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2008.07.22
リュベロン地方ドライブ
南仏プロヴァンスに住んで知り合った人々とのエピソードを面白く描いた「南仏プロヴァンスの12ヶ月」という本を読んだのは何年前のことだろうか。その時はプロヴァンスに行ってみたくてたまらなかったが、その本の舞台となったのがリュベロン地方ということを知ったのは、ここに来ることになってガイドブックを開いてからだった。本気で来ようと思わない限り調べようともしなかったんだなぁとあらためて自分の怠惰さを思い起こしながらリュベロン地方へのドライブを検討した。
観光案内所で相談すると、1日で村々を巡りながらソー村まで行って帰ることは可能だということだったので、アヴィニヨンから南西に広がるリュベロン地方へのドライブで立ち寄る町は、リル・シュル・ラ・ソルグ、フォンテーヌ・ド・ヴォークリューズ、ゴルド、セナンク修道院、ルシヨン、アプトを経てラベンダーで有名なソーの村。そこからアヴィニヨン方面に引き返して、今度は通ってきた道の1本南の道を通って「南仏プロヴァンスの・・・」の作者の住むボニュー、ラコスト、カヴァイヨンに行ってみたいという壮大な計画を立ててみた。さぁ、どこまで行けるでしょうか?
○リル・シュル・ラ・ソルグ
ソルグ川の5つの支流に囲まれた島のようになった小さな町がリル・シュル・ラ・ソルグ。
町に近づいてから駐車場のPマークを頼りに停車した場所が運河からほど近い場所で、しかも無料の駐車場だったのでラッキーだ。
すぐにも涼しげに水音を立てて周る水車が目に入り、最初の運河を渡るともう町中になっていた。運河沿いにはカラフルなパラソルをかかげたカフェやレストランが並び、それらにはさまるように小さな路地を入っていくと、両脇には焼きたてのバゲットを売る店やプロヴァンス特有の黄色い地色の布でテーブルクロスやカーテンを売る店などが並んで、歩いているだけで華やかな夏のプロヴァンス気分を味わえる町だった。実は今日訪れた町の中では、町のサイズといい華やかながらも素朴な雰囲気といい、ここが一番印象が良かった。
黄色い人目を引く店構えの可愛いブティックは「レ・コロラード」。地球の歩き方にも掲載されていて店内に入ると、確かにしっかりとしたプリントの商品がたくさん見つかった。お値段はちょっと高めだが、せっかく買うならこういうのがいいなぁと見ていると、「こんにちは」とフランス語訛りの日本語が。
ここのご主人は15年前に東京の中目黒に長く住んでいたそうで、日本語が話せるのだった。こんな所で地元の人と日本語で会話が楽しめるというのも面白い。そういう意味でも印象に残った町だった。
○フォンテーヌ・ド・ヴォークリューズ
最初は行くかどうか迷っていたのだが、前の町の土産物屋で見た写真があまりに美しかったので行ってみることにした。ヴォークリューズ山地のふもとにあるということで、地図で見ても細い道をたどっていくことになっている。人里離れたばしょらしい。行けるかしら?大丈夫かな?と危ぶんでいたが、ここは人気の観光スポットらしく、とてもわかりやすい表示があちこちにされていて全く迷うことなく行き着けた。
それどころかちょっとした村の中心地にある駐車場へ入るには列ができている程で、なるほど人気のほどがうかがえた。駐車料金はうむをいわさずEUR3を徴収。こんな田舎にしてはとても高額だとは思うが何時間駐車してもいいようだ。
目の前の川は水中に水草が生えていて清い水に緑の草がゆらゆらと揺れている。夏の強い日差しに照らされた緑に光る川。これを見ると印象派の絵画が思い出され、あらためて印象派の絵に描かれていたのはこういう風景だったのかと腑に落ちる思いがした。
川の手前を左手にむかって人が流れているのでついていくと、右手の川は場所によっては小さな段差で滝を作ったり、カーブして深くなっている所では水の色が勝ってブルーに見える部分もあり、どの部分を見ても変化に富んで見飽きることがない。
対岸は岩山に鬱蒼とした樹木が茂って夏真っ盛りという景色だ。
こう書くと自然がたっぷりという雰囲気で、確かに川側は自然がたっぷりなのだが、反対側には土産物屋がぎっしりと並んでいて、こんな風景にもかかわらず箱根とか野沢温泉のようなにぎわいを見せてもいる。人によってはこういう土産物屋が雰囲気を損なうとげんなりするかもしれないが、それだけ多くの人に人気の場所ということも言える。ここは目のやり場を変えると、猥雑な観光地の部分と自然満喫の部分がきっちりとわかれているので、私としてはこの雰囲気は嫌いではなかった。
こうして歩いて行くと、今まで見てきた緑色の水草の部分と深くなって水の青が勝る部分が混合したグラデーションの美しい場所にやってきた。フォンテーヌ・ド・ヴォークリューズで私が一番気に入った景色がこれだ。

尚も歩いて行くと、ここの名前の由来となっている泉の場所に行き着く。青く神秘的に水を湛えた泉は、夏の今の時期は水量が少なくて見学すべき柵よりはかなり下の方に水面が見える。だからだろうか、だれもが柵を乗り越えて水面近くまで見学に降りている。柵があって「ここより先は危険」と書いてあるにもかかわらず、皆当然のように柵を乗り越えているあたりがフランス人の国民性がよく見えて面白かった。
散策はここでおしまい。折り返す途中には来る時に立ち寄らなかった紙スキの製造風景が見られる場所を見学し、引き続きお土産物屋に誘導されたりしながら楽しんで戻ってきた。
お土産は周辺の草花を漉き込んだ紙に詩を書いたものや、照明のシェードにした紙に由来するもに始まり、プロヴァンスの石鹸、ハーブ、香水、テーブルクロス。もうプロヴァンスというくくりであらゆる物を売ろうというエネルギーに満ち溢れたプロムナードになっていて、来る時に川を見ていた足の下がこんな風になっているとは思ってもいなかった。
それでも、このプロムナードは観光に訪れた人に人気らしく、どの店も混んでいてよく売れているようだった。私たちが軽くマーケティングした限りでは、リル・シュル・ラ・ソルグの方がちょっとだけ安いなぁ。
○ゴルド
ゴルドは頂上の城に向かって階段状に作られた景観が見事な村ということで、この見事な景色を一望できる地点がゴルドに向かう途中にあるというのでそれを探しながら進んでいった。だんだんとゴルドに近づくのだが見つからない。ああ、このままじゃゴルドに到着しちゃうじゃないか、と思うくらい近づいた時、突如として今までのクネクネと登る道の先が開けてゴルドの街が巨大なモンブランケーキのように目の前に出現した。展望台のようにスペースもあり車も自由に停車できるようになっている。うーん、気がきいている。私たちの他にも数台が車を停めてこの風景に見入っていた。
この時点で既に午後1時半。この後にも予定している場所がたっくさんあるのに大丈夫か?とにかくここでゴルドを見ながらサンドイッチの昼食。ゴルドの村には立ち寄らずに先を急ぐことにした。
○セナンク修道院
ゴルドから2km北にあるセナンク修道院はラベンダーで有名でもある。ラベンダーをテーマにした絵葉書やカレンダーやポスターによく使われている修道院で、せっかくラベンダーの時期に来たのだからここははずせない。
ゴルドー村を出てから表示に誘われるままに走っていくとやがて高台から修道院を見下ろす場所に出る。紫色にかすんで見えるのがラベンダーなのだろう。
山を回りこんでどんどんと下りて修道院に到着。ここは駐車場はなくみんな路肩に勝手に停車していて、私たちも車を停めてすぐ目の前のラベンダー畑へと降りていった。
これがかの有名なラベンダーですかぁ。
トイレの芳香剤「ラベンダーの香り」というのは確かにこの花の一要素を一生懸命に抽出しているとは思うが、生のラベンダーとは違う。ここの香りは全くもって素敵だった。爽やかな香りの中に癖になりそうなスパイシーな香りが混じっていて、見た目の紫色の美しさとのハーモニーが素晴らしい。
残念ながら最盛期には遅かったようで、修道院前のラベンダーは既に刈り取られた後だった。「ラベンダーとすぐ後ろの修道院」って写真が撮りたかったなぁ。

○ルシヨン
修道院から再びゴルド方面に向かってから更に西のルシヨンに到着したのが午後3時22分。ローマ時代から採掘されてきたオークルという鉱物?の採掘跡のある町で、町中もオークルを使った家が多い。駐車場に車を停車して坂を上がって町の中に入っていくと、確かにピンク色やオレンジ色の家ばかりが目に入ってきておとぎの国に来たような印象を受けた。
坂が多くて立体的なのもアーティスティックな感じがする町で、レンガ色のパラソルの下で冷たい飲み物を楽しむ観光客や歩いている人も多く、小さな村だけれど華やいで楽しい雰囲気になっていた。
村は丘の斜面に沿って作られていてどんどんと坂を上がっていくとやがて周囲が展望できる一番高い地点に立つことができる。ここから遠くにオレンジ色に削られた採掘場跡と思われる場所も見えたが、今回はちょっと時間切れでそこまでは行かなかった。
○アプト
アプトはガイドブックの写真を見る限り扱いもやや大きくてちょっと楽しみにしていた町だったが、そんなに魅力的に感じられなかった。
というのも、中途半端な規模の町だったからだ。最初に訪れたリル・シュル・ラ・ソルグの方がこじんまりとしているから、チェーン展開しているようなつまらない店が少なかったし、、もう少し大きな町ならばアヴィニヨンの方が洒落た店が多くて素敵だった。だいたい、名物のフリュイ・コンフィがどこよりも高い。やれやれ。
でも、ここで一ついいことあり。この時一緒にいた友人の同僚もたまたまアプトに来ていて、道端でばったりと遭遇したことだった。こんなことって滅多にあるもんじゃないから、そういう意味ではアプトに来てよかったかな。
○ソー
ソー村に近づくに従って、時々道端にラベンダー畑が見られるようになってきた。いよいよラベンダー街道の起点といわれる地域に突入したようだ。
ソーはやや高地にある村で村に向かう道の途中から見下ろすラベンダー畑は光線の加減で近くで見るよりもやや黒っぽく渋い色合いに見える。畑の所々は緑色になっているのを見ると、やはり時期としてはちょっと遅かったんだなぁと思うが、それでも十分に紫色の絨毯を見ることができた。
適当な場所に車を駐車してソー村の中に入って行く。ここも高台に作られた村で上へ上へと坂をあがっていくような場所だった。
午後6時になっているというのに、まだラベンダーの土産物を売る市が立っているのが救いだった。この賑やかさがなかったらとても静かな田舎の村という場所だ。
観光客の姿もまばらになり、村の高台から眼下のラベンダー畑が見下ろせるビューポイントは広場になっていて、ようやく涼しくなった外でペタンクを楽しみ始める地元の人々の姿があった。ペタンクはどういうルールか知らないが、手のひら大の銀色の重そうな玉をいくつか用意して地面を転がして競うゲーム。傍から見ているとどうしてそんなことにと思うのだが、やっている人たちはめちゃくちゃ真剣モードでやっているのが面白い。
この広場の端から見下ろすラベンダー畑は逆光になってしまうので、午前中来たほうがいいのかもしれない。日の入りが午後9時とはいえ、午後6時を過ぎると斜めに光が差し込み始めて、全体が夕方に向かう景色になる中でラベンダーは黒っぽく光って見えるのだった。
ああ、もう、今日のドライブはここで時間切れ。本当はここから折り返してあと2、3の村を見て周ろうかと思っていたのだが到底無理だった。
そこで帰りは通ってきた道よりも北側のカルパントラという町を経由する道を通ってアヴィニヨンへ戻ることにした。
さっき眼下に見下ろしていたラベンダー畑から先にもいつくか畑が見つかり、その度にちょっと車を停車してはラベンダー撮影会。
もう、お腹一杯。ラベンダーは十分でございます。ってくらい満喫してやっと帰途につくことにしたのだった。帰りにとったコースは山の中をぐりんぐりんと曲がる道が続く。
ひえー、こわーい!と運転手も助手2人もドキドキしながら走る道だったが確かにアヴィニヨンには早く帰ることができた。といってもアヴィニヨン到着は午後8時。いやー、今日は目一杯のドライブだった。

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