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2008.08.08
ヴァロリスとグラース2都市観光
さて、今日は焼き物で有名なヴァロリスと香水で有名なグラースの2都市を観光。2つの都市をバスで周るにはちょっと難しそうだったので車で行くことにした。
ヴァロリスは滞在しているアンティーブから車で30分もかからない場所。観光案内所のある駐車場に車を停めて、案内所で地図をもらって町歩き開始だ。案内所から町は北方面にメインロードが伸びていて、歩き始めるとすぐに左右に焼き物の土産物屋やギャラリーが並び始め、なるほど焼き物の町という雰囲気を出していた。
フランスの焼き物というとリモージュが思い出されるが、ここヴァロリスの焼き物はもっと素朴で大胆な、どちらかというとスペインのような肉厚な低温で焼いたものが多く、ピカソもここに魅かれて滞在していたというのがうなずける。町の街路樹も素焼きの大きな鉢に植わっている所が可愛らしかった。
素朴な焼き物の町もまた素朴で、低階層の建物が続く道を歩いて中心地に行くとビエンナーレのセラミック展が開催されていたビエンナーレってのは世界的にも有名な展示会だったなぁと早速チケットを購入して入ってみると、現代に生きる陶芸芸術家の作品が並んでいて、陶芸の技術を使った新しい試みをたくさん見ることができた。陶器の持つ硬さを極力見せないように皮のように見せたり、逆に鉄のように硬く見せたりする技術への試みや、今までのヘラや手で作ったのではあり得なかったような幾何学的なデザインの陶器など、まさにコンテンポラリーな作品ばかりで、さすがビエンナーレだという質の高さに驚く。
このビエンナーレの展示会がなければ、素朴な陶器の町。お土産物屋をのぞいてアイスクリームを食べるくらいで終わってしまう所だったろう。ヴァロリスでこんな展示会に出会えることは期待していなかっただけに、予想以上にここで時間を費やして楽しんでしまった。
ついでに俳優にして芸術家のジャン・マレーという人のギャラリーも無料で入れたので夫がのぞいてきた。芸術の方は世界的評価を受けられなかったようだが、このギャラリーにある本人の顔写真を見る限り俳優として演じながら様々なインスピレーションを受けて、つい他の芸術にも手をだしてしまい、たとえ人に評価されなかったとしても、とても満足な人生を送っていたんじゃないかと推測される。人生において様々なインスピレーションを受け、それを楽しむという姿勢は是非見習いたいと思った。
あんまり期待もしていなかったヴァロリスなのに思わぬ見所に足をとめ、町を出たのは午前11時40分。あらあら、急がなくっちゃ。ここから海岸をどんどんと離れて北部内陸に入った場所に香水で有名なグラースの町がある。
グラースは急斜面に作られた町で迷いながら走っているうちに町の上の方のバスターミナルの駐車場に到着。ここに車を停車して観光することになった。
バスターミナルのある場所は高い所にあるだけあって、そこから斜面を埋めるように建っている赤い屋根の家々の姿が美しく、ここもある意味グラース観光スポットの一つといえるんじゃないかと思える。
そう思いながら坂を下って町の中に潜入していくと、バスターミナルから見えていた瀟洒な赤い屋根の家々の印象とは裏腹に、古びた建物がこちゃこちゃと続く細い入り組んだ道が続く。洒落た豪華さがあるというよりは昔ながらの下町という雰囲気だ。これはこれで魅力的。あっちこっちの店をのぞいたりしながら、昼時ということもありバゲット屋さんでサンドイッチを買って昼食を摂ることにした。
ここのバゲット屋さんは店の前にパラソルと椅子・テーブルを用意してくれていてテイクアウトのバゲットの値段で着席して食べられるのが嬉しい。観光客と地元客半々くらいな感じの店。それにしてもどの町にいってもバゲットは裏切ることなくきっちりと焼きたてでおいしいってのがフランスは素晴らしい。ここのバゲットもカリッとした皮とフワッとした中身に絶妙な塩味。具が何であれこのバゲットだけでかなり満足できるという味だった。
昼食を済ませたら、香水、香水。
町中にフラゴナールという香水メーカーが開いている香水歴史工場があるというので行ってみた。
香水の香りを抽出する装置の展示や、今までフラゴナールが発売してきた香水ビンやラベルの展示などが見られた。ラベルは時代を反映したアールヌーボーの物などが特に面白かったが、すぐにフラゴナールの製品展示場のような場所に出てしまい、やはり香水会社のプロモーションのための歴史博物館なんてこんなものよねーと、ややがっかりしつつ製品を見てまわることになった。
そもそもケミカルな香りにはすぐ頭痛がするタイプだし、あまり香水には詳しくないために製品を見てもあまり心躍るということもなく、買う気もおこらずに試しに香りを嗅いだりしていたのだが、あるコーナーで若い女性店員が「地下の生産工場見学はお済ですか?」と英語で話しかけてきた。
まだだと答えると、この建物の地下で無料で工場見学を行っているので行ってみたらどうかという。それは面白いかもしれないと早速地下に向かった。
受付カウンターで尋ねると英語バージョンのツアーがしばらくするのでお待ちくださいと言う。待っていると、さっき上で私たちを勧誘した女性がツアーガイドとして登場し、英語のツアーが始まった。
香水は様々な種類の植物や動物から香りを抽出して調合することでできあがる。そんな一般的なイメージは持っていても、具体的にどうやって香りを抽出しているのかなんて考えたこともなかった。ろ紙をロート状にしたものがいくつも置かれている部屋では、ろ紙に植物の名前が書かれていて実際に香りをかぐことができる。
ある部屋では高濃度の香りを抽出するために昔行われていた方法の説明もあった。紙に花を置いて香りを染みこませ、その紙から香りを抽出する方法で、何トンという花からわずかしか抽出しないために強い香りになるという説明だった。あまりに手間がかかるために今はこの方法は使われておらず、もっと化学的な方法で同じ効果をあげているのだそうだ。
それにしても、そもそも風呂に入っていなくて肉食で体臭が激しいために香水が生まれたんじゃなかったっけ?日本人としては「風呂、入りゃぁいいじゃん」で終わる話を、ゲージツの域にまで高めているってところがいかにもフランス的だ。物事は始まりがどんなに馬鹿馬鹿しくともつきつめると凄い事になるんですねぇ。
ワイナリーを見学するように香水工場を見学すると、今まで全く未知の世界だった香水が身近に感じられるようになった。
説明のあとは、ガイドのお姉さんにくっついてぞろぞろと先ほどの展示場に戻る。今度は「利き香」タイム。
ある香水をテスターの紙にプシューッとまいたのを参加者に渡してくれる。「さて、この香水には何の香りが含まれているでしょうか?」というわけだ。いやー、これは難しかった。全然わからない。メインとなっている強い香りさえも当てられない。香水の調合を行う人はフランス語で「ネ(鼻)」と呼ばれるのだそうだが、何と4000種の香りをかぎわけられるのだそうだ。そしてネはこのグラースの出身者が多いんだって。これはもうDNAの問題かもしれない。
それにしても、フラゴナールのこのツアーは、ワイナリーツアーの体験に近かった。ワイナリーツアーでは鼻と舌を研ぎ澄まして、どんな香りや味がするかを真剣に探るのが楽しみだが、それに似ている。短い時間だったが、何度かこういう訓練をすると少しは香りに対する感覚がわかってくる気がした。もっとわかると、もっと香水が楽しめるようになるかもしれないという感覚をつかめたのが今日の収穫だ。
そうそう、このツアーの説明をしてくれた女性はとても可愛らしくて英語も達者で説明も上手い。みんなファンになりそうな勢いだったのだが、最後の最後に「えー、これで本日のツアーは終了です。さて、皆さん、今日ただいまご紹介したこの香水、香水といいますと通常市場価格はウン万円するのですが、フラゴナールではたったの数千円。しかも今なら5つお買い上げになるともう一瓶サービス・・・」と急に過激な売り込みモードになり、みんなツアー説明のお礼を言う間もなくサーッとちりぢりに去っていってしまった。
因みにフラゴナールのショールームには日本人のカップルが数組いて、みなさん大量にお買い上げ。フラゴナール側でも商品リーフレットの日本語バージョンを用意していて商品をわかりやすく説明してあった。私たちは今回は香水の世界への導入の日として今日を楽しみ、身につけるのはもう少しお勉強してからということで、次回までの楽しみにとっておくことにした。って、次回はいつ来るのであろうか。
フラゴナールの外には昔の香水売りの彫刻なども飾られていて雰囲気がいい。いやいや、また来ましょう。
もう一つ香水博物館があるはずなのだが、こちらは数年前から改装の為休館中。で、今も休館。フラゴナール人気で開館できないのかもしれないなぁ。その他には無料で見られる衣装博物館があり、昔のこの辺りの女性の衣装展示を見て楽しんだ。フランスで衣装というと最新モードやルイ王朝などの豪奢な衣装をイメージしていたので、この素朴な民族的な博物館は予想外でもあり楽しめた。
グラースは坂の多い町だ。主要な場所を見た後は、町をぶらつきながら坂の上から下から角度を変えて町をながめるのが楽しみなようだ。斜面にある町は立ち位置を変えると全く違って見えるし、立体的に交差する道が面白い風景を作り出すので何もせずに歩き回るだけで目に映る風景が面白い。こうした風景を楽しんで坂を上がる苦痛を思い出さないようにしながら丘の上に駐車場に戻った。
グラースについては香水の町ということで、漠然と華やかなイメージを抱いていたのだが、ファッション雑誌にあらわれるきらびやかさは一つもなく、しっとりとして昔ながらの落ち着いた町で、それが逆に香水の歴史を感じさせる魅力的な場所だった。
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