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2008.07.25
セザンヌのアトリエ、そしてセザンヌの道
今日はセザンヌ三昧の一日にしてみようと朝からまずはアトリエへ。
昨日訪れた旧市街のエリアの外にあるアトリエへは今日は車で行ってみた。旧市街エリアの外の駐車場に車を停車してアトリエへ。地図上では近くに見えるが旧市街からずーーーっと上り坂なので到着した時には軽く運動した気分だった。
アトリエはセザンヌの絵を思わせる木漏れ日の中にある2階建ての家。内部は撮影禁止なので写真はないのだが、北向きの天井の高いアトリエには故人が残した衣類やセザンヌが静物画を描いたであろうようにモデルの果物などが置かれていた。
思わず声をひそめてしまう静謐な空気が漂っている。
セザンヌの作品は世界中の有名な美術館でお目にかかっているし多くのメディアでも目にしてきたが、アトリエを訪れるっていう体験は作品を見るのとは全く異なるインパクトがある。今までは作品を見てもセザンヌという人に対して何かを想像することはなかったのだが、エクスに来てからというものセザンヌの銅像を見て、アトリエに来て、画家自身に対しての印象が深くなり、ああ、こういう顔の人がこういう場所であの点描の一つ一つを描いていったのかと画家を想像することから作品を見られるようになるというのは面白い体験だった。
このアトリエの庭には若手芸術家の作品が展示されているし、夏の間は有名シェフを招いて庭で晩餐会が数回開かれているそうだ。晩餐会のお食事代金はたしかEUR60くらいだったかと思う。次回はいつかだろうかと受付で聞いてみると来週だが既にチケットは売り切れているとのこと。そしてそれが今年最後の晩餐会だそうで、受付の人は「来年、またお越しください」と真顔で言うので、私も真顔で「スケジュールを調整してみますね」と答えた。そんなに毎年来れないっちゅーの。
このアトリエを出て左手に20分ほど歩くと、セザンヌがスケッチによく訪れた丘がある。ここレ・ローブの丘へはアトリエからの道沿いに表示も出ているのであまり迷うことはないだろう。
坂道を上っていくと、途中から美しく植物を配した道になり、一番上からは絵のモチーフになったヴィクトワール山が見え、手前にはいかにもセザンヌの絵に出てきそうな緑の風景と赤い屋根が点々と見えている。
丘の頂上は半月型のテラスになっていて、セザンヌがここから描いた絵のコピーが数点展示されている。この絵を見ると、まさにセザンヌがここから見て描いたということがよくわかり、絵がより身近に感じられるようになっていた。
この丘を降りようと左手にずれていってみたのだが、住宅街に入ってしまい行き止まりそうな感じだったのでもとの道から戻ることにしたのだが、迷い込んだ住宅街はどれも大きな邸宅で夏の花が薄い黄色い壁と赤い屋根を彩ってそれは美しい住宅街となっていた。
さて、アトリエを後にして今度は車で「セザンヌの道」と呼ばれる道をたどることにした。観光案内所で「セザンヌの足跡を追って」という日本語版のリーフレットをもらっていたので、これを参考にヴィクトワール山へ近づいてみるというコースだ。
この道はセザンヌがキャンバスを背負って歩いた道で、途中には絵のモチーフになった場所もあるというのだが市内から車でこの道に入るのはちょっとややこしかった。しかも、セザンヌがキャンバスを立てたシャトー・ノワールという邸宅は個人宅で中に入れないということで素通り。セザンヌの道とはいえ、よっぽどセザンヌの作品に深く親しんでいないと作品と関連させるのは難しかった。だから高い料金でもツアーが成立してるんだなぁと納得したのだが。まぁ、そこまでセザンヌにこだわっているわけじゃない私たちは、気持ちの良い緑の中のドライブを楽しむだけで十分に満足だった。
途中の村の路肩に車を停めて簡単にサンドイッチの昼食を食べ、尚もヴィクトワール山に近づく道を走る。
緑の奥に夏の強い日差しに照らされて眩しいほどに白く輝くヴィクトワール山はセザンヌららずとも魅力を感じる山だった。
ヴィクトワール山の麓にレストランと駐車場のある場所があった。夏季は山火事の危険性があるので禁止されているが、それ以外の時期にはここから山を越えて向こう側へのトレッキングもできるらしい。ここまで来ると雪山でも見るかのように本当に山が眩しい。
午後1時20分とまだ早い時間だったが、今日のドライブはここで終了。ここからエクスに戻ることにした。帰りはエクス郊外にあるカルフールに立ち寄る。カルフールに到着したのが午後2時過ぎ。ヴィクトワールの麓から40分でエクスに戻ってこられることになる。涼しくて大きなカルフールは魅惑的であっという間に1時間半が過ぎ去り、買い物を済ませてキャンプ地に戻る頃には夕飯の支度に丁度いい時間になっていた。今日は素敵な前菜を数種類とブイヤベース風のスープ。時間に余裕をみた行動だったので夕食も楽しいものとなった。
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