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2008.07.30
人気の海水浴場、サナリー・シュル・メールへ
滞在しているラ・シオタから東に30kmほど離れたところにサナリー・シュル・メールという海水浴場がある。地元の人が週末を楽しむビーチだとガイドブックに書かれていて、私たちの滞在するキャンプ場の目の前を走る幹線道路も夕方になるとサナリー・シュル・メール行きが混んでいるために多くの人が滞在しているのだろうと予測できた。
朝9時20分にラ・シオタのキャンプ場を出発。道中はガイドブックには紹介されていないけれどおおぜいの人で賑わう海水浴場とそれを取り巻く宿泊設備やレストランが村をなしている場所がいくつもあった。朝9時20分というのはこの時期に行動を開始するには多少遅い時間だ。私たちは海水浴場に近づくたびに路上の駐車場を狙う車が作り出すミニ渋滞に巻き込まれ、サナリ・シュル・メールでも1つ目の駐車場が満杯、2つ目の駐車場で空きを見つけることができるなどで時間がかかった。たった30kmなのに駐車場に停車した時、時刻はすでに10時22分にもなっていた。あと30分早く出発していたらもっと早く到着していただろうね。
駐車場から海辺に向かって街が活気を帯びてきて、海沿いまで来ると市が立っているのが見えた。今日は水曜日。駐車場混雑の原因は市が立っていたからだということがわかった。
ここの市は今まで見た中でも最大規模。200mくらいの長さで3列に屋台がずらーーーーっと並んでいる。野菜、肉、魚、チーズ、ハムなどの食品から女性、男性衣類、帽子専門の店、果てはベッドのマットレスまで販売する店があった。
店はアイテムごとにセクションが決まっているわけではなく、帽子やの隣が野菜屋、でその隣に洋服屋があって隣はチーズ屋というように、もう雑然としているというか全体がドンキホーテ化しているので、ぶらぶらと歩いて見るには飽きがこなくてとても楽しい。ただ、ある1軒でめぼしいものを見つけて戻ろうとするととても大変。
実際、この後私たちはチキングリルを昼食用に買おうと物色したのだが、めぼしい店に再び戻るまでにぐるぐると市の内部を歩き回る羽目になった。
マーケットも楽しいのだが、今日の目的はビーチ、ビーチ。マーケットに紛れて観光案内所が見つかりにくかったが何人かに聞いてやっとたどり着くことができた。周辺の地図をもらうと、マーケットのある場所はヨットハーバーになっていて、ビーチはもっと左手に広がっていることがわかる。ハーバー沿いの防波堤を見学してからビーチに向かうことにした。
市が立って隠れていたがここにもヨットがたくさん係留されていた。マルセイユ、カシに続いてコート・ド・プロヴァンス3つ目の港町を訪れたことになるがいつでも港はヨットで埋まっている。プロヴァンスのヨット人口の多さには驚かされる思いだ。
小さな灯台へと続く長い防波堤に来ると、市の賑わいが嘘のように人がまばらになって静かだ。ここでは地元民なのか釣り糸を垂れる人がちらほらと見られ、それなりに収獲もあるようだ。防波堤は行き止まりになっているので戻って更に左手に進む。巨大な駐車場の前は狭いビーチになっていて、ここは砂利のビーチのためか砂のまき起こりがなく水が澄んできれいだった。
そのまま駐車場をまわりこんで橋を渡った向こうが大きな海水浴場。広々とした砂の海岸は日本のビーチを思い起こさせるのだが、近寄ってみると浜辺が粘土質に近いヌッタリとした感じの細かい黒い砂で、おおぜいの人が海水浴するせいか、あるいは生活排水などがどこからか流れ込んでしまっているのか水は濁ってあまり美しくない。橋を渡る時に硫黄のような臭いがしたので川から何らかのそういう成分が入り込んでいるのかもしれない。とにかく、「地元で人気の」という言葉の響きから期待していた澄み切って美しい水のビーチではないのでとてもがっかりしてしまった。
水着も下に着ていたのだが水に浸かる気も失せ、宙ぶらりんの気分になった私たちは「はて、どうしようか」と考えこんでしまった。こうなったらもう一度マーケットに戻って徹底的にマーケットを楽しむしかない!
ということでマーケット散策を再開。
プロヴァンス地方だけあって、プロヴァンスらしい店も多い。黄色の地色にオリーブなどが描かれた焼き物の店、同じような図柄の布でテーブルクロスやナプキンを売る店、様々な種類のオリーブ専門店、中央にギャザーがよったようなトマトのある野菜屋。このトマトは後にイタリアで食べたが他のトマトよりも値段が高めだが味が濃くてジューシーでとてもおいしい。
市の立つ海沿いにはレストランもたくさん並んで買い物に疲れた人がお茶をして寛いだり、賑わいを楽しみながら昼食を摂ることができるようになっている。ただし昼の定食もここでは一人15ユーロくらいするので円安の今は私たちには過ぎた贅沢だ。海沿いから離れて裏路地に入ってみると、そこにもちらほらとカフェやお店が並んでいてカシよりはずっと賑やかだ。可愛いケーキを並べる店も見つかった。
ビーチが不発に終わったものの市が立っていたので町歩きを存分に楽しめたサナリー・シュル・メール。せっかく来たのだからと、最初に見た狭いビーチで少し水に入ってから帰ることにしよう。昼食は市で売っているチキンのグリルを半羽と持ってきたパンとレタスなどでサンドイッチ。チキンの内側にこれでもかとプロヴァンスハーブがまぶしてあり、他の地域で食べるチキングリルとは一線を画したおいしい味になっていた。
最初に見たように広いビーチに比べると、この狭いビーチは水が澄んでいてきれい。ここなら入る気になる。近くには無料の水シャワーもあってとても便利だ。
ここで1時間ほど寛いでから2時15分にひきあげてみれば、あれほどにぎわっていた市はすっかり畳まれて広場はひっそり。まるで別の町にきたような雰囲気になっていた。サナリー・シュル・メールはやっぱり市が立つ日の朝を狙ってきた方がずっと楽しいようだ。人気のない広場には各店が残していった段ボール箱が残るばかりだった。
そうそう、私はテント内に運び込んだ調理道具を置くための箱のようなものが欲しかった。果物屋が残していったベニヤ板でできた箱が丁度いい。これを頂いて帰ることにした。横に「プロヴァンス」という文字が入っているのもいいねぇ。箱を物色していると、早くも向こうから市の後のゴミを収集する車が働き始めている。ごみ収集される前に状態のいい箱を1つ見つけ、サナリー・シュル・メールのお土産とさせて頂くことにした。
あれほど混んでいた駐車場も午後2時半の今はがらがら。サナリー・シュル・メールというのは本当に市が人気の町なんだというのがこれでもわかる。
まだ引き上げるには少し早いと思われたが、夕方の交通渋滞に巻き込まれたくないのでさっさと退却することにした。
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