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2011.05.01
3年に一度!「アルルの女王」選抜のお祭り
フランス:アルル近郊

 今年は3年に一度しか行われないという「アルルの女王」選抜の年にあたる。昨日一日、アルルの町を下見して、先代の女王たちの写真を見たり、今日のスケジュールを把握したり、お土産物屋の絵葉書で民俗衣装を目にしたりして予習はばっちり。

 今日は朝9時からBoulevard des Licesという大通りからパレードが出発するというので、キャンプ場を朝8時に出発した。もしかして大勢の人が詰めかけて駐車場がなくなっちゃうかもしれないと思ったからだ。ところが意に反して駐車場はまだがらがら。しかも今日は建物の外の駐車場が日曜日で無料となっていて、大変ラッキーなことに無料で駐車できた。

 ところで、今日のスケジュールについては昨日のうちに観光案内所で説明を受けたのだが、配布用のプリントにはフランス語とプロヴァンサル語(プロヴァンス地方の言葉)の2言語で表記されていた。もちろん英語表記はない。この「アルルの女王」は単に美しいだけでなく、プロヴァンサル語を流暢に話せて読み書きでき、プロヴァンスの歴史とカマルグ湿地帯の動物などに精通し、アルルの女性の民俗衣装を一人できこなせるなどの条件があると聞いている。この一帯の文化や歴史を継承する方法として、なかなかスマートだ。

 大通りのパレードはまだ始まる気配がないので街中を歩いていると、すぐに民俗衣装の女性たちを発見。さっそく記念撮影をお願いしたら快く受けてくれた。

 アルルの女性は栗色または黒髪が多く、また顔立ちもちょっとスペインが入ったようなエキゾチックな人がいて、一般的に日本人が持っている「フランス人」のイメージとは異なっている。

 市庁舎前広場にはプロカメラマンが徘徊していて何か起こりそうだと思っていたら、若い美しい女性が5人現れてご挨拶。どうやらこの5人が最終候補に残った人たちらしい。みんな背が高くてスラリと細身でお育ちの良さそうな美しい女性ばかり。しかも身につけているおそらくシルクと思われる衣装と肩にかけているレースもとても美しかった。


 大通りに戻ってみると、すっかりパレードの雰囲気になっていて馬に乗った紳士・淑女、着飾った子供たち、昔の乳母車に乗せられた赤ちゃんなどがずらりと列になって待機し始めていた。中にはもと女王だったんじゃないかと思われるような気品のある顔立ちの女性や、これからが楽しみな女の子などもいて、みなさんお美しい。並んで立つとわかるのだが皆背がとても高い。絵物語から飛び出てきたようなこの一段に私たちは嫌がおうにも大興奮して、いつも以上にシャッターを切りまくっていた。ゴールデンウィークのせいか日本人観光客の姿もちらほら見られ、同じようにシャッター切りまくり。もっともこの日は日本人のみならず、ここにいるほとんどの人がシャッター切りまくりだった。

 この先、パレードは旧市街を練り歩いてから教会に大集結する。私たちは細い路地に陣取ってパレードの一部始終を観察した。目の前を通る人々は誇らしげでアイコンタクトを向こうから求めてきているくらいなので、カメラを向けて視線をこちらにしてもらって撮影するのは簡単だった。やっぱりお披露目の日だから、皆写してもらいたいよねー!

 路地での見学を終えたらパレードを先回りして今度は教会で待機だ。そう思っていたのだが、とても小さな旧市街のことなのでパレードの先頭はとっくに教会前に到着していて、それよりも観光客の見物の生垣がものすごくて、ほとんど何も見えなかった。

 しかし、3年後にここを訪れる人に言っておくが教会前は逆光でまったくよくない。たとえ早々と先頭で待っていたとしても、ここではいい写真は撮れない。

 教会前が失敗に終わったので、次のいイベント会場の市庁舎前広場へと移動した。ここでいよいよ今回の「アルルの女王」が発表されるのだ。会場は市庁舎の前庭を囲むようにロープが張られ、ロープ沿いに観光客の人垣ができつつあったが、なんとか一番前にポジションを確保。それからもう、どんどんと人が集まってあっという間に何重もの人垣になっていった。

 しばらくして音楽とともにパレードがやってきたのだが、どうにも様子が違う。音楽はサンバのようなサルサのようなラテンミュージックで、参加者は普通の洋服。そして政治団体のようなロゴの旗をかかげている。なにやら「アルル反対!アルル出ていけ!」という感じのメッセージらしい。

 後に調べたらこのcgtというのはフランス労働総同盟の略語でフランスで最大級の労働組合のようだ。この日は5月1日、メーデーでもあったので、そういう関連のデモらしい。隣で同じように女王発表を待っているフランス人のおじさんに、このデモの意味を聞いたらフランス語で答えられてまるでわからなかったのだが、顔つきやジェスチャーから歓迎していないようだった。

 もしかしたら、この貴族的なお祭りが象徴するように昔からの伝統が新しい動きにとって問題になることもあるのかもしれない。しかし、このデモの人数に対して集まった観光客は圧倒的に数が多く、祭りは人気があることを物語っていた。

 12時から女王の発表というスケジュールで人々がぞくぞくと集まっていたのだが、民俗衣装を着た人々が市庁舎前に集まり始めたのが12時半、そして「女王の発表」は午後1時にずれこんだ。市庁舎前は日をさえぎる物もなくアルルの女性たちにとっては非常に暑くて大変そうなのだが、見物人にとっては美しい衣装にさんさんと日があたってとてもいい場所だった。

 で、「アルルの女王」選出とは一体何が行われるのだろうか?こんなに上品な感じだから水着審査とかないだろうし、皆の前でブロヴァンサール語でスピーチでもするのだろうか?

 期待が高まる中、午後1時に市庁舎2階のバルコニーに朝見た5人の若い女性が登場し、市長だろうか男性が何やらを話し、大きな拍手。女性たちがにこやかに手を振ってあいさつし、そして引っ込んでいった。その間、5分もない。あれだけ長い時間を待っていた観衆は、「いやー、よかった、よかった」という具合に三々五々散っていった。

 え?これだけ?これだけのために私たちは待っていたの?

 拍子抜けするくらい「女王の発表」はあっけなかった。まさかと思って隣のおじさんに「これが発表ですか?これで終わり?」と確認してしまったくらいにあっけない。女王の選出は室内で行われ、民衆には結果だけが発表されることになっているのだった。ふーむ。本当に貴族的だ。でも、市庁舎前に集まった素晴らしい衣装の人びとをたっぷりと見せてもらえたからかなり満足だ。因みに女王に選ばれたのは下の写真の左から2人め、朝撮影した写真でも左から2番目の青いドレスの女性だった。これから彼女は3年間、公式行事などに参加するそうだ。
 

 次なるスケジュールは午後4時半から円形闘技場で行われるFete des Gardiansという催しだ。朝から事あるごとに円形闘技場にいってみたのだが、ちっともチケットを売っていないのでどうしようかと思っていたのだが、女王発表を見てから午後1時半近くに行ってみると、ようやく窓口が開いて一人10ユーロの全席自由席のチケットを買う事ができた。これが一体、どんな催しなのかもまたわかっていないのだが、何やら面白そうなので見ておくことにした。

 お昼ご飯は円形闘技場周辺でパエリアを出していたレストランで済ませ、そのまま円形闘技場の入り口前の階段に座って待機していると、徐々に人が集まり始めたので入口に並ぶことにした。隣に並んでいるご夫妻はアルルの隣の大きな町ニームからやってきたのだそうだ。3年に一度のこのお祭りを楽しみに毎回来ているそうで、これから始まるイベントも必見だとフランス語で力説された。まぁ、フランス語で言われているので9割くらいは想像だが。

 午後4時に開場されるとニームから来た夫妻のお勧めで、入口からやや右手の前の方に席を取った。

 このイベントは;農家の青年達が牛や馬を扱う技術を披露するものだった。

 最初の競技は荒れ狂った牛に対して毛スキのような道具を手にした若者5-6人が挑み、牛の頭を一スキしたらワンポイント獲得するというゲームらしかった。暴れ牛が目の前の柵を乗り越えてきそうな迫力に隣の夫妻も大興奮だった。次に農耕馬にまたがった青年とドレスの女性が会場に次々と入ってきてお披露目。目にもあざやかなドレスが目の前に散らばってとても素敵。このお披露目の後は、青年による馬の技術の披露で、一人ずつ馬で走りながら女性が捧げる皿のリンゴを取れるかという競技だった。他にも美しいドレス姿で女性が馬を乗りこなす発表会や青年による別の競技、そして再び牛追いの競技と繰り返された。全体的にものすごくゆっくりしたテンポで事が運んで行くのがこのお祭りの特徴らしい。

 2時間くらいで終わるのかと思ったらたっぷり3時間にもなるイベントだった。スペクタキュラーという触れ込みだが、都会のもっと展開の早いショーを見慣れた目にはむしろ、ほのぼのとしたのどかなショーに見えた。アルルの青年のお嫁さん探し、お婿さん探しのイベントなんだろうか、ここからロマンスが生まれたりするのねぇという視点で見ると非常に微笑ましい。途中から座席が陰って涼しいどころかゾクゾクと寒くなってきたのに薄着しか用意していなかったのには参った。このショーを最後まで見るなら温かい洋服が必要だったのね。

 こうして午後8時過ぎ、アルルでの一日を堪能してキャンプ場に戻った。5月に入った第一日目とはいえ、午後8時にようやく日没の気配がするくらい、もう日が長くなっている。ヨーロッパには確実に夏がやってきている気がした。


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