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2009.05.10
白い村第六弾「アルコス・デ・ラ・フロンテラArcos de la Frontera」へ
スペイン:アルコス・デ・ラ・フロンテラ

 白い村群の西端ともいえる村がアルコス・デ・ラ・フロンテラだ。これからポルトガル南部に入るには丁度通り道になるので、ここでちょっと宿泊しようってことになった。

 問題はキャンプ場情報だ。私たちが持っているキャンプガイドブックはスペイン南部は海岸線に情報を集中させていてアルコスのキャンプ場なんて1つも紹介されていない。ロンダのキャンプ場で販売しているスペインだけのキャンプ場ガイドブックをパラパラと見てみると、アルコスには2つのキャンプ場があることがわかった。うーん、このページだけ欲しいんだけどなぁ。そこでロンダのインフォメーションに行って聞いてみると、アルコスの地図をくれてキャンプ場の場所も教えてくれた。ロンダのインフォメーションは本当に素晴らしい!

 キャンプ場はアルコスの町をはずれた隣村にあって、あまりにやる気のないたたずまいに一度通り過ぎてしまうくらいの星なしキャンプ場だった。誰もいない。おーーーーいと声をかけても誰も出てこない。やってないのかなー?と焦ってきた時に、よれよれジャージの肩がフケでやや白く粉拭いている中年のおっさんがポリポリと頭を掻きながら出てきた。何日も洗濯していないようなジャージから汗の醗酵する臭いが立ち込めていた。だ、大丈夫か、このキャンプ場・・・。

 とにかくチェックインをすませてテントを張ることに成功したものの、シーズンオフとはいえあまりに人が少なく、トイレはいつ掃除したか定かでなく、あげく翌日には1つのトイレの扉がガタットはずれたままになっているようなキャンプ場だった。

 敗因はメンテナンスが悪い自分達の性格を棚に上げて、このおにぎり型のキャンプ地のど真ん中にプールを設計してしまったことだろうなぁ。メンテされていないプールというのはもちろん薄汚れて汚い。それがど真ん中に広い面積を占めているんだから、全体の印象がとても悪くなるのは必然だ。とまぁ、ここまでキャンプ場を眺めてくるといっぱしのヨーロッパ、キャンプ場批評をしたくもなってくる。

 私たちのガイドブックはそういうキャンプ場は除外してまともな所しか掲載していないようだ。手持ちのガイドブックに載っていないキャンプ場はやばいってことが計らずも知れた出来事だった。やれやれ。

 昼食を済ませて午後1時40分にアルコス・デ・ラ・フロンテラ観光に向けて出発だ。隣村から出発する私たちは湖の上の橋を渡ってアルコス入りする。エメラルドグリーンでなかなか美しい色合いの湖を右手に渡るころには道の先の丘2つにまたがるアルコスの白い家々が見えてくるのだった。

 村の下の方に適当に車を停車して歩き出す。

 アルコス・デ・ラ・フロンテラについては手持ちのガイドブック「ロンリー・プラネット」に地図が載っているので歩きやすい。村は下のほうが新市街、上の方が旧市街になっていて旧市街には11世紀のお城や16世紀の家が残っている。

 今までの村に比べると家の扉が昔のままで古くて歴史を感じさせる町並み。更に教会の古ぼけたたたずまいも趣がある。観光客が大勢来て、新しく建物をメンテナンスして華々しい村と比べるとしっとりとした風合いを感じる村だった。
 
  

 そしてこの村の特徴は、ロンダには負けるけど傾斜の激しい断崖絶壁ぎりぎりに立っているのが見られるという点だ。断崖絶壁の下は川が取り巻き目の前のエメラルドグリーンの湖に注いでいる。地形自体が要塞のような丘の上に立っているためか、独立精神旺盛な領主がかわるがわるこの土地を治めてきた。ガイドブックに書かれていることは、この断崖絶壁に立ってみて初めてなるほどと実感できる。やっぱり、来て肉眼で見ないとわからないもんだ。


 日曜日の午後3時。町は死んだように静かなアルコスだった。喉が渇いて皮がひっつきそうになったのだが、お店1軒も見当たらずにトボトボと歩いて坂道を下っていたら、白い民家の一角で駄菓子屋を発見した。

 「オラー」っと声をかけると中から体の小さいおばあちゃんが出てきて、時ならぬ東洋人の出現に宇宙人でも見たかのようにびっくりと目を丸くした。しかし、私たちが「冷たいコーラありますか?」とスペイン語らしき言語を話していると理解してくれて、「ああ、あるよ」とコーラを冷蔵庫から出してくれた。相当低い温度設定にしているのかシャリシャリと少し凍りかけたコーラは抜群においしくて、その場でゴクゴクと飲み干す。おばあちゃんは「今日は暑いからねぇ」と、今ではすっかり昔なじみのご近所に話すようにリラックスして笑った。ほんの数語話せるだけでコミュニケーションは成り立つ。そして旅ではこういう小さなコミュニケーションが本当に楽しく思えるのだった。

 おばあちゃんの冷たいコーラで生き返った私たちは、最後に川と橋と村が一望できる展望ポイントに立ち寄ってからキャンプ場に戻った。キャンプ場の近くで土日にもかかわらずビールとお菓子と新聞・雑誌を販売している店が開いていて、そこで冷たいビールを買ってテントの木陰でグイーと一杯。

 ここのキャンプ場、設備はしょぼいけれど、木陰だけは素晴らしい。悪いことばかりではない。


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