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2008.07.17
いよいよ出発。緊張の第一日目
いよいよヨーロッパドライブの第一日目となった。初日の今日は何が起こるかわからないし、久しぶりの運転ということもあり、マドリッドから250km北東に移動したキャンプ場を目指すことを目標にした。
まずは宿から空港の第一ターミナルに向かう。そもそも荷物が多いのにテントやら調理器具やらが増えて、宿の皆に「うわっ」と驚かれるような大荷物になってしまった。それでも地下鉄に乗って空港へ。丁度前の晩に入ってきた日本人男性が50kgの荷物を持って世界を周っているという話を聞いてアドレナリンが出てしまったこともある。
しかし、空港に到着してやっとカートに荷物を乗せた途端にどっと疲れが襲ってきた。いやー、よくこんな大荷物をここまで運んだものだ。
空港からプジョーのオフィスに電話すると、先日契約をしたマリアさんが出てくれた。丁度、他の人を迎えに車が空港に行っているので同じ場所で待っていてくれと言われて行ってみると、既に車が来ていて別の客を乗せている所だった。白人の50代くらいの夫婦で、同じくオープンヨーロッパを使ってドライブするようだった。
オフィスで先日契約して支払いを行った時の領収書を見せてほしいと言われたが、そういえばもらっていない。しかし、明らかに私たちが支払ったことをマリアさんも確認しているので、そのまま手続きを進めることになった。
車両受け取りの書類にサインして、保険書類にサインして、鍵を2つもらって終了。今回も「え?これだけ?」ってくらい簡単な処理だった。
今日の案内人はパブロ君。夫を座席に座らせて一通りの機能を説明してくれたのだが、どうにも英語が得意ではないらしく「ということで、オッケーですね、オッケーですね」と一刻も早く仕事を終わらせたいモードだった。
パブロ君は早々に引き上げてしまったのだが、まず私たちは荷物をどう入れるかであーでもない、こーでもないと検討を始めた。
しかし、思っていたよりも荷物が入らない。スーツケース2つが横並びになる幅はあったもののその上にリュックを置くとトランクの中身を外から見えないようにするフタが浮いてしまうのだ。しかも、リュック1つと調理器具と食材の袋がまるまる入らないので後部座席に置くしかないということになった。
そうこうしているうちに、3週間の南スペインでのバカンスを終えたオーストラリア人の親子4人がご到着。彼らもオープンヨーロッパでまわってきたのだそうだが、車を借りるにあたって既にオープンヨーロッパを利用した友人から207SWでは荷物が入らないのでファミリータイプのPartnerにした方がいいと助言を受けてPartnerを借りたのだそうだ。
丁度いい機会なので荷物を降ろしたPartnerを見せてもらったのだが、荷物を入れる部分の幅は207SWに比べて15cmくらい広いようだった。しかし、フタの部分までの高さは同じくらいなので、トランクの中身が見えない状態で入る荷物の容量はあまり変わらない。変わるのはフタの上の部分。ここが207SWに比べると大分広いので、車の外から荷物が見えてもいい状態ならば、たくさん荷物が入るということになる。
しかし、ヨーロッパでは車を離れる時に荷物が外から見えていたら盗難に会う危険性が高いと言われているために、フタをした状態でのトランクの容量が安全な荷物容量ということになる。そういう意味では207SWもPartnerもあまり違いがない。ただ、207SWは車の上に荷物用ラックが乗せられるバーが付いているので、泥棒さんから見えないでより多くの荷物を収納したい場合には207SWの方がいいのか。あるいはそういう車の上の収納も盗難の対象となるので意味がないのか。この辺りはこれから調べる必要がありそうだ。
オーストラリア人の家族は、南フランスのある場所でアパートを借りて半分を過ごし、あとの半分はアンダルシアの海岸のコテージに滞在していたそうだが、私たちがキャンプしながらドライブすると言うと、奥さんは目を輝かせて「んまぁ、キャンプ、いいわねぇ」と言った。私たちから見たら、アパートやコテージの方が予算もかかるしうらやましいと思うのだが、オーストラリア人ってのは根っからのアウトドア派らしい。この価値観の違いがフッと大きな大地のオーストラリアを思い出させて面白かった。
空港から一緒に来た夫妻はとっくに出発し、オーストラリア家族も空港に向かって出発してしまった。残るはまた私たちだけ。しかし、出発する勇気が今一つ出ない。とりあえず用意してきたお弁当を食べることにしたのだが、夫は緊張で喉が通らずおにぎり一つで終了。ああ、こっちまで緊張してきた。肩慣らしとして、事務所の敷地内をくるくると回ってみることにした。久しぶりとはいえ、2周もすると勘が戻ってきて逆方向に又1周。するとパブロ君がオフィスから出てきて、「何やってんですが、今日はどこまで行くんですか?サラゴサ?サラゴサならゲートを出て左に曲がって道なりにまーっすぐ高速を走ったらつくから、さぁ、ゲートはこっちですから」と促す。初心者めいた私たちが駐車場で他の車を傷つけないか心配でたまらなくなったようだった。
パブロ君に肩を押されるようにようやく出発だ。いやー、緊張と興奮の入り混じる出発だった。プジョーのオフィスは高速沿いにあるので、すぐに高速の入り口。ここは無料の高速道路なのでそのまま合流したらもう後はほぼ一本道だった。
実は夫はヨーロッパ赴任になってから車の免許を取得して、仕事でヨーロッパで運転していた以外には、日本での運転経験は全くない。日本と同じ方式での運転はマレーシアで少々という程度だ。ということで、しばらく運転するとすぐに昔の勘を取り戻してきたようで、なまじ日本での運転経験がないのであまり錯誤も起こらないのが幸いだった。ま、マレーシアでの経験が少し残っているせいか、時々ワイパーとか動かしちゃってこちらがドキッとするのはご愛嬌だ。
ガソリンのメモリーが車を受け取った時点で下から2目盛くらいだったので、すぐにガソリンスタンドに立ち寄ってガソリンの補給。
この車はディーゼルを使うので普通のガソリンよりもやや安い。とはいえ、1リットルEUR1.33(=US$2.11)もするのでとても高いと思う。今までも航空費にサーチャージが上乗せされてどんどん高くなることで石油の値段の高騰を実感していたが、これからは数日後とに感じさせられることになる。
初めての給油も終えると、大分気分も落ち着いてきた。気がつけば夏のスペインの空は入道雲が浮いてバカンス気分。高速道路の脇には時々真っ黒で巨大な牛の看板が立っていて、意味はよくわからないが突飛なアートを生み出してきたスペインのお国柄を感じさせてくれた。
本日の行き先は、高速道路を降りて7km離れたSavananという村にあるキャンプ場。迷うことなくすんなりとキャンプ場に到着したのは、午後2時12分だった。
レセプションには誰も人がいなくて、もしかしてシエスタ明けの午後5時くらいまでレセプションは閉まっているのかと思っていたら、2階からおじさんが顔をだして、「今行くからー」と声をかけてくれた。
降りてきたのは奥さんらしき人。車とテントの場所代金プラス人間2人のキャンプ料金プラス電気使用料金でしめてEUR23.4。ヨーロッパではバックパッカー宿に宿泊するとドミトリーで一人EUR20かかることを考えると半額に近い値段だ。
アフリカでの経験があるのでテントの設営はそんなに問題なく完了。日除けの下に車を停めて、木陰にテントを設営して荷物を運び込んだらマイホームの完成!家も車も買ったことがない私たちにとって、初めてのマイホーム、マイカー気分。家を持ちたい、車を持ちたい人の気持ちが実感として少しわかった気がした。
今夜の夕食用にとりあえずの野菜などは持っているが、ワインがあるといいなぁ。レセプションに聞くと村に2軒の食材店があるが、シエスタで5時まで閉まっているという。さーて、それではレセプションの裏に見えていたプールにでも入りに行くか。
プールは25mはありそうな大きなものだったが、誰一人泳いでいる人はいなかった。水は木の葉一つ浮いておらず、とても清潔に保たれている。
周囲はやや標高の高い場所で、遠くに山々が見えて鳥のさえずりが聞こえるばかりだった。水に入ると体の熱が一気に下がって爽快この上ない。
聞いたこともないスペインの山奥のキャンプ地でプールに入って「やったー!」と喜ぶことになろうとは、人生ってのは本当に何が起こるかわからないから楽しい。このキャンプ場なんて、高速道路から近いから選んだだけでなーんにも期待してなかったのに、案外気持ちのいい場所だったので、私たち二人は大喜びした。
やがて5時近くになったので、村の食材店に行ってみることにした。レセプションのお母さんは400mだから歩いてでも行けるわよと教えてくれたのだが、道が一本ではなくいくつかに分岐していて分かりづらい。
村のはずれで道を聞いた奥さんが、ちょうど村の中心まで行くし、そこに食材店があるから連れて行ってあげると道案内を買って出てくれたから助かった。
この時期、日の入りは午後9時過ぎなので午後5時は午後半ばという日差しの明るさだ。シエスタで眠ったように静かな昼下がりの村の小道を通りながら、手振り身振りで自分たちが日本人であることや、奥さんの友人が開いているパン屋さんを紹介されたりしているうちに村の中心に到着。小さな噴水が一つ、バールと薬局と銀行に囲まれた広場だった。
食材店はここの角に一軒と、小道の先にもう一軒あったがシエスタでまだ閉まっていて、いつ開くのかはわからないということだった。
親切な奥さんに別れを告げて、しばらく閉まっている店の前に立ち尽くしてみたものの誰もかまってくれないので、近所のバールでビールを飲みながら店が開くのを待つことにした。
今日一日、緊張してあまり水も飲んでいなかった私たちはビールを一気に流し込んだ。隣のテーブルには60代後半くらいの近所のおっちゃん達が集まってビールをちびちびやりながらおしゃべりを楽しんでいる。
村の中心地があれだけの広さの広場という規模の村ながら、このバールの界隈は洒落た街路樹が道を彩り、家も美しくメンテナンスされていて新興住宅地のように美しい。スペイン人ってのは生活のレベルが高いんだなぁと非常に感心した。
えっとー、6時半になっても店が開かない。7時まで待って開かなかったらギブアップしようと思っていたら、広場の角の店が開いたので無事にワインを購入して戻ることができた。
さて、夜のイベントは「ガスコンロでご飯を作ってみる」ってこと。
お昼ご飯が喉を通らなかったので、昼の弁当の残りがある。おかずはマドリッドで買っていたいわしのトマト煮の缶詰。今日は調理初日のトライアルなので、とりあえずご飯だけ炊いてみることにした。
風が強く吹くと消えそうになるのが難点だが、人で囲んで防ぎながらなんとかご飯を炊くことができた。鍋が大きすぎて端の方と真ん中の温度差が高すぎちゃうのがちょっと問題。鍋は20cmくらいにすれば良かったかもしれない。
さっき村の食材店で買ったワインは、ここに来る直前に通った町のワイン。たったEUR1.8なのにこれがバカにおいしい。ええええ?ってくらいフルーティーで香りが高いのだ。で、思い出したのがアフリカのウガンダで飲んだコーヒー。地元では昔からコーヒーを栽培していて、煎った豆を眠気覚ましにかじったり、粉にしてコーヒーを飲んだりしているのでコーヒーのおいしさを知っている地域なんだけど、他に流通させるほどは生産していないので世界に知られてはいない。でもおいしいのだ。ここのワインもそんな感じ。別に有名にならなくたっていいじゃないか、自分たちで質の高いものを楽しめれば。っていうことで、肩の力を抜いて造っているみたいなのだが、どーにも旨い。世の中にはこういう場所がいくつかあるに違いない。そういう物にふと出会えるのも旅の楽しみだ。
シャワーはちゃんと熱いお湯が出るし、モンベルの寝袋はとても温かい。山の中なので日が落ちるとどんどん気温が下がってきたが備えがあるので憂いなし。ドライブ初日、無事終了。本日の走行距離は245kmなり。もちろん運転していた夫はお疲れなのだが、私も隣でかなり緊張してぐったり。トレッキングでたくさん歩いた日のようにぐっすりと眠り込んだのだった。
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