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2009.04.23
当日券でアルハンブラ宮殿見学
スペイン:グラナダ

 グラナダに来た一番の理由はアルハンブラ宮殿の見学。ユネスコの世界遺産にも指定されている超有名なアルハンブラ宮殿を一度は訪れてみたいとかねてから思っていた。ヨーロッパに渡る直前にブエノス・アイレスでNHKの特集番組を見ることができて、その期待は更に高まっていた。

 昨日グラナダに到着してすぐキャンプ場のフロントで「アルハンブラ宮殿に行こうと思っているんだ」と話すと、チケットはもう予約してあるのかと聞かれる。何?確かにガイドブックには当日券は午前の部と午後の部で合わせて2000枚のみなので予約した方がいいと書かれているが、それは6月から8月の話で4月ならまだ大丈夫なんじゃないかと思っていたのだった。ところがフロント係のご婦人は頑なに「今の時期も当日券を買うのはかなり難しい」と眉間にシワを寄せてのたまうのだった。

 本当?当日券2000枚がまだうす寒いこの4月に朝一番でなくなってしまうの?

 昨日の時点では予約できる時間帯も過ぎていたので、とにかく今日の朝一番のバスでアルハンブラ宮殿に行ってみて、当日券が買えなかったら電話予約をしようと考えた。

 キャンプ場からは朝7時のバスが始発。町まではほんの10分程で到着してぞろぞろと観光客っぽい人が降りる場所で降りた場所がアルハンブラ宮殿へのミニバスの停留所だった。朝から観光客で混んでいるミニバスに乗り込んで宮殿に到着したのが7時半近くだった。

 既に100人くらい並んでいるのには驚いたが1000人並んでいるわけじゃぁない。この分なら余裕で買えそうだ。すると、しばらくして列の前に並んでいた若者がごっそりと列を抜けてどこかに行ってしまった。私も夫を残して偵察に行ってみると、今並んでいる列は現金でチケット購入する人の列でクレジットカードで購入するには別の列があることがわかった。クレジットカードで購入する場合はキャッシュディスペンサーのような自動販売機で買うので係員のいる窓口とは別になっているのだ。そういう説明がわかりにくいんだよねぇ、世界遺産なのに。

 まぁ、わかりにくいお陰でクレジットカードで購入する列は人がまばらで私たちは一気に10番目くらいに昇格できた。現金買いの列の方には明らかに観光客とは思えない地元風の若者が並んでいる。後から他の旅行者に聞いた話と考え合わせると旅行代理店が人を使って当日券を買い占めているようだ。なーるほど。ハイシーズンになるとチケットが買いにくいというのは朝一番で1000人、2000人が並ぶのではなくて旅行代理店による朝一番の買占めがあるからなのだろうと合点がいった。やっぱり早く来て正解だ。

 現金列もクレジットカード列もチケットの販売開始は朝8時。私たちも8時10分にはチケットを手にすることができた。アルハンブラへの入場する手前の左手ブースでオーディオガイドの貸し出しを行っている。バルセロナのガウディのバトリョ邸は入場料金16.5ユーロを支払うとオーディオガイドも付いてきたので、アルハンブラの入場料金13ユーロにも含まれているんじゃないかと淡い期待を抱いたがあっさりと裏切られてお一人様8ユーロのオーディオガイド料金を徴収された。

 アルハンブラはエリア内に城塞、ナサリエス宮殿Palacio Nazaries、Generalifeという庭園などがありかなり広い。このうちナサリエス宮殿への入場だけが時間を指定されていて、この時間に宮殿前に来ていないと入れないことになっている。

 そういうことはオーディオガイドを借りる時に地図を渡されながら説明されて、私たちの見学時間が10時半開始だと告げると、こういう風に園内を巡るといいというモデルコースも教えてくれた。オーディオガイドを借りるとなかなか親切な対応を受けられるようになっている。

 ところが8ユーロでオーディオガイドを借りないと、園内の地図ももらえないし、ナサリエス宮殿の見学時間のことも自分でガイドブックなどで知っておくかチケットを仔細に眺めないとわからない。何せ自動販売機でチケットが買えちゃうからね。このシステムもどうなんだろうかとちょっと首をひねる。多くの人は団体で訪れるから地図はいらないというのだろうか。アルハンブラ、まだ見学もする前から個人で訪れるにはちょっとテクニックがいる場所だという感想を持った。

 とにもかくにも朝6時起きで朝ごはんと昼ごはんのサンドイッチを作って、バス2本乗り継いで、列に並んでチケット購入して、やっと入場して敷地の一番奥のアルカサル(城塞)に到着した朝8時半にはもう一仕事終えた気分だった。ようやく朝日があたって暖かくなってきた中庭でまずは朝ごはんだ。ここにはサンドイッチやコーヒーを売るキオスクもあって、同じように早起きしてきた人たちがみんなやれやれという表情でコーヒーをすすっているのはちょっと愉快な光景でもあった。実はこのエリアまではチケットなしで入れる。

 10時半の宮殿見学まで時間があるので、まずはアルカサルの見学だ。アルカサルの見学にはチケットが必要で一度しか入れないことになっているようでチケットにパンチを入れられた。

 アルカサルはエリア内の端にあって町を睥睨するように立っている。中でも狭い階段を登ってたどりつく鐘のある見張り台のテラスからは朝日に染まるグラナダの町が一望できて、町とは逆の方向には白く輝く雪をのせたシエラネバダ山脈が美しかった。

 アルカサルを見学し終えてまだまだ時間があるので、お次はカルロス5世の宮殿を見学。

 32本の列柱が並ぶ円形2階建ての宮殿は1階、2階がそれぞれ別の美術品を集めたミュージアムになっている。

 中南米の宿に行くと、この宮殿のように中庭に沿って廊下があり廊下の外側に部屋があるという建物を多く見かける。丸いってのは珍しくて宿の場合は四角い建物だが、強い日差しをさけるための構造はこうした宮殿から庶民に派生しているんだろうなぁ。もっとも宿の場合は狭すぎて部屋が暗くなり、しかも中庭も狭かったりするので通気も悪い場合が多く、宿としては好きなタイプではない。これくらい広ければいいかもしれないけど、安宿にこの広さは望むべくもない。

 10時には余裕でこちらも見学が終了。そろそろ宮殿入場時間になってきた。縁石に座って待っていると、日本人やドイツ人やフランス人など各国の団体観光客が宮殿に飲み込まれていく。この人たちは朝ゆっくり起きてホテルでたっぷり朝食を食べて来たんだろうねぇ、ちょっと羨ましい。個人で来た中年白人夫婦が係員となにか言い合っている。どうやら見学時間が過ぎているのに入れて欲しいといっているようだ。どうなるかと見ていたのだが係員はきっぱりと「記載時間が経過してからの入場はできません」と断っていた。なかなか厳しい。

 さて、いよいよ私たちも宮殿に入場だ。
 
 
 内部は天井は高いが比較的狭い部屋が組み合わさっていて、どの部屋も足元から天井に至るまでびっしりと模様が埋め込まれたり彫りこまれたりしていて、アルハンブラに入ってから感じていた静寂な雰囲気をを視界から賑やかに崩していくのだった。しかも模様はイスラム系のアラビック文様。

 これがアルハンブラなのかぁ。スペインに入ってくる。人も町並みも西洋文化に取り囲まれたスペインを旅してグラナダにたどり着き、西洋庭園を通ってこの宮殿にたどり着き、目にするのは圧倒されるばかりの彫り物がなされたアラブ系の建物。この思いがけないギャップがアルハンブラを訪れた人に強い印象を与えて現在の人気につながってるんじゃないだろうか。インドのアーグラーにあるタージマハールを訪れた時の強い印象を思い出した。バラナシの超汚い町並みの中に身を浴し、大混雑の駅から列車に揺られて埃っぽいアーグラーの町を歩いて、安宿の料金をインド人と交渉してチェックインする。そうした一連の作業の後にタージマハールに到着すると、写真で見る白亜の宮殿よりももっと強く「ここは何て清潔な場所なんだ」といたく感動したのだ。あの時の感動に比べると今回のアルハンブラは正直そうでもない。私たちにとってアラビック文様はそんなに珍しいものでもなく、中東あるいはインドでこうした精緻な模様を施した、しかももっと大規模で驚くような彫刻を目にしてしまったからである。「凄い!」という感動というよりは、「こういう模様を目にするのは何だか久しぶりだなぁ」という気持ちが強かった。

 とはいえ、次に現れた中庭に続く二重三重になった柱の部分は素晴らしいと感じた。私としては宮殿の中ではこの部分が珠玉だと思う。美しいアーチに施された圧巻の模様は単純に壁に彫られたものだけでなく、天井からブドウの房のように垂れ下がるアラブ特有の装飾も伴って大きくはないがとても美しくまとまった優雅な空間を作り出していた。

 その他にもドーム型の天井に向かって四面の内側から装飾をこれでもかと付けた屋根の部屋などを見て宮殿の見学は終了。宮殿を出た所に池があり、木陰のベンチが据えてある場所でちょっと早めのお昼ご飯を摂る事にした。

 昼食後は庭園の見学に行こう。


 宮殿やアルカサルのある場所から入り口を挟んで「くの字」に曲がった場所が庭園になっている。建物の様式はやはりイスラム世界だが庭は西洋風になっていてそのミクスチャが面白い庭園を作り出していた。アルハンブラに入って感心するのは水の使い方だった。建物のそばに薄く水をはって建物が鏡面で映るようにしたり、大仰でなくちょっとした噴水を添えて涼しさを演出して、さりげないけれども気持ちよい水の使い方がされている。特に庭園はそうした水を使った場所が多いので歩いていて気持ちがよかった。夫が感動していたのは階段の手摺に水を通している場所だった。木陰で涼しくなった階段に水音が響いてそれはそれは気持ちがいい。
 
 

 私たちは午前の部のチケットなので午後2時までに出なくてはいけないらしい。全ての見学を終了したのは午後1時50分。ぎりぎりだった。朝8時に入場したから5時間50分もいたことになる。朝昼ご飯を食べたり、宮殿に入るまでの30分を宮殿前でぼーっと待ったりしていた時間も入るので長くなったが、かなり一生懸命に歩き回ってこれくらいの時間がかかったのでアルハンブラって広いのねぇ。宮殿そのものは期待ほどではなかったけど、このスペインにいながらにしてイスラム文化の建物が見られるという点と西洋庭園や水使いの気持ちのいい庭は歩いていてとても楽しかった。


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