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2009.05.31
グッケンハイムで世界のムラカミを堪能し午後からピンチョス食べまくり
4日間連続移動してバスク地方のビルバオまで飛ばしてきた。毎日テントたたんで、地図見て、運転して、キャンプ場に到着して、テント設定して、ふーーーー、疲れた。
ということで昨日はゆっくり休憩して、今日から観光。
ビルバオといえばグッケンハイム美術館。NYのグッケンハイム美術館も内容もさることながら器となる建築が有名だが、ビルバオも負けていない。ロサンジェルスにあるディズニーミュージックホールも手がけたフランク・ゲーリー氏の設計による美術館はロスに負けないピカピカぶりを発揮しているようだ。まずはそれを見に行こう。というかそれ以外に見所もあまりなさそうだし、グッケンハイムをじっくり見てみよう!
キャンプ場では地上線だった電車はビルバオ町中にはいると地下鉄になる。グッケンハイムの駅で降りて2ブロックほど歩くと通りの間にグルグルグルーっと金属が巻きついたようなグッケンハイムが見えてきた。
周囲の歴史を感じさせる茶系の建物と全く異なってそこだけ未来的というか宇宙的な空気を辺りに放っていた。
残念ながら目の前の道路が工事中で正面からの写真はあまり美しくなかったが、草花でできた巨大なテディベア?を据えた美術館は十分にインパクトがあった。
建物を左手に回りこむと全く異なるデザインが見えてくるのも面白い。川沿い側には霧のように水が噴霧されるアートがあり、日本人女性の作品だと紹介されている。迫力のあるクモのオブジェは表側のベアほどには違和感なく美術館と溶け合って、私としてはこちらの方が好みだった。
館内では13ユーロの入場料金を支払うとオーディオガイドフォンがもれなく渡される。これを聞きながら館内を回るのもいいのだが、私たちは別途無料のガイドツアー(11時開始)に参加申し込みをしておいた。人数制限があって11時ぎりぎりに来た人は断られていたので、早めに申し込んでおいてよかった。
館内は一切撮影禁止ということで、カラフルなトイレと全体の見取り図くらいしか見せられる写真がないのだが、入ってすぐの館内を上まで貫く吹き抜けにはこれも作品だろうか自動車が天井から釣り下がって吹き抜けのインパクトを更に高めていた。
1階の常設以外の特別展示はムラカミ・タカシ氏と中国人の爆竹によるアートの2名。特に私たちのツアーはムラカミ・タカシ氏のフロアーだけを解説するものだったので、初めてじっくりと氏の作品を見て、外国から見る彼の作品の評価を聞くことができたのは日本人として面白い体験だった。
彼の作品は水木しげる氏の妖怪や日本のアニメーションに強く影響を受けていて、日本人から見るとどうしても子供向け番組のアニメを連想して「これを芸術と呼ぶなら、水木氏はどうなる?手塚氏はどうなる?」という疑問が強く沸いてしまった。しかし、このツアーでの言い方としては、ムラカミ氏の功績は芸術とコマーシャリズムを結びつけた所にあるんだそうだ。確かにどの時代にも芸術家にはそれを支えるパトロンが存在して、それによって芸術家の能力が花開いている。現代社会において個々の庶民レベルがコマーシャリズムによって小さなパトロンとして芸術家を育てることができるなら氏が打ち立てた方法も画期的だと言える。しかし私も含めて庶民というのは必ずしも崇高な物、高尚な物にお金を払うとは限らない。氏のタイムボカンシリーズにヒントを得たという原爆きのこ雲のアートは「タイムボカンシリーズの最後に出てくる爆発のシーンそのまんまじゃないか」と思うし、サイボーグ少女の精密なフィギュアは今まで日本で作られてきた数々のフィギュアの集大成に見えて、日本じゃオタクと呼ばれる人しか買わない物がここで芸術って言われてもねぇとどーにも釈然としない。
しかもグループツアーでは先のタイムボカンシリーズ作品については、日本は世界で唯一原爆を体験した国民であり、その悲惨な体験を子供の頃からこういうアニメーションにしてユーモアに変えて乗り越えてきたと説明があった。ツアー参加者がいっせいにこちらを向いて「なるほどねぇ」と同情とも何とも説明のつかない表情でうなずいていたりするのを見ると、「やばいなぁ」という気分になる。だって子供の頃タイムボカンシリーズは毎回悪役がきっちりと爆発してくれる勧善懲悪の楽しいマンガに過ぎず、そこに被爆体験を乗り越えるなんて考えもしなかったからだ。
また、純銀でできた仏陀をカリカチュアしたという大きな作品はどうみても水木氏の作品にでてくるような河童がモチーフ。でもゲージツ的に詳細を解説されて、一同ブディズムの神秘に触れたような表情をしている。私の頭にはゲゲゲの鬼太郎やら一反木綿やら猫娘が頭に浮かんでくるというのに。
作品は絵画、彫刻に留まらず「カイカイ、キキ」というキャラクターを使ったアニメーションビデオに及んでいる。ウサギに似た可愛いキャラのカイカイとキキが冒険するような話だが、話の展開、吹き替えの声、テーマソングの曲調もアニメーションも私たちが子供の頃から親しんだ日本のアニメのどこかの部分を取ってきて作っている。どこかで見たようなパクリっぽいこの映像をヨーロピアンの大人たちは、一体どう解釈していいものやらと複雑な表情で見つめていた。
ムラカミ氏が今行っている事は同世代の日本人としては、芸術とコマーシャリズムの融合というよりは、コマーシャリズムによる芸術の取り込みという感じがする。でも、もしうまくいけば、パトロンがつかなくて目が出なかった芸術家の卵に大きなチャンスにもなる。今後どうなるか興味はあるなぁ。
ツアーはとても充実していて、ツアー後にオーディオ解説を聞きながら他の作品も見ていたら午後2時近くになってしまった。お腹空いたー!
館内にある洒落たバールでトルティーヤとビール。これじゃ足りない私たちは、バスク地方名物のピンチョスを求めてビルバオを歩いてみることにした。ピンチョスは1cmくらのパンの薄切りの上に様々なおかずがのったオープンサンドイッチみたいな物だが、グルメで有名なバスク地方のこと、このピンチョスがどんどんエスカレートして洗練されているんだそうだ。1つ2ユーロくらいで食べられるはずなので、お店を変えてどんどんと違う種類が楽しめるというのも魅力的だ。
まず通りかかったのがCafe Iruna。Calle de Colon de LarreateguiとCalle
Berasteguiの角にある老舗のバールで、クラシックな内装の中で大勢の人がピンチョスを立ち食いしている光景はなかなか魅力的だった。ここではクロケットと生ハム・チーズ・マヨネーズのような定番のピピンチョス2つを注文。飲み物を注文しなくても混んでいるし、皆食べ歩きしているので文句を言われないのが気安い。
ピンチョスを出している店がそう頻繁にあるかというとそうでもない。上記のカフェ・イルーニャを過ぎるとしばらくそういう店は見なかった。それじゃぁと川を渡って旧市街のCasco
Viejoniに入り、Plaza Nuevaの中に入ると、あるある。広場を取り囲んでいる店の8割がピンチョスの店という場所だった。ここ、ここ。ここに来ればいっぺんにたくさんの店でたくさんの種類を食べることができる。ピンチョスを食べたいならここに来るべきだね。
広場を取り囲む建物の1階が回廊。
回廊沿いにピンチョスの店がずらりと並んでいた。 |
私たちはここにある店のほとんどを見て歩きながら結局3軒の店でピンチョスを立ち食いした。4軒で食べたピンチョスは8種類、ビールは1回だけ飲んだ。どれも1つEUR1.5からEUR2という気軽な値段なのでどんどんいけちゃう。
定番の飾りッ気はないけれどおいしそうな物から、器もスタイリッシュなら楊枝止めして幾層にも積み重ねた洒落たピンチョスもあって楽しいし、やる気のない店主に常連が集まっている様や、新進気鋭のやる気のある店でピンチョスに使われている素材やソースの詳しい説明を聞くのも楽しかった。
※この日のピンチョスの詳しい写真は「本日の献立2009年5月31日(昼)」をクリックしてご覧ください。
バスク地方はスペインの中でも独立心が旺盛でそれゆえにテロ事件などを起こして危ないとも言われていた地域だが、ビルバオを見る限り観光客も多く平和で安全に見えたが、人々と少し言葉を交わすとバスクの独立心が垣間見えてくた。
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