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2008.08.05
フレジュス観光とコクトーの礼拝堂
フランス:サントマクシム

 滞在しているサントマクシムからの観光の最後はフレジュスとサン・ラファエル。

 と思っていたのだが、サン・ラファエルは割愛することにした。コート・ダジュールの入り口で美しいビーチが続くらしいのだが、人気のビーチというのは実はあまり面白くないし、数回通りかかって遠目から見た感じでは海も驚くほど美しくもない。他に見所があるというよりはフレジュスやサン・トロペなどへの観光の拠点になる町だというガイドブックの説明により、まぁ、行かなくってもいいんじゃないかという判断になった。

 一方のフレジュスはローマ時代の遺跡が残っている町だそうで、郊外にはコクトーが内装を手がけた礼拝堂がある。こちらは面白そうなので行ってみることにした。

 今日は割りと近くの町だからと油断して10時近くに出発したら、案の定海水浴に向かう渋滞に巻き込まれてしまった。あーあ、これで30分は遅くなってしまった。

 サントマクシムからフレジュスに行くには、サン・ラファエルをかすめなくてはならないので、必然的にビーチを見ることになるのだが、やはり判断通りに行かなくてもいいようなビーチ。いや、もしかしたら、もっと素敵な場所もあるのだろうが、通りがかりの道からのビーチはあまり素敵には見えなかった。









 フレジュスの南側を走る線路よりも更に少し南側に、運良く無料の駐車場を見つけることができたので、町歩きはそこからの出発となった。小さな町なので、この駐車場から300m程歩いて線路の下を通るとすぐに町の中心地が始まる。線路をくぐる手前には「お、これって遺跡なんじゃないの?」と思われる片端がかけてしまったローマ時代の水道今日の柱の1つと思われるものがポーンと立っている。

 ガイドブックにも何も書かれていないし、この遺跡らしいものを取り囲んだ柵にも何の説明もない。すぐ横には民家が建っているし、こんなに無造作に遺跡があるってもの変わっている。

 下町はゆるやかな坂をのぼって教会に向かうのだが、建物は古びており、ここに来るまでには渋滞にさえなっていたビーチ沿いに比べると、遺跡と同じように忘れ去られたように静けさが漂っていた。

 中心の教会付近からぼつぼつと観光客の姿もあらわれ、ここが観光地であったことを思い出させてくれるようなフレジュスだが、観光案内所はやる気に満ちていた。ローマ時代の遺跡や町の見所をマーキングした地図をバシーッと用意していて、係員の女性は見所に数箇所入れる「フレジュスパス」を買ったらどうかとプロモーションしてくる。今まで歩いて来た町の雰囲気から考えて、フレジュスパスを購入するにはまだ検討が必要だと丁寧にお断りして、とにかく見所をいくつか周ってみることにした。

 1つ目の見所はローマ時代の劇場跡。これはフレジュスパスにも入っている町の観光の目玉的らしい遺跡だが、実は敷地の囲いが網なので見えてしまう。

 コロッセオの座席を支える支柱だけが残っている遺跡で劇場と言われなければ何だったのかも難しいくらいにしょぼい。いやー、これにお金を支払って見る気がしない。フレジュスパス、買わなくて良かった。うっかりフレジュスのやる気に負けるところだった。

 次の見所は無料で見られるローマ時代の水道橋跡。公園の中にオブジェのように立っている水道橋は、これまたかなり損傷が激しく水道橋と知って見ない限り何なのかをすぐに判別するのは難しい。

 しかし、それだけに周囲の風景に溶け込んでいるというか日常的に遺跡があるという風景になっているのが面白いと言えなくもない。フレジュスとしてもこれでお金を取れるとは思えなかったんだろーなー。

 町は真ん中に教会のある広場があり、そこから細い道が何本か四方に出ているのだが、この辺りに一番多くの人が見られた。教会の広場から出ている小道沿いにはカフェ、レストラン、パン屋、雑貨店、衣料品店などが並んでいて、観光客と地元民と思われる人々が寛いでいる。

 ここから一番賑やかそうな小道を通って西側に移動していくと円形競技場跡が見られるというので行ってみることにした。




 あはは、これっすかねぇ。

 駐車場の下側ががくんと落ち込んで、何やら古めかしい石積みの壁になっていて半円形を作りそうな広場がある。

 これ?かもしれない。

 うん、これに違いない。私たちはこれを円形競技場跡と決め付けた。観光案内所でもらった市内地図には他にも様々な遺跡や古い時代の建物の説明などが施されていたのだが、今まで見た限り、これ以上時間を使ってもあまり実りがありそうもないので、フレジュス市内観光はこれにて終了。正直、あまりパッとしない町だった。

 駐車場から車に乗り、市内から離れたコクトー礼拝堂に向かう。ガイドブックには5km離れていると書かれているが、車で15分くらいかかっているのでもう少し遠いような気がした。

 到着してみると、ゲートがあって脇に立て看板がある。午前中は12時半まで開館していて、その後はシエスタで午後2時まで閉まってしまうという表示だった。現在時間、11時52分。どうやら午前中に間に合いそうだ。

 車が入れるゲートには鍵がかかっていて、その左側の人が通れるゲートだけが開いているので、ここに車を停めて入れということらしく、私たちはゲートから徒歩で礼拝堂にアプローチすることになった。ガイドブックに、ゲートから礼拝堂までは450mの距離とある。歩き出したものの礼拝堂の姿がさっぱりと見えてこないので、450mっていうのが意外に長いということに思い当たった。閉館は12時半。間に合うのか?

 そんな不安を抱えながら急ぎ足で森の中の道を通過すると11時58分に礼拝堂に到着。本当は、この森の道をゆっくりと敬虔な気持ちで礼拝堂にアプローチするということが設計に含まれているだろうと思うのだが、そういう時間がなかったのはやや残念なことだった。

 忽然と森の中に現れた礼拝堂は、道路からも離れているのでシーンとしていて、風に揺れる木々の葉音だけが聞こえる環境にあった。


 外側は素朴な石積みの建物と薄赤い瓦の屋根で周囲の静けさにマッチしているのだが、この石積みの外側から一歩外廊下に入るとコクトーの奇抜なデザインのステンドグラスが目に飛び込んでくる。6角形の建物の各面にこのステンドグラスの扉があり、中の1つが開いていて礼拝堂の中に入れるようになっていた。

 中は更に賑やかなことになっていて、美しい水色のタイルの床に真っ赤な十字架が埋め込まれ、外から見えていたステンドグラスの間も全てコクトーの絵で埋め尽くされている。手法はフレスコ画だそうで色合いも薄いパステルカラーなのだが、とにかく壁一面に描かれているので圧巻だった。

 そういえば礼拝堂に入るチケットはどこで買うのだったろうか?もしかして、このまま無料で見学できちゃったりして?

 なーんて思っていたら礼拝堂の奥に1つだけある小さな部屋から男性がボンジュールと出てきて一人2ユーロ徴収。なるほど、そうなっているのね。内部の建築についての解説はあるものの、描かれている絵についての説明は特にどこにも記載されていなかったが、私たちは仔細に絵を眺めて時間を過ごした。

 礼拝堂というと15世紀のような絵が飾られているイメージが強かったので、コクトーによるポップアートのようなモダンな絵で埋め尽くされた内部はかなり斬新で、これぞ芸術家に愛された南仏というにぴったりの場所。ここはコクトーのファンならずとも見にくると面白い場所だと感じた。

 仔細に眺めるといっても15分程度。礼拝堂を出て左手の丘に登って、ここからの景色を楽しみながら持ってきたサンドイッチで昼食を過ごすことにした。

 昼食を終えて礼拝堂に戻ると、既に鍵がかかっていて閉館になっている。ぶらぶらと森の小道を戻ってみると、人間が通れるゲートにも鍵がかかっている。あれれ、出られなくなってしまった。

 車が出入りするゲートの端に人一人がやっと通れる隙間を見つけて、そこから出ることができたのだった。

 作品が美術館の中に置かれているのではなく、生きた森の中を歩いて礼拝堂にアプローチするという辺りがインタラクティブで現代芸術を感じさせ、作品を見たというより体験したという感想が持てる場所だった。


 
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