ったのだった。

 外側からみたかしこまった雰囲気とは裏腹に、レストランはとてもリラックスした家庭的な雰囲気の店だった。

 既に忙しそうに立ちまわるウェイトレスがいて席に案内してもらおうと彼女に声をかけると、レジ脇の分厚い予約帳を広げて開き席を確認してくれたのだった。今日は土曜日。時刻は12時19分。この時点で、空き席は2人掛けテーブルが一席のみ。なんとぎりぎりで席につけたのだった。

 こんなに空いているように見えるのに満席なのか、と驚いたが、結局1時近くまでには本当に満席となり、わんわんと会話が盛り上がるブションらしい雰囲気になったのだった。

 さて、席についた私達にくだんのウェイトレスがやってきて「今日の前菜はこれと、あれと、それと・・・・」と言い始めた。英語で言ってくれているもののわかりにくい。「あのー、メニューは?」とおずおずと聞く私に、彼女は「ブションにはメニューはないんです。。だからぜーんぶ口頭でやりとり。ようこそ、伝統的なブションの世界へ」と言ってニヤッと笑ったのだった。いやー、面白い。これがブションなのだ。途中からオーナーらしき男性が入ってきて、「初めてのリヨンならこれがいーんじゃないか、あれはどーか」というサジェスチョンも入り、のっけからかなりアットホームで楽しい雰囲気になってきた。

 料理は伝統的かつ家庭的な煮込み料理や内臓料理が多い。土曜日とあってみんな昼間なのにどんどんワインの瓶も開けて、楽しそうなことこの上ない。今回は完全に当たりの店だ。悩んだ甲斐があった。

 そして、翌々日に向かったのがエスト。こちらもミシュランガイドブックで場所を確認して行ったのだった。先日見に行ったノールに比べると12時を過ぎたばかりだというのに、席が5分の1ほど埋まっていて、これからお客さんがどんどん入ってきそうな明るい雰囲気を出していた。駅の近くというロケーションのせいだろうか。メニューはノールと同じだと思われるのだがノールのような格式はあるが固い冷たさは感じられず、カジュアルで洒落た感じがする。これが人気の理由かもしれない。

 先日訪れたブションでは、全ての人がランチセット(それしかなかった)を注文していたのに対して、こちらのレストランはアラカルトの人が多い。私達のランチセットに比べるとお値段も内容も豪華になっているが、そんな事は気にしないアッパーなクラスの人がビジネスランチで来ている。スーツ姿のおじさま達がこぞってデザートのスィーツまでたいらげる光景は、ある種見物だった。

 ブションではオーナーとその娘みたいなウェイトレスさんが接客をして、お客さんと冗談を言い合ったり、お勧めの品をオーナーとウェイトレスで一緒に考えてくれたりとアットホームな雰囲気だった。一方のエストでは誰もが忙しくウェイター、ウェイトレスは細かく仕事の内容を限定されていて、組織として機能的にはめ込まれている。アットホームな雰囲気はないが、皆自分の仕事の範囲内でのホスピタリティーは持ち合わせていて職業的な笑顔はピシーっと絶やさず、プロフェッショナルな感じがした。しかも、採用されている人が若い美男、美女揃い。それがこの店を一層洒落た感じにしているのだった。お客さんと談笑するのは唯一支配人と思われる男性だ。常連が来るとジョークを言って客を和ませ、絶え間なく客席を見回ってお客様に料理が出ていないか、デザートはどうなっているかと厳しくチェックして回っているので、こんなに混んでいるのにサービスを忘れ去られたお客様がいない。この支配人らしき人のめざましい働きも一流のポール・ボキューズ系列ならではと思わせるものがあって、料理以外にも楽しめた。お料理は低価格の割には工夫がされていて、第一に安定しておいしい。ここも間違いなく当たりの店だった。

 ということで、今回のリヨン2軒のレストランは、悩んで本を見て人に聞いて決めただけあって大満足な結果となった。時間とエネルギーをかけてレストラン選びをして、その甲斐がある街、それがリヨンだ。

※料理の写真はfacebookでご覧ください。


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