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2009.05.26
巡礼の町、サンティアゴ・デ・コンポステラ
5月24日にサンティアゴ・デ・コンポステラ入りしたもののヨーロッパを覆う大きな寒冷前線が2日もこの辺りに居続けたために動きがとれなかった。焼け付くような南スペインとポルトガルの強い日差しを浴びてすっかり初夏の気分になっていたのに、ここに来て夏を飛び越えて秋になってしまったかのような寒さ。2日間はスープを作って地元の名物を食べ続け冬眠前の動物のような時間を過ごしていたが、今日ようやく雨がやんだので町を散策しに行くことにした。
サンティアゴ・デ・コンポステラはCamino de Santiagoと呼ばれる巡礼コースの最終目的地として有名な町である。巡礼の正確なスタートポイントはないそうだが遠くはフランス国境にあるRocesvallesから始める人がいるそうで、この場合徒歩で5週間かかるそうだ。巡礼している人はレフヒオと呼ばれる各地の宿泊施設に格安あるいは心付けで宿泊できるし、歩いているのだからスペイン北部をゆっくり見て回れるし、何よりも達成感があるということで、私たちが以前マドリッドの宿にいる時に日本人バックパッカーの間でも巡礼がちょっとしたブームになっていた。フランス国境から始める必要はなく、自分の時間が許す場所から始めればいいことになっているのも始めやすい。
キャンプ場から歩いて町中に向かうと、さっそくシンボルの帆立貝の貝殻をバックパックに下げて木の杖をついて歩く巡礼旅行者を何人も見かけた。雨上がりのまだ雲が厚い今日、この町を歩いていると本当に中世にタイムトリップした気分になるような古めかしい家が並んでいる。ふと道を見ると金色に帆立貝の彫刻が埋め込まれて、ここが巡礼路であることを示していた。お土産物屋では木の杖に帆立貝が付いたものやガリシア名物のアーモンドケーキなどが多い。私たちもスーパーでアーモンドケーキを買って食べたが、これはおいしかった。
カテドラルは大きくて立派な建物で町のど真ん中にある。巡礼を終えてきらびやかなゴシック様式のファサードをくぐったらさぞや晴れがましい厳粛な気分になることだろう。
歩いていない私たちから見ると大きいけれどかなり古くてあまり美しいとも思えない教会なのだが、ここに集まる人々は晴れ晴れとした表情で、歩いてきた人はハイテンションで誇らしげに目が合う人ごとににこやかに手を振って挨拶してくる。人々がこんなに活き活きとして教会を訪れている場面を目にするのは珍しい。この活気は教会というよりは、何かを達成した喜びに満ちた集団、そう山の頂上で人に出会うのに似ていた。そういう意味でも特殊な場所だった。
教会や修道院が集まる中心地から南に伸びる繁華街もまた教会と同じ色調の古めかしい建物がずらりと並んでいて中世の町の雰囲気をそのまま残っている。2本ある繁華街の1本は飲食店街でガリシア地方の名物であるタコの料理を初め、魚介類を出す店が多かった。
全行程を歩くのは厳しいとしても、数十キロ程を歩いてここに到達して最後にガリシアの魚介類を食べるというのはいかにも気持ちの良さそうなプランに思える。私たちもいつかやってみる?そんな話をしながら町を後にしたのだった。
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