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2008.08.02 Vol.1
小さくともゴージャスなサン・トロペ
フランス:サントマクシム

 映画スターのブリジッド・バルドーが滞在したというサン・トロペ。滞在するサントマクシムからは十分にドライブできる距離だと踏んでいたのだが、昨晩、隣のテントのカップルと話していたら車で行かない方がいいという。この時期、誰もがサン・トロペを訪れようとするために渋滞が激しく、このカップルも初日は途中で嫌になって引き返してきたほどなのだそうだ。

 じゃぁ、どうやって行けばいいの?と聞くと、サントマクシムから船が出ているという。ここから陸路でサン・トロペに行こうとするとグルーッと周らなければならない半島が、海路なら超短距離になる。車で20km、1時間の道のりがクルーズしながら15分で行けるというのだから船で行かない手はない。そこで、私たちはキャンプ場からサントマクシムの町まで車で行き、そこから船でサン・トロペに向かうことにしたのだった。

 サン・トロペへの船が出る港の横に大きな駐車場があり、そこに車を停めて船乗り場へ。途中にチケット売り場のブースがありサン・トロペまでは往復で一人12ユーロだった。この船はシャトルバスのように20分おきくらいに運行されて便利なこともあり、またサン・トロペ近隣が渋滞していることもあり、昨晩の隣のカップルから得た情報どおり大勢の人が利用しようと列をなしていた。


 乗船して10分ですでにサン・トロペの町が近づいて見え、15分も経つとクルーザーが係留されている港に入っていった。港にボートやクルーザーが係留されているのはもう見慣れた光景ともいえたが、ここサン・トロペが他の町と違うのは、クルーザーのいずれも大きくてピカピカして豪華なことだった。

 まず、入り口からしてサン・トロペなのだ。


 船を下りて観光案内所のある右方向へと歩いて行く。

 右手には夜になるとパーティーを催すためにあるクルーザーなのだろうか、サロンを見事に飾った船が何艘も並び、そのインテリアを見るだけでも楽しい。左手には洋服屋やレストランが並び、レストランも今までおとずれたマルセイユ、カシ、サナリー・シュル・メールなどと比べると高級感のある洗練されたものがいくつかあって、昼間の今から華やかな夜を予想させ、他とは違う「スター」の香りを漂わせていた。

 これらクルーザーの持ち主、関係者、そして私たちのように全く関係ない観光客と様々な人が行き交うこの港界隈では、時々びっくりするような派手なファッションに身を包んでいる人も見かける。

 にわか成金だろうか・・・。

 また、真っ白なワンピースやスカート、水着、真っ白な麻のスーツなど、男女にかかわらず白尽くしの衣装という人を何人も見かけた。これがサン・トロペファッションなのだろうか。確かに青い海、パステルカラーの古びた教会や建物、真っ白で豪華なクルーザーという背景の中で白い衣装はとてもよく似合っていた。

 こうして港界隈をぶらぶらとしながら観光案内所に到着。通常は無料で配布される地図がここでは2ユーロ。

 さすがサン・トロペ!

 2ユーロに驚いて地図を拒否した私に、観光案内所の姉さんはすまなそうに「見所といっても質のいい美術館と丘の上からの眺めくらいで、あとは町を楽しむのがサン・トロペってことなんですが、今日は土曜日でマルシェが開催されているのでそれが面白いと思う」とマルシェまでの行きかたを丁寧に口頭で説明してくれた。この人はとっても感じが良かった。

 先日のサナリ・シュル・メールに引き続きマルシェ。最近はマルシェ運がついているとみえる。

 案内所の姉さんの説明に従って港沿いの道から一本裏通りに入ろうとすると、壁画の残る古い建物の中が3〜4軒の魚屋が並ぶ小さな魚市場のようになっていた。

 こんな歴史あるような建物を通常使いにしているというのが変わっている。下町の気楽で活気ある魚市場の雰囲気があるものの、置いてある商品には下町の雰囲気はない。まず目に入るのが巨大なロブスター。そしてタイやヒラメのような大きな高級魚が切り身でなく丸ごと置かれている。そしてオマール海老、手長海老、牡蠣、蟹と見れば見るほど高級食材といわれる魚ばかりが並んでいるのだ。

 こういう所でメモを見ながらどんどん食材を購入しているのは、今夜のクルーザーでのパーティーを任されているシェフなのだろうか。この魚市場の風景もまたサン・トロペらしかった。











 魚市場を抜けて右手のマルシェ開催場所まで行く道には、昔ながらの建物が並んでいる。薄い黄色やピンクに彩られたこれらの家は今までに訪ねたプロヴァンス地方にはよくある家々で、可愛らしいけれどひなびた感じだ。

 しかし、ここでは、これらの少しひなびた建物の1階に都会の空気を思わせる洒落た店が入っている。ふと駐車しているオープンカーも、店からサラーッと出てくる夫人もカッコいい場合があり、ディオールも店を出しているのには驚いた。

 店の入っている建物がひなびているだけに、このコントラストというかギャップが面白く、人工的に作り出そうとしても真似のできない味わいを出していた。

 港界隈に比べると、この辺りは人の数も少なく、この先にマルシェなんてあるのかなぁと思ってくる頃、買い物袋をいっぱい下げた人々が次々と歩いてくるのが目に入って方角に間違いないことを確認。








 マルシェは先日のサナリー・シュル・メールに比べると規模はやや劣るが、活気においては同じかより以上の賑わいがあった。同じプロヴァンス地方なので食品は同じような感じだったが、ここでの特徴は絵画、アンティーク、女性用の衣料品や装飾品のお店が多いことだった。「ここで絵なんか買う人いるのかねぇ」なんて言っているそばから、店のご主人(あるいは画家かもしれない)に色々質問する人がいたりするから、やっぱりここはサン・トロペ。アンティークにしても「あーら、これ家のクルーザーにちょっといいじゃない?」と買う人もいるのだろう。


   ここを歩いているとついついプロヴァンス風の大きくてカラフルな麦藁帽子やざっくりした編みこみのバッグなんかが欲しくなる。だからといって、日本のように軽い気持ちで試着すると大変そうだ。洗練されたお店が多くて町が洒落た雰囲気だといっても、マルシェで店を開いているのは百戦錬磨の店主達。ここの衣料品の店主はもとヒッピーという雰囲気の女性が多く、試着しようものなら、くわえタバコで近寄ってきて「素敵ー、よくお似合いよー」と褒めながらも買えという脅威を漂わせている。おずおずと手にとって試着した女性が、店主の迫力に負けて(いや、単に欲しかったのかもしれないが)買っている時に値段を聞いて驚いた。この麦藁帽子は56ユーロもしていたのだ。くわばら、くわばら。

 とはいえ、私も衣料品店を見ているうちに薄手のブラウスが欲しくなってしまった。明らかにインド製品でインドで買ったら高くとも750円くらいなのだろうが、ここでは2500円。でもねぇ、こういう商品ってインドじゃ見つからなかったんですよ、と言い訳しながら購入。いやー、いい思い出の品が手に入りました。このマルシェで素敵な野菜のファルシとプロヴァンスハーブとオリーブなどを散りばめたピザの店で昼食を購入。ファルシ2個とピザ1本で1000円くらいしちゃうが、この辺りのレストランに入るよりはずっと安上がりになったはずだ。

 お昼ご飯にはまだ少し早いので、午前の最後のイベントとしてラノンシアード美術館を訪ねた。この美術館はもと礼拝堂だったそうで、小さな前庭があってすぐに建物が見え、人々や町に溶け込むように存在している美術館だった。

 しかし、重厚な扉の中に入ると外のにぎわいがぱったりと途絶え、やわらかな自然光が内部を照らし出して静謐な空気を生み出している。

 ここに置かれている作品は新印象主義のシニャック、クロス、シーラ、マティス、ブラックなどなど。ほとんどが全く聞いたことのない画家の作品だったが、いい色合いの作品が多くて気持ちの良い美術館だった。

 私たちが気に入ったのはボナール。あまり近づくと点描が目立って良さが感じられないのだが、作品から5mくらい離れると温かみのある気持ちよさが感じられた。

 それでも、知名度の高いマティスの作品である「ジプシー女」の度肝を抜く印象的な色使いと比べると他の作品はやや普通に見えてしまう。「芸術は爆発だ!」という岡本太郎氏の名言通り、ただ心地よいだけでなく人の心に突き刺さるようなインパクトが芸術には必要なんだろうなぁ。と、ミーハー気分で浮かれていた数分前の自分たちを忘れて今度は美術評論家気分。こんな気分にさせてくれるのもまた、サン・トロペの魅力なのかもしれない。

 美術館を出て、街路樹の縁石をベンチにマルシェで買ったファルシとピザで昼食。人が腰掛けている目の前に、地元のおやじがバタン、バタンとテーブルを広げていきなりチェスが始まった。

 「何もこんな近くの目の前に出さなくってもいいじゃないか」と思うが、この木陰の一角はこのおやじ達の決まった場所で邪魔しているのは私の方かもしれない。

 おやじの出現を潮時にお昼ご飯は終了。

 最後に町の裏手にある丘に登ってみることにした。赤い屋根の家々の中にクリーム色の鐘楼塔を持つ教会がアクセントになっている。午後になって豪華クルーズが一斉に海に出始めているのが向こうの海に見てとれた。

 丘を下ると時刻は午後1時近く。小さな町だが魅力的な小道や裏通りが多いのでもう少し歩き回ってみる。

 塔のある付近はいい具合にカーブした道があり、生い茂る樹木とたっぷりと花をつけた花が家々を飾っている。この付近の裏通りにはギャラリーが並ぶ道もあり、さっき美術館で見た新印象主義風作品もあれば、もっとモダンアート、ブリジッドバルドーを描いたポップアートもありギャラリーひやかしもなかなか面白い。

 小道に張り出したテラスでの食事は港沿いのレストランに比べると庶民的でお値段もリーズナブルらしく、観光客で賑わっていた。

 こうしてサン・トロペを散策しつくしてもようやく午後2時。マルシェも終わる時間だし、ここでの観光はこれでもう終了。水着を下に着込んでいて海水浴もできる準備万端だったが、サン・トロペには小さなビーチしかないので、今回は水に入らずに帰ることにした。

 駐車料金は5時間で7.5ユーロ。船代金が一人12ユーロなので本日の交通費は2人で27ユーロだ。サン・トロペまで運転しないで楽して行けたし、時間の節約になったので良かったんじゃないかと思う。サン・トロペ側よりもサントマクシム側の方が宿泊費も安いだろうし、サントマクシムに滞在してサン・トロペを目指すというやり方はヨーロピアンに人気があるようだ。



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