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2008.08.11
ビオットとヴァンス2都市観光
フランス:アンティーブ

 私たちの滞在しているキャンプ場はアンティーブということになっているが、実際はビオット駅の目の前。ビオット村にとても近い場所だった。村は海岸からぐーっと高台に上がって、これまら「鷹ノ巣村」の1つなのだが、中世の雰囲気とガラス工房があるのが特徴だそうだ。また、村から1kmくらい離れた場所に国立フェルナンド・レジェ美術館があるので、そこも行ってみよう。その後は、先日日曜日で閉まっていたヴァンスにあるマチスの礼拝堂に行って丁度1日観光となるはず。

 こんな予定で、朝9時20分にキャンプ場を出発した。ちょっと迷ったりしてもレジェ美術館までは30分で到着だ。

 フェルナンド・レジェについては、高校生の時の社会科系の教科書の挿絵に労働者の絵が使われていたためにプロレタリアというイメージを勝手に持ちながら美術館に到着したのだが、入場料6.5ユーロを支払って入るなり「レジェの週末キャンプ風景展」という特別展が行われていて最初っからイメージとは違う世界を見せられた。小川のそばにテントを張って釣りしたり、海水浴したり、丁度今年の夏の私たちのように夏を楽しむレジェ家族と友人の姿が写真でたくさん紹介されていて、「あれ?労働者は?プロレタリアートは?」とイメージがガラガラと崩れるのだった。常設展ではレジェの初期の印象派のような点描の作品から徐々にキュビズムの世界に入って独自の画風を作り上げていった様子が作品を通じて見られるようになっていて、レジェの美術に対する挑戦とか創意工夫とか葛藤などが感じられて物語のように歩き進める。

 一人の画家の作品を年代を追って見てくると、著名な画家といえども時代の潮流や画法を取り入れて真似てから独自の世界を作り出していて、まるで企業努力ともいえる方法で確立しているという発見が面白かった。芸術家というと何か生まれた時から独自の発想を持っているように思っていたが、そうでもなくて努力している部分も多分にあるというのが親近感が持てたのだった。

 美術館の後、もう少し内陸に入ったビオットの町も訪れた。とても小さな町というか村だが質の高いガラス工芸作品を置いた店が数軒見つかった。どれもビオット出身のガラス工芸家の作品を置いているということで、透明ガラスの中に美しい水色のガラスがウネリを造っている瓶などが割合手頃な値段で買える。村で唯一有名なレストランはツタが青々と壁を飾っている場所だったが、レストランを過ぎると土産物屋もなくなり普通の民家の通り。そうした通りがまた中世の世界にさまよいこんだような風景でなかなか面白かった。

 ビオットを出てから途中のサンポール郊外にあるマーグ財団美術館、先日行ったので地の利のある場所の駐車場に車を停めて、用意してきた椅子を出して木陰でお昼ご飯。この財団の駐車場は無料って所がミソだ。

 そこからヴァンスに向かい、町中の駐車場に停車して15分ほど歩いた場所にあるマチスの礼拝堂を訪れた。観光案内所ではマチスの礼拝堂には駐車場がないのでヴァンスに停車して歩いて行くしかないと言われたのだが、来て見ると礼拝堂前の路上に駐車している人がたくさんいた。むむむ。

 シエスタをはさんで午後2時からの開館を待つ人がだんだんと礼拝堂前に集まってきていた。2時きっかりに開館するとぞろぞろと中に入る。中で入館料を支払って入っていくと、大きな空間になった礼拝堂になっていて着席するように指示された。一体これから何が始まるのだろうか?

 小柄なショートカットでいかめしい顔つきの60絡みの女性が、「はい、後ろで立っているひとはさっさと着席してください」とやけに偉そうに指示する。皆、わけはわからないけど従わないとこっぴどい目に合わされそうな威厳に押されておずおずと着席していった。

 やがて礼拝堂の入り口の扉が閉められ、小柄な女性が教師のように前に立って「この中でフランスがわかる人、挙手して」。半数くらいが挙手。「フランス語がわからなくて英語しかわからない人、挙手して」。3分の1くらいが挙手。すると彼女はため息をついて「ふー、じゃぁ仕方ないわね。最初にフランス語で説明して、それから英語で説明しますから」といって礼拝堂の解説を始めた。どうやら解説付きらしい。この礼拝堂はマチスがどんな思いを込めて作られたのか、光の入り具合やシンプルな神父の描き方にはどういう意味があるのかなど一つ一つ細かく説明してくれる。それはとても素晴らしいのだが、英語の説明で端折る事が多いのが困りものだった。例えば「ええ、それではこの祭壇には3つの要素があります。1つ目は・・・」と説明してくれるのだが3つ目の説明があっさり省略されていたり、「一番重要な彼の考えに基づいて製作されました」という説明の後、その重要な考えが発表されなかったりするので「3つ目の要素は何だったんだろう?」「重要な彼の考えって?」と数々の疑問が残りながら進んでいった。

 こうして写真撮影禁止の中しめやかに説明が終了すると、「はい、出口はこちらですから」とさっさと出されてしまって自由に見学する機会は与えられなかった。このおそろしく収容所的な見学は、今までの自由な雰囲気のコート・ダジュールの他の美術館とあまりに異なるし、先日行ったコクトーの礼拝堂のあまりに放置主義とも異なってびっくりしてしまった。誰の考えでこういう方法の見学になっているのかわからないが、もっと自由に作品に触れられる方が絶対にいいのになぁ。礼拝堂を出てからは少々の展示があるものの、気持ちの良さそうな庭に出ることも許されずそのまま外に出るしかなかった。

 釈然としないまま歩いてヴァンスの町に戻ると、町はすっかりシエスタ。先ほどまでよかった天気もやや曇ってきてしまい、城壁に囲まれた面白い構造の町だったがひっそりとしてやや寂しげ。シエスタがあるからコート・ダジュールの村を巡るのは午前中にしなきゃいけなかったんだけど、今日はちょっと無理があったなぁ。それでもヴァンスの町の雰囲気はなかなか良く、特に夜のヴァンスのポスターを見かけたが、オレンジ色の街灯がついたりして本当に15世紀かと思うような場所だった。ヴァンス近くのキャンプ地に宿泊して夜にここを訪れるのも面白いかもしれない。

 とういことで、今日の2都市観光は終了。それにしてもアンティーブ拠点に魅力的な町が多いので毎日が飛ぶように過ぎていく。ここら辺でちょっと休憩を入れたいが先の予定もあるので明日はアンティーブを移動することになった。


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